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【完結】底辺ハンター、狩人の大精霊に気に入られる 〜万年G級のおっさんが、魔物を喰らって最強のS級ハンターへ成り上がる〜  作者: 藤枝止木
2章 ハンター、都会へ行く

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第71話 ハンター、獄炎の支配者と戦う(1)


 野営地で体を休めた翌日。

 俺達は作戦の最終確認を行い、討伐隊の全員で最下層に続く大穴の淵に立った。

 目の前にあるこの黒々とした穴の先に、炎獄(えんごく)(あるじ)、インフェルノ・ラーヴァドラゴンが待ち構えている。

 

「ノルフィナ、トモミン、シロ…… いよいよだけど、調子はどうだ?」


 側に立つ『ヘイムファレンダ』の面々に語りかける。すると。


「絶好調です……! 今なら、どんな魔物でも氷漬けにできそうです!」


「あははっ! じゃあ僕は、それをぶっ叩いて壊す係ね!」


「ヴ〜…… ワンワン!」


「お、おう。気合い十分みたいだな」


 パーティーメンバーの気迫に圧倒され、俺は思わずのけぞってしまった。

 特にノルフィナが凄い。普段は静かな水面のような瞳をしている彼女が、今日は燃えたぎる炎のような目をしている。


 俺の方はというと、ノルフィナとの(わだかま)りが解けたお陰で非常に心が軽い。

 しかし一方で、昨日の彼女の表情や台詞が脳裏から離れず、集中力を欠いている状態だ。

 いや、あそこまで言われて意識しないのは無理だろ……


 --というか、何も考えずに頷いてしまったけど、彼女の願いとはなんだろう……?

 贔屓(ひいき)のアニメスタジオを丸ごと買収してくれ。とかだったらどうしよう…… 一体いくらになるやら。

 ああ駄目だ。どうしても思考がノルフィナに引っ張られる。今は目の前の戦いに集中しないと。

 俺は頭を振って思考を切り替え、討伐隊全員の顔を見渡した。


「みんなも準備は…… 良いみたいだな」


 他のパーティーの面々も、静かな闘志を漲らせながら、しっかりと頷き返してくれた。昨日しっかり休んだおかげか、顔色もいい。

 ただ約一名、レイ氏だけは、俺に睨みつけるような視線を向けている。

 お、俺、なにかしたっけ……? まぁ、彼女のあたりが強いのはいつものことだが……

 

”いよいよか……!”

”二週間あっという間だった”

”トモミン、みんな。頑張ってくれ!”

”二週間か…… 短期間でこっちの状況もかなり変わったな”

”あとは討伐隊がやり遂げてくれれば……”

”だな。全部スッキリする”

”おい、止めとけって”


「え、なになに? なんの話?」


 スマートグラス上に流れてきたコメントに、トモミンが首を傾げた。どうやら外界で何か起こったらしい。

 俺達の様子は、今もドローンカメラによって地上に放送されている。今からこの国の明暗が決するということもあり、視聴者数は数千万という見たことも無い数値になっていた。

 こんなふうに外界へ映像を送れるのは、ボスに挑んだ末全滅してしまった対策局の討伐隊が、ダンジョンの所々に基地局を設置してくれていたからだ。

 なので俺達も、やろうと思えばスマホでニュースサイトなどを見ることができるのだが……

 ダンジョン攻略に集中するため、あまり外界の情報を見ないようにしていたのだ。


”あー、大丈夫。なんでもないよ”

”トモミン達の戦いに比べたら、大した話じゃないから”

”そうそう。今はボス戦に集中して”


「ふーん…… ま、それもそうだね。じゃー師匠! なんか一言よろしく!」


「ああ…… みんな、ここまでよくついて来てくれた。俺達はいよいよ、このダンジョンの(ぬし)に挑む。

 厳しい戦いになるだろうが、俺達は十分に準備を重ねてきた。俺達ならやれる……! 俺達なら勝てる!

 行こう! あのデカくて傍迷惑(はためいわく)な蛇野郎を、俺達の手で倒すんだ!」


「「応!」」


 号令の後、俺は先陣を切って大穴へと足を踏み入れた。

 その後ろに討伐隊の面々が続き、暗黒の空間を経て、俺達はダンジョンの最下層へと降り立った。

 

 地に足がついた瞬間に、油断なく周囲を観察する。

 そこには動画で見た通り、地獄のような光景が広がっていた。

 周囲には煮えたぎるマグマの海が広がり、飛び石のような岩場が点在している。

 俺達が降り立ったのはそんな岩場の一つで、三十人ほどの討伐隊全員が乗ってもまだ余裕がある。

 そして当然ながら凄まじい熱気だ。ノルフィナの冷房魔法が効いているはずなのに、サウナの中にいるようだ。

 にも関わらず、この階層には冷たい殺気が満ちていて、背筋が凍るような悪寒を感じる。


「まずは、情報通りだな…… よし、ゆっくりと前進していこう。どこに奴が潜んでいるか分からないから、全方位を--」


 ドバァッ!


「「……!?」」


 俺の台詞を遮るように、目の前のマグマが爆発したように吹き上がった。

 飛び散った真っ赤なマグマの雨は俺達に降りかかり……


烈風結界(ヴィンド・ヴェグル)!』


 ビュゴッ!


 ノルフィナが咄嗟に発動した風の防壁魔法によって吹き散らされた。


「ナイス! 助かった、ノルフィナ!」


「はい! 早速のお出ましですね……!」


 吹き散らされたマグマの雨の向こう側、煮えたぎる赤い海の中から、それは屹立(きつりつ)していた。

 鎌首をもたげ、数十mの高さからこちらを睥睨(へいげい)する巨大な蛇竜(だりゅう)

 その相貌は縄張りを侵された怒りに歪み、長大な全身を覆う赤黒い甲殻の隙間からは、脈動するように明滅する赤い光が漏れ出ている。

 思わず膝をついてしまいそうになる神々しさと、怖気(おぞけ)が走るような悪魔の邪悪さ。その二つを併せ持つこの魔物の名は……


「インフェルノ…… ラーヴァドラゴン……!」


「グルルルルッ…… ギュァァァァァッ!」


 凄まじい怒気を孕んだ甲高い咆哮が、俺達に降り注いだ。


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