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第四十三話『影の戦場──潜入と裏切り』

 馬車で森が見えてきた。 


「ここか、それで警備の数は」


「かなりの数だ。 さらに召喚士も数人いるはずだ......」


 ザメルはそう緊張ぎみにいった。


「こちらは三人とルエルか......」


「クリエイスさまも魔巧具の剣を持っていましたよね」


「かなりの使い手だったはず、なぜ簡単に捕まったんでしょう」


 ルエルとシェイネスが聞いた。


「おそらく反乱が起こらないように自ら投降したのかもしれない。 クリエイスさまを慕うものは多い。 もし反乱が起これば、帝国などの侵攻を招きかねない。 そうすれば帝国に支配されるからだろう」


「......それで、自ら...... あの人らしい。 ただこのままでも帝国に支配されると思うが......」


「......もう森にはいる。 ここらで馬車をおこう」


 馬車をとめ、森へとはいる。



 森を慎重にすすむ。 


「ザメル、どの辺だ」


「仲間からの話だともっと奥だ」


 ルエルを見ると、前後左右を見て首をふっている。


(そうか......)


「シェイネス、ビヨスを使ってくれ」


「......わかりました」


 エフェネを使い、森の奥へと向かわせると、前後左右にエフェネが散った。


「なんの界獣だ?」


「ああ」


 その時、周りの茂みから人が大勢現れた。


「マジェルク!」


「穴ができるぞ! 地面に気を付けろ! 男は炎をつかう!」


「くそっ! 警備か!」


 ザメルが叫んだ。


「殺れ!!」


 リーダー格の男がそういうと周囲の者が剣をぬき、こちらに迫る。


「クアト!」


「ぐあああっ!!」


 クアトの衝撃波で数人が吹き飛んだ。


「くっ...... 炎以外も使えるのか! 組んでやるぞ【バラム】! 【ダランダ】」


「ああ。 【ズリアニ】」

 

 地面から黒い巨大なムカデが現れた。 その上にザリガニのようなものが乗った。


「シェリー!!」


 光が高速で黒ムカデに向かう。 だがムカデの前にでたザリガニがそれを受けると、シェリーが弾かれた。


「なっ......」


 ムカデが口から黒煙を吹き出した。 煙が充満すると周囲が漆黒に包まれる。


「目が見えない!」


「落ち着けザメル、これはただ煙じゃなく影か」


「ええ、視界を奪う影ですね」


「どうします」


「ルエル、感知できるか」


「ええ、今周りを回って隙をうかがっているようです! ただ速すぎてすぐ位置が変わります!」


「あのザリガニ、衝撃を弾いた感じだったな...... 固い感じじゃなかった体を柔らかくできるのか......」


(ただこの暗闇の中、高速で周囲を回っているやつに広範囲に当てようとすると、どこにいるか正確にはわからないシェイネスたちにも被害がでそうだ」 


「シェイネス、ビヨスで俺たちの周囲をだいたい囲んでくれないか」


「わかりました」


「かなり近づいてきてますよ!」


「ああ、タイミングだな。 ビヨスは?」


「ええ、我々の周囲を囲みました」


「よし」


(当てられても一発...... しかも、ムカデだけに当てないと)


 その時、ガリガリという音がする。


「あそこだシェリー!! 低く飛べ!!」


「ギイィィィ!!」


 高速でうちだしたシェリーはムカデを撃ち抜いたらしく、鳴き声が聞こえると、影が一気にはれた。


「ザッファ!!」


 ザッファが突風を吹き出すと、地面に落ちていたザリガニを切り裂いた。


「くっ、そんなこいつ、いくつ界獣を使える!?」


 召喚士らしき男がそういった。


「クアト!!」


 衝撃波で召喚士が吹き飛び倒れた。 残りのものたちも拘束した。



「警備はこれだけか......」


 ザメルがいう。


「シェイネス......」


「ええ」


 ザメルの背後に回ったシェイネスが首筋にナイフを当てた。


「なっ......」


「お前はグランバルトの手の者だったんだな」


「何をいって......」


「奴らは俺たちの界獣の能力をしっていた...... 俺たちをここにおびき寄せたんだな。 やはり酒場の奴らもグルか」


「............」


 沈黙が真実を語っていた。


「......そうだ」


「なぜだ。 前に聞いたお前の話は嘘だと思えない。 それでもクリエイスを憎んでいたのか」


「......理想と現実は違う。 クリエイスさまはこの国から貧富をなくすといっていたが、現実にはなくならなかった。 それどころか拡がる一方だ。 少なくともグランバルトは帝国に与するからこの国を戦争から回避できる」


「それで...... か。 だがクリエイスさまがこの国から放逐されれば、それでいいんだろ。 それなら場所を教えろ。 俺たちはこの国をどうかしたいわけじゃない」


「......わかった」


 ザメルは少し沈黙したあと、そううなづいた。

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