第四十一話『ハルリールの政変──クリエイス王の影』
「これは...... もしかして魔鉱石を含む石ですか?」
シェイネスが驚いていった。 机の上に魔鉱石を含む石がある。 俺たちはマジェハとの交渉で手に入れていた。
「ああ、マジェハという界獣が住む山から提供してもらうことになったんだ」
「えっ? 界獣が提供ですか?」
「そうだ。 マジェハに食事と安心な住みかを提供する代わりに、鉱物の採掘を許可してもらったんだ」
「すごい! これだけの魔晶石なら販売...... いえ、魔巧具も作れるかも」
シェイネスがそういった。
「ああ、ただ専門家がいない。 魔晶石を抽出する加工技術と、魔巧具を作る技術者だ」
「確かに、我々にはいませんね。 いるならハルリールか帝国にでもいかないと......」
メイマールさんはそういった。
「さすがに帝国は無理だし、ハルリールも主産業だから、技術者は来てもらえないな......」
(それにクリエイスさんを裏切るみたいで気がひける)
「この鉱物を販売だけにするか」
「それならハルリールだね。 あそこなら需要はあるはず、ただいきなりいっても取引できるかな」
リシェは不安そうにそういう。
「そうだな。 持っていって見せてみるか」
(一応、知り合いだから、クリエイスさんが買い取ってくれる可能性はあるはず......)
クリエイスさんに取引を持ちかけるため、ハルリールに向かうことにした。
「何か、ざわついてないか?」
「ええ、みんな焦っているようにみえます」
ルエルがそういう。 飛行船で降り立ったハルリールの町【ヤークラ】は騒然としていた。
「クリエイスさまが捕らえられたらしい......」
(クリエイスさまが!?)
俺とルエルは顔を見合わせた。
「やはり、【グランバルト】さまか」
「グランバルトさまは帝国に通じているともいわれていた...... どうなるんだこの国は」
人々は不安げにそう話し合っている。
「そんなクリエイスさまが捕らえられた...... 信じられない」
「グランバルト、確か、クリエイス王の叔父だったはず......」
シェイネスがいった。 シェイネスは魔巧具に興味があるらしくついてきていた。
「クーデターでしょうか。 心配ですね」
ルエルはそういう。
「ああ、クリエイスさまだから取引できそうだったのにな...... クリエイスさまは心配だが」
「......私たちにできることはなさそうですね」
「いえ、これは幸運かもしれませんよ」
肩を落とした俺とルエルにシェイネスはいった。
「幸運......」
「クリエイス王は魔巧具の専門家、捕らえられたのなら、こちらに招くことも可能なはず......」
「なるほど、そういえば研究家と名乗っていましたね」
「ただ国が関与していることだぞ。 さすがに難しい」
「ええ、ですが、なにもしないよりはいいのでは」
そうシェイネスは珍しくいう。
(ガルグルムさまがなくなって塞ぎ込んでいたから連れ出したが、何かせずにはいられないのかもな)
「すこし、調べてみるか」
俺たちはクリエイスさまに会うために、町で情報を集めることにした。
「シェイネス、ここにいくのか」
「ええ、町には警備の兵が巡回しています。 不用意なことを町の人は話してくれないでしょうから」
そういってある店にはいっていく。
「いくか」
「そうですね」
店にはいると、つんと酒の匂いが鼻にはいる。 そこは酒場で男たちが飲んだくれている。
「少し聞きたいんですが」
シェイネスがカウンターの店主に聞いた。
「......ガキが来るところじゃない」
そういかつい顔の店主がグラスを拭きながらこちらを一瞥していった。
「クリエイスさまに会いたいんだけど」
そういうとグラスを拭く手を止めた。
「なんだと......」
店主はこちらを見て怪訝そうな顔をしている。
「お前らそれは界獣...... ハンターか」
「ああ、信じるかはわからないが、前にクリエイスさまとモンスター討伐に行ったこともある。 心配で、どうなってるか聞きたいんだ」
「......グランバルトの手の者じゃなさそうだな。 とはいえ俺は何もしらん。 聞きたきゃ裏通りの【ザメル】という男にあえ、ただ安全とはいえん」
そういうと店主はグラスを拭く手を再び動かした。




