第四十話『産業の芽と銀の界獣』
「すごい人だ」
町には人が詰めかけている。 リルが、王契将に就任したことが世界に伝えられると、大勢の人が町へとやって来ていた。
「王契将の町なら安全だと大勢が来てるみたい」
リシェはそういうと、その後ろにリルは隠れている。
「ガルグルムさまのことがあるが、やはり安全なのは間違いないです」
イズはそういった。
「さすがに全員はまだ住めない町の拡張が必要だぞ」
ティモシーがいう。
「ああ、バレス親方に頼んで拡張しているが、教育や、医療もそうだが、まずこの町にはまだ産業もないからな。 田畑や果樹園等の、農業だけだと仕事が足りない。 まだ手持ちのお金はあるが、いずれつきる」
「じゃあ、何か、産業になるような仕事を作らないと、でも何かある?」
リシェは首をかしげるとイズが手を挙げた。
「わだしの故郷のように果樹園でお酒や、ジュースを作れるのでは、わだしお菓子とかも作れるです」
「じゃあ、イズ、それができる人や、教えられる人を集めて仕事を進めてくれ」
「わがりました!」
(とはいえ、それだけでこの町を運営できるとは思えないな。 そうだ......)
「メイマールさん、ガルグルムさまの城にいた時、みんななにしてたんです?」
「私たちは、モンスターや界獣が脱皮したり、死んだあとの皮や骨を加工して、それを販売していました」
「なるほど...... では素材を集めますから、同じようにしていただけますか?」
「ええ、もちろん。 我々はこの町に住まわせていただくので、協力は惜しみません。 かつての販路もありますしね」
メイマールさんたちは笑顔で請け負ってくれた。
「多分、これだけじゃ足りないな」
「技能を持つものも少ないしな。 私はこの町に来てからこの周辺を警備がてら、探索していたんだが、向こうの山に何かあるんじゃないか」
ティモシーがそういう。
「山なら鉱物も採掘できるかもしれないな。 調べてみるか」
(またあの悪夢、なぜだ...... より鮮明になってきている。 山で巨大な影に飲まれる...... 正夢じゃないだろうな)
次の日、ティモシーに案内してもらい、山へとやって来た。
「ここまでは、俺も見に来ていないな」
「モンスターを討伐するために周辺を探索してましたしね」
ルエルがそういった。
(それにしても、あの黒いルエルはなんなんだ...... 王獣でもないし、禁獣なのか。 それになぜか懐かしい感じもした)
「なんです? じろじろ見て...... そうだ!! 何でなんですか!」
思い出したようにルエルが怒りだした。
「何を怒ってるんだ?」
「私、無意識の世界で別の姿になっていたでしょう! こっちに帰ってきたのに、なんでまたブタなんですか! あのままにしてくださいよ!」
(そういえば、少女の姿だったな......)
「絶対に手足が長かったし、人間のようだったでしょう!!」
そうその短い足で地面を踏み鳴らす。
「まあ、その姿もかわいいからいいだろ」
「本当ですか! いや、そんなことでは騙されませんよ!! ちゃんとあの姿にしてくださいよ!! ねぇ! 聞いてます!! マスター!」
そう後ろから鼻息を荒くしながらルエルはついてくる。
大きな山が目の前にある。
「何か魔力を感じます......」
「本当か! それならよく調べないと、中にはいれる洞窟のようなものはないかな......」
「あそこ!」
ティモシーがいう方に茂みに隠れた穴があった。
「よし、入ってみるか。 エフェネ」
エフェネを灯りに暗い洞窟へとはいる。
「エフェネが周りに飛んでいくな」
「私もこの洞窟全てから魔力を感じます。 魔力を含む魔晶石かもしれないですね」
ルエルが鼻をひくつかせていった。
(これが使える魔晶石なら、ハルリールのように町も魔巧具の販売なんかもできるかもしれないしな。 ただ技術者がいない)
「おいナナミ!! 地面が!!」
ティモシーがそう叫ぶ。 地面が揺れ、振動が伝わる。
「地面の中から何か来ます!!」
ルエルがいうと同時に地面が盛り上がり、洞窟いっぱいの大きさの巨大なワニが現れる。 その銀色の光沢ある体には無数の傷がみえる。
「モンスターか!!」
「......人間か」
「話せる界獣か!」
「ここは我が住みか。 人間は立ち去れ......」
「そうか、お前の住みかだったのか」
(夢では戦いになった。 それでみんな...... 話し合いができるなら)
「勝手に入ってすまなかった」
俺は謝ると、界獣は少し黙った。
「......ずいぶん、人間にしてはものわかりがいいな」
「他者のテリトリーをおかすつもりはない。 そちらも人間を襲わないで欲しい。 それなら共存もできるだろう」
「......そうか、話ができる人間もいるようだな」
「ということは、その傷......」
「ああ、かつて人間が話し合いにも応じず、この土地を奪おうと戦いを挑んできた」
「それはすまなかったな。 謝罪する。 みんなここはだめだ。 他を探そう」
俺たちが入り口へと向かおうとする。
「......待て」
「? なんだ」
「少し話がある」
それはこの界獣──【マジェハ】の提案だった。




