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【1章終了】逃げ癖ハンターは立ち向かう 〜狩人の大精霊に憑依された底辺ハンターは魔物に溢れた現代で無双する〜  作者: 藤枝止木
2章 ハンター、都会へ行く

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第55話 ハンター、水没ダンジョンに潜る(3)


 中々特殊な環境で野営した翌日。俺達は探索を再開した。

 新たに獲得した音響測位スキルは、元々持っていた超聴覚のスキルと最高に相性の良いものだった。

 この二つのスキルにより、坑道(こうどう)の三次元構造と、そこに潜む魔物達の位置を手に取るように把握する事ができたのだ。

 さらにノルフィナが持つ地図情報を組み合わせる事で、俺達は最小限の戦闘のみで目的地に近づいていた。


 ゴォンッ……


「しかし、時々聞こえてくるこの音はなんだ……?」


「え? うーん…… 僕は何にも聞こえないけど、師匠には何か聞こえるの?」


「ああ。ハンマーで岩壁を叩くような音が…… なぁ、シロ?」


「ワフ」


 坑道(こうどう)の奥に向かって耳を澄ませるトモミンに、俺とシロは揃って頷いた。

 スキルで強化された俺と、元々耳のいい彼だけがこの音に気付いていた。

 それを見たノルフィナが地図に目を落とす。


「えっと…… このペースならあと一時間ほどで最深部に到達します。もしかして、音源はその辺りでしょうか?」


「おそらくな。もう少し近づけば測位の解像度も上がるんだが……」


 そして、徐々に大きくなる打撃音を聞きながら進むこと一時間。俺達は坑道(こうどう)の最深部に到達した。

 そこは、地下深くとは思えない程に大きなドーム状の空間だった。

 奥には不思議な輝きを放つ金属質の壁がある。あれが見つかったというミスリルの鉱床だろう。

 広い空間内には、目視できる範囲で百体近いケイブサハギン達が漂っている。

 しかしこの場には、鉱床や魔物の大群よりも目を引くものが二つ存在していた。


 ドゴォンッ!


 一つ目はミスリル鉱床の脇の壁際。通常個体の数倍の体格を持つケイブサハギンが、ハンマーのようなものでひたすらに岩壁を破壊していた。

 どうやら打撃音の正体が判明したようだ。

 使ってる奴がデカいせいで、ハンマーはトンカチのようなサイズ感に見える。

 しかしその大きさは子供の身の丈ほどもあり、施された意匠も見事だ。


 そして二つ目は、奴の近くの壁に開いた巨大な穴だ。

 あれが地下水脈に繋がる穴だろう。奥には、シロの照明も届かない漆黒の闇が広がっている。

 おそらく奴は、ひたすらにハンマーで岩壁を砕き、元は小さかったであろうその穴をここまで拡張したのだ。

 やっぱりこいつら、地上侵攻を考えているんじゃあ……?


「穴も魔物もでっかぁ〜……! ねぇねぇ、あれってサハギン達の王様かな?」


「きっとそうですね。そしておそらく、あのハンマーは……」


「ああ。聞いてた特徴と一致する。伯爵の家宝の戦鎚だろう。探す手間が省けたな」


「ワフ……? グルルルッ……!」


 すると、仮称キングサハギンがぴたりと手を止め、のっそりとこちらを振り返った。

 その巨体から濃密な殺気が発され、周囲を漂っていたケイブサハギン達もこちらに気づく。そして。


『ゴギギィッ!』


『『ギギギギギィッ!!』』


 キングサハギンが咆哮のような歯音を立て、凄まじい速度で向かってきた。

 それを合図に、広間内のサハギン達も一斉に向かってくる。


「討伐陣形! 広間内のサハギンを殲滅する! ノルフィナは空気ドームを拡張!」


「「応!」」


 俺の号令に、全員がノルフィナを背中に庇いながら身構えた。

 さらに俺達を覆う空気のドームが半径10m程に広がる。

 これで接近戦にもつれ込んでも自由に動ける。敵が俺達に接近できれば、だが。


千刃乱舞(ブレイズ・ストーム)!』


『ワォォォォン!』


 俺が操るダガーの群れが、シロが放った強烈なレーザー光が、殺到するケイブサハギン達を次々に撃ち落とす。


『『ギギィッ……!?』』


 接近したものから倒され、サハギン達は俺達に近寄ることができないでいる。

 このままワンサイドゲームになるかに思えたが……


 ザバァッ!


 水中を異様な速度で泳ぎ切ったキングサハギンが、体中に傷を負いながらも空気ドームの中へと侵入してきた。


「流石の耐久力だな……! トモミン、いけるか!?」


「もちろん! まっかせて!」


 接近戦に備えていたトモミンが応え、迎え撃つようにキングサハギンへと踏み込む。


「ゴギィッ!」


「まっけないぞぉ……! えい!」


 キングサハギンが戦鎚を打ち下ろし、トモミンはそれを打ち返すようにモーニングスターを振るった。


 ガキィィィンッ!


 両者の武器がぶつかり合い、広間全体に妙に澄んだ音が響いた。


「「……!?」」


 その瞬間、何か、異様な感覚の波動のようなものが俺の全身を突き抜けた。

 すると俺とダガー群とを繋ぐ感覚が消失し、煌めく刃の群れは水中で失速。次々に落下していく。

 さらにシロの照明がふっと消え、周囲は暗闇に覆われた。


「なんだ!?」


「ワフッ!?」


「ちょ、ちょっとー!? 何にも見えないよー!?」


「これは……!? 皆さん! ドームが--」


 ドバッ!


 ノルフィナの悲鳴のような声。その途中で空気のドームが決壊し、大量の水が俺たちの元へ押し寄せた。

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