第七話『進化する界獣──ギュラの炎と召喚士の名声』
再びあの山へとやってきた。
「ルエル、今度は上に乗らないように調べてくれ」
「わかりました。 地面の魔力を感知しながら進みます」
ゆっくり慎重に俺たちは山道を進む。
しばらく進むと、ルエルが止まりうなづく。
「ここか......」
「ええ、この先の地面の下に魔力を感じます」
「擬態しているな」
目の前にはただの荒れた地面があった。
俺たちは壺を地面におく。
「これでどうするんですか? この油の壺をあそこに置きにいったら、食べられますよ」
「大丈夫だ。 トゥエロ!」
「それって!?」
俺はトゥエロを呼ぶ。 頭痛がひどい。
空間が歪み黒い鏡が目の前に現れる。
「大丈夫ですか! マスター!」
「あ、ああ、大丈夫だ...... さあ、この壺をトゥエロの中に入れるぞ」
俺たちは壺を横にしてトゥエロの中に転がした。
「できました」
「よし! ギュラ頼む!」
ギュラを呼び出してトゥエロに向かって炎をはなった。
「トゥエロ閉じてくれ!」
俺の声でトゥエロはそのまま消えた。
ゴゴゴゴゴ......
地面が激しく動き出した。
そして地面が盛り上がり、大きなカエルが悶えている。 しばらく悶えると黒煙がその口からあがった。
「油壺を体内に転送したんですか...... それでギュラで火をつけたんですね」
ルエルが煙を吐きつづけているカエルをみていった。
「ああ、大型の魔炎瓶だ」
「なるほど、店の魔炎瓶をみて...... あれっ! 動いてきますよ!」
カエルがその巨体を揺らしこっちに向かってくる。
「くそっ! 火力が足りなかったか!」
「どんどん近づいてきます!」
「逃げよう!!」
カエルから距離をとろうとする。 だが、その巨大な体はこちらに迫ってくる。
「くっ...... トゥエロとギュラを使ったから疲労が......」
「マスター背中に乗って!」
ルエルが俺を突き飛ばし、その背中に乗せて走り出した。
「だ、ダメです! 逃げきれません!」
後ろにカエルが迫る。
「くそっ! もう一度トゥエロを......」
呼び出そうとするも頭痛で集中が途切れた。
「もうトゥエロを呼ぶ魔力はありません! 私から魔力を送ります!」
「まて...... だめだ。 そんなことをしたら今度こそ消えるぞ」
「でも!」
(もう一度シェリーとギュラなら呼べるか...... ただどちらもあの体を貫けない。 いや確か、ルエルはイメージで界獣が姿かたちを変えると言っていた......)
目の前に黒い影がおおい後ろを見ると、ロックトードがその巨大な口を開けていた。
「ギュラ!! 来てくれ!! えっ!?」
空間が歪むと、ギュラの体は以前よりも大きく、背筋が伸びていた。 赤い鱗は光を反射し、両腕の爪が鋭くなっている。 まるで炎を纏った恐竜のようだった。
「ギュラ...... その姿...... いや、今は! ギュラ、炎だ! 口の中に放て!!」
ギュラは口から炎を吹き出した。 その炎は渦をまきながらカエルの口へと
吸い込まれていった。
ドオオオンッ
カエルがのけぞると、空に炎を吹き上げ、そのまま後ろに倒れ土煙をまきあげた。
「はぁ、はぁ...... 倒したか」
「え、ええ、なんとか......」
俺たちは息も絶え絶え、その場に倒れこんだ。
「確認しました! ロックトードの討伐おめでとうございます!」
受付嬢がそうカウンターで驚きの声をあげた。 周囲がざわめく。
「あの子供、ロックトードを倒したんだってよ!」
「一人でか! 嘘だろ! 兵士たちが逃げ帰ったやつだぞ!」
「......いいえ、あの子どうやら召喚士みたい」
「召喚士、始めてみたな。 確かにそれなら勝機もあるか......」
驚きや感嘆、懐疑的な声まで聞こえてきた。
(どうやら、かなり有名になったみたいだな...... まあ、無理もない。 あんな化物だったからな)
「ではこちら報酬となっております」
「ありがとう」
受付嬢からカードを受け取り、俺は協会をでる。
「なんとかなったな......」
「ええ、今後は受ける依頼を考えましょう」
「だな。 それにしてもギュラが二足歩行の恐竜みたいになってたぞ」
「あなたの強い力を持つギュラのイメージが、強い形へと変えたのでしょうね」
(なるほど、俺の無意識がそう変えたのか)
「あ、あの......」
ルエルはこちらをチラチラみている。
「無理だぞ。 どうやったかよくわからんし」
「えー 試してくださいよ! 豹みたいな、しなやかでかっこいい姿にしてください!」
「無理だって、あの形もイメージしてた訳じゃない」
「ずるい!! 私もあんな風に変わりたい!」
ルエルは短い足で、たしたしと地面を踏み鳴らし抗議した。




