第八話『スラムの影と界獣誘拐』
「さて、これからどうすっかな」
俺たちは宿に戻る。
「かなり名声もお金も得ましたし、召喚士を探しに、他の国の協会支部を訪ねますか?」
「うーん、確かにこの国には目立った召喚士はいないか...... ただもうお金も得たし、このままだらけて生きていってもいいような気もしてきた」
「召喚士はその力を人々のために役立てられるのですよ! それが召喚士の役割です! 力あるのものはその責任があるのです!!」
「えー 俺は帰りたいだけだったし、それも叶いそうにないなら、このまま不自由なく暮らしたい」
俺がそういうとルエルは真剣な顔をしてこちらを見ている。
「......あなたの意思を無視してこちらに来たのなら、帰るためにご協力するつもりでした。 ですが、本来界獣は人々の役に立つのが責任なのです!」
「でも、帰れそうにないし、俺がこの世界のために何かする義務もないよね」
「もう! 知りません!」
ルエルは鼻を鳴らしてドシドシと床を踏んで出ていった。
「なんだよ、あいつ。 こちとらもう何回も死線を越えてんだぞ...... 俺はただの高校生だったんだ。 そう簡単に命をかけてられないんだよ」
俺はベッドに寝転んだ。
「すみません。 ハンター協会のミーシャです」
その時部屋のドアがノックされ、そう声が聞こえた。
「ハンター協会...... なに?」
出ると協会の受付嬢がそこにいた。
「あれ受付の......」
「ミーシャです。 今日はナナミさまに折り入って協会よりお話がありまして......」
そう言いづらそうに話すミーシャさんが気になる。
「俺に...... まあどうぞ」
ミーシャさんを部屋に招いた。
「あれ? ルエルさまは?」
「ああ、あいつは食べた」
「食べた!?」
ミーシャさんは目を見張った。
「それより、何の用?」
「い、いえ、今、少し気になることがありまして」
「気になること?」
「実はどうやら世界各地で界獣が姿を消しているのです」
「界獣が......」
「ええ、協会に所属するハンターの界獣もいなくなっております」
「界獣の誘拐...... それこの国でも起こってるのか!」
「え、ええ、モンスター化しない界獣は人と共に生きている場合もありますから、それに帝国が何かの実験を行っているとの噂もあり......」
「帝国...... グラスファード帝国か」
(まさか、ルエル......)
「俺ちょっと行ってくる!」
「あっ!! 待ってください!!」
俺はその言葉をきかず部屋を飛び出した。
「どこ行ったんだルエルのやつ......」
とりあえず、町を歩き界獣の話を聞いた。
「いや、知らないな」
「そんな界獣見たことないね」
何人かに聞いたあと、一人見たものを見つけた。
「んー でもピンクの界獣が歩いていたって話は聞いたけど」
「それはどこで!?」
「えーと、町の裏通りだったかしら」
(裏通りか......)
他にもブタのような界獣をみたものもいた。
(まさか、本当にさらわれたんじゃないだろうな)
「仕方ない...... ルエルを探せるものを呼ぶしかない」
俺は意識を集中して念じる。
空間が歪むと、一匹の仄かに発光する青い蝶が俺の前に現れた。
「名前は」
「エフェネ」
そう頭のなかに声が聞こえた。
「エフェネ...... すまないがルエルを探してくれ、できるか」
俺がそういうとエフェネは空に舞い上がり、揺れると影が浮かぶように一匹、二匹と増えていき、無数の群れとなったエフェネは、それぞれ別方向へと飛んでいった。
「エフェネは分裂するのか...... ルエルがいないと能力がわからないが、これで見つけられるか」
とりあえず、一匹の後を追った。
「くっ...... エフェネを出していると、魔力を消費し続けているのか...... 疲労がすごいな」
みるとエフェネが細い路地へと入っていった。
「あそこはスラムか......」
俺は武具屋で買っておいた腰の短剣を確認して、路地へと入る。
そこは裏通りで建物の裏手で光もなく暗く、こちらを物珍しげに見る怪しげな男などがいる。
(治安はよくなさそうだな......)
エフェネは飛んでいくと、ある建物の近くで旋回している。
「あそこは...... よしエフェネ帰れ」
エフェネを呼び戻す。
その時、ある細い路地から手が出てきて、俺を引っ張った。
「なんだ!?」
「しっ!!」
みるとローブのフードを被った人物が口に手を当て、座るようにジェスチャーを指でした。




