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【完結】底辺ハンター、狩人の大精霊に気に入られる 〜万年G級のおっさんが、魔物を喰らって最強のS級ハンターへ成り上がる〜  作者: 藤枝止木
2章 ハンター、都会へ行く

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第73話 ハンター、獄炎の支配者と戦う(3)


 ザァァァァッ……!

 

 マグマの海を波立たせ、インフェルノ・ラーヴァドラゴンの巨体が突っ込んでくる。

 まるで眼前に巨大タンカーが迫ってくるようだ。

 そんな絶望的な状況に、トモミンは全く臆していなかった。

 彼女は勢いよく岩場から飛び出すと、ボスに向かって思い切りモーニングスターを振り下ろした。


「えーいっ!!」


 ドガァッ!


 棘付きの鉄球がボスの脳天に直撃し、衝撃音が響く。しかし、奴の進む速度は殆ど変わらなかった。

 当然だろう。いくらトモミンが手練の戦士だとしても、彼女はまだA級だ。

 超S級とも言える領域にいる奴を、ただの一撃で止めることは不可能だ。 --普通の武器なら。


「くらえっ、師匠の必殺技……! 『解放(ラース)!』」


 トモミンの声と共に、彼女のモーニングスターに込められた魔法が炸裂した。


 ドンッ……! ドガガガガガァッ!


 凄まじい衝撃音と共に、ボスの巨大な頭部が弾かれたようにノックバックする。

 そして衝撃音は一度で止まず、何度も何度もボスの頭部を揺らした。


「ギュガァァァァッ!?」 


 ボスが驚愕と痛みに絶叫し、後ずさるが、その間も衝撃波は止まない。

 そう。トモミンの武器に封じられていたのは、俺の震脚(クェイク・ブレイカー)だ。


 彼女の武器には二系統のルーンが刻まれていて、ノルフィナの耐熱防御魔法と、さっきの震脚(クェイク・ブレイカー)の二つを封じていたのだ。

 これを実現するのに結構試行錯誤が必要だったが、なんとかボス戦に間に合った。


「ゴルッ…… ゴルルルッ……!」


 ようやく衝撃波が止んだ頃、ボスは元の位置まで後退していた。

 こちらを憎々しげに睨む奴は、額の甲殻が割れて出血しており、若干ふらついているようにも見える。


 かなりのダメージを与えられたようだが、致命傷には至っていない。

 震脚(クェイク・ブレイカー)は、S級のレッドドラゴンや、あのカオスウルフですら仕留めた魔法なのだが……

 インフェルノ・ラーヴァドラゴン。やはり尋常な相手では無いらしい。


「「おぉぉぉー!!」」


 俺がボスのタフネスに戦慄するのをよそに、討伐隊からは歓声が上がった。


”ト、トモミンすげー!”

”あのおっきなボスを押し戻しちゃった!”

”今のってトモミンの武技? ちょっと強すぎじゃない……?”

”昨日カリヤマ氏が使ってた技に似てる”

”確かに。カリヤマ師匠がトモミンに伝授したのか”

”いや、例のルーン武器の機能じゃね? カリヤマが開発したって奴”

”あー、理解”

”しっかし…… アイテムボックスといい、カリヤマ氏、手札が多すぎでは……?”

 

 さらにコメント欄も大いに盛り上がる。

 視聴者の言う通り、ルーン武器は俺が開発したものということにしてある。

 もちろん真実は違うのだが、異世界ユグドラシアのことを話す訳にもいかないので……


「ふぅ、たっだいまー! って、あちゃちゃちゃっ!?」


 そこへトモミンが帰還し、手に持っていた武器を取り落とした。

 見ると、モーニングスターの先端の鉄球が溶け落ち、ただの鉄の棒になっていた。

 

 これが、俺が直接奴に震脚(クェイク・ブレイカー)をぶち込まなかった理由だ。

 もしレッドドラゴンにやったように蹴りを叩き込んでいたら、俺の足は焼失していただろう。


 ちなみにトモミンにお願いした理由は、彼女が討伐隊一の鈍器使いだからだ。

 何故か震脚(クェイク・ブレイカー)は、刀剣系の武器に込めても上手く発動しなかったのだ。


「うわー…… 一発殴っただけで、ドロドロになっちゃったぁ…… ご、ごめん師匠」


 申し訳なさそうな表情を見せるトモミンに、俺は笑顔で首を横に振った。


「いや、謝る必要なんてないさ。それよりよく止めてくれた! 流石だ、トモミン!」


「えへへ……! 師匠のおかげだよ!」


 トモミンとハイタッチを交わし、笑い合う。

 今の所、俺達の作戦は全て上手くいっている。敵は確かに強大だが、このまま削っていけば--


 ズンッ……!


「「……!」」


 その時、これまで感じたことが無いほどの激烈な殺気が、俺達に降りかかった。

 弾かれたようにボスに目を向けると、奴は凄まじい怒りの形相を浮かべながら、その体から強烈な魔力光を発していた。

 その光の色は赤を通り越した神々しい白。目を焼くほどの眩い光だった。


「なんだ……!? 全員俺の後ろへ! 防御体勢!」

 

 脳裏に浮かんだのは、宮内(みやうち)氏らが遺してくれた動画にあった、ブレスの予備動作だった。

 しかしそれとも様子が違う。いや、あれ以上の何かが起こりそうな嫌な予感がする……!

 討伐隊の面々が俺の背後に移動し、固唾を飲んでボスの様子を見守る。


「ギュァァァァァ!!」


 カッ!


 咆哮と共に一際強烈な光が放たれ、視界がホワイトアウトした。

 そして一瞬の後に視力が戻ると、想定外の光景が目に飛び込んできた。


「あれは…… インフェルノ・ラーヴァドラゴンなのか……!?」


 眼前で鎌首をもたげていた巨大な蛇竜(だりゅう)。奴は直前まで、顔面や胴体の各部の甲殻が破損し、血を流し、ふらついていた。

 しかし今やその巨体は、煌々と赤い光を放つマグマへと変じていた。

 例えるならマグマの化身。この階層を満たすマグマの海が、そのまま立ち上がったかのような姿だった。


 なんだこれは…… 肉体がマグマに置き換わっている……? あんなの、倒せるのか……!?

 甲殻どころか、俺達が与えた傷跡も無くなってしまっているぞ……!?


「グルルルルッ……」


 魔物の枠を越え、別の何かへと変貌した奴が、傲然と俺達を見下ろした。

 


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