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【1章終了】逃げ癖ハンターは立ち向かう 〜狩人の大精霊に憑依された底辺ハンターは魔物に溢れた現代で無双する〜  作者: 藤枝止木
2章 ハンター、都会へ行く

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第63話 ハンター、開示する


「あ、あのー、色々聞いてびっくりしちゃったんですけど…… 今の話だと、長官さんは悪くないよね……?

 だって、最初は僕らにも手伝ってもらう予定だったんでしょ?」


「ワフン」


 話を聞き終え、率直な反応を示すトモミンに、シロが同意するように頷く。

 そんな二人に、岩崎長官も表情を緩めた。


「ありがとうございます。ですが、私がこの大災害を防げなかったのは事実です。近日中に職を辞することになるでしょう。

 そして、今はまだ私が長官です。この国のため、出来る限りのことをせねば……」


 長官は再び表情を引き締めると、会議室に居並ぶハンター達を見回した。

 この会議室には、俺達も含めて五つのパーティーが集まっている。いずれもS級からA級に相当する手練達だ。

 対策局の上級ハンターがごっそり居なくなった今、東京周辺の最高戦力は間違いなく俺達だろう。となれば……


「皆様…… 東京駅地下に発生したS級ダンジョン、仮称『炎獄(えんごく)』。これの討伐を、どうか皆様に依頼できませんでしょうか……?」


 再び深々と頭を下げた長官に、会議室が小さくざわめいた。

 やっぱりそうくるか。


「まぁ、わたくし達くらいしか頼める相手がいませんものね…… それで、報酬はいかほどですの?」


「はい。今回は私の権限の上限いっぱいまで使って、一人あたりこれくらいを想定しております」


 すぐに声を上げたレイ氏に、長官が指で金額を提示した。

 思わずギョッとしてしまうような高額報酬だが……


「むぅ…… 中々魅力的な金額ですわねぇ。けれど、命よりは安いですわぁ……」


 眉を(ひそ)めて唸るレイ氏に、何人かのハンターが同意するように頷く。

 それを受けて別のハンターが挙手した。


「岩崎長官、確認です。仮称炎獄(えんごく)のボス、インフェルノ・ラーヴァドラゴンについてですが、情報はあの動画だけなのでしょうか?

 あの映像だけでも、ボスが圧倒的な戦闘力を持つ事は理解できましたが、あれがその力の全てとも思えません」


「残念ながらあの動画だけです。国内外のデータベースを当たりましたが、過去に同様の魔物が観測されたという報告もありませんでした。

 ご指摘の通り、まだ手札を隠している可能性は十分にあります。本来ならもっと慎重に討伐計画を立てるところですが……

 もし炎獄(えんごく)がダンジョン暴走を起こせば、この国は終わります。あの炎獄(えんごく)は、一刻も早く討伐する必要があるのです」


「おいおい。あの化け物が守るダンジョンを、なる早で討伐しろってのか? 長官さんよ、そりゃあ無茶って話だぜ」


 また別のハンターから上がった声に、長官が重苦しく頷く。


「はい、無茶は重々承知しております。その上で、どうかお願いしたい。もう皆様に頼るより他にないのです。どうか……!」


 頭を下げ続ける長官に、みんなが悩ましげに唸る。しかし、明確にNOという人もいない。

 人々を助けたいが、どう考えてもあのボスには勝てない。自殺行為だ。だが……

 きっとそんなふうに葛藤しているのだ。


 特段愛国心が強くない俺の心中にも、似たような感情が燻っているのを感じる。

 以前から話には聞いていて、覚醒してからやっと実感できた学説がある。

 それは、覚醒者は非覚醒者に対し、本能的に庇護欲を感じてしまうという説だ。大人が小さい子供に向けるような、あの感覚だ。


 だからだろう。強大な力を持つ覚醒者は、意外にもその犯罪率は低く、そのお陰でこの国はまだ秩序を保っていられる。

 もちろんゼロではなく、覚醒者による犯罪は時として国が傾くほどの事態に発展する。

 普段は対策局がその取り締まりを行っているのだが…… 今はそれを担っていた戦力がごっそり消えている。そう考えると、治安面でもピンチな状況だ。


 --さておき、問題は俺達がどうするかだ。

 正直、わずかながら勝てそうなプランはある。けど、それには色々と情報を開示する必要があるし、そもそもトモミン達の了解がいる。


「みんな、ちょっと顔を寄せてくれ…… その…… この依頼、みんなさえ良ければ受けようと思うんだが……」


 小声でそう切り出すと、トモミンとシロが、そんな事分かっているとばかりに頷いてくれた。


「うん、知ってる。だって師匠、動画見ながら目ぇキラキラさせてたもん! 僕は賛成! 東京の人達を助けたいし!」


「そ、そうか。ありがとう。 --けど俺、そんなに分かりやすかったか……?」


「うん、すっごく!」


「ワフフン!」


「そ、そうか……」


 急に恥ずかしくなり、俺は二人から目を逸らした。

 すると、何か考え込んでいる様子のノルフィナと目が合った。


「あの、私も賛成です。カリヤマさんの事ですから、何か作戦があるんですよね? 多分、例の技術を使った……

 私も考えてみたんですが、あれを活用できれば、あのボスに対しても有効な戦術を取れると思います」


「ああ。恐らく君の考えている通りだ。よし、なら決まりだな……」


 俺は内緒話を止めると、長官に向き直った。


「岩崎長官。炎獄(えんごく)討伐に関して、一つ作戦を提案してもいいでしょうか?

 ただ全員で突っ込むより、遥かに勝率は高くなると思うのですが……」


「おぉ……! 是非、お聞かせ下さい!」

 

 長官だけでなく、会議室にいる全員が俺を見る。

 俺はそれに頷き返すと、机の上に置いていた片手を僅かに浮かせた。

 そして、机の上に落ちた影に目掛け、もう片方の手を突っ込んだ。


 ズズッ……


「「……!?」」


 影の中に俺の片手が沈み込んだのを見て、全員が息を呑む。

 この暗黒空間(ブラックボックス)は、いわゆるアイテムボックスのスキルだ。

 便利すぎるので、これが使えることは開示したくなかったのだが…… この状況では仕方ないだろう。

 俺は目的のものを探し当てると、影の中から手を引き抜いた。手には、一本のダガーが握られていた。


「ア、アイテムボックスのスキルですか……!?」


「へぇ! 噂で聞いたことはあったが、実物は初めて見たぜ!」


「カリヤマさん……! あなたのスキルって、金属操作だったのではなくて!?」


 他のパーティーのハンター達が一斉に色めき立つ。ちょっと怖いくらいだ。


「あー…… まぁ、諸事情で色々出来るんです。今から説明する魔法もその一つなんですが……

 ともかく、これを使えば俺達にも勝機があるかもしれません」


 俺はルーン文字が刻まれたダガーを掲げると、作戦を説明し始めた。


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