第三十八話『拝謁の儀──王獣との邂逅』
「俺は...... あの王獣を従えるどころでは」
「だがな。 もうお前の成長をゆっくり待ってられる状況じゃねえ」
「このままだと混乱は世界に及ぶ。 短期間に制御してもらうしかないな」
サンフォイザさまとハリベイルさまがそういう。
「そんな方法が」
「ある...... がかなり危険を伴う。 無理やり王獣と対話させるわけだからな」
フィグルスさまが怪訝そうな顔でいう。
「やはり、いきなりは難しいのでは...... 我らは六人、まだ各国が戦争を始めると決まってるわけではないでしょう」
「デュライアのいうとおりだ。 もしあの試練でナナミを失えば、王契将を完全に欠くことになる。 王契将候補がいると噂を流せば一時的だが混乱を納められよう」
「シェルディオ、それは必要だろうけど、一度戦争が始まれば、王契将になったナナミが現れても、戦争は止められないよ。 預言には新たな王契将が生まれるのは間違いないんだ」
「イオス、それはそうだが......」
シェルディオさまは言葉につまる。
(王獣を従える方法はあるのか...... もし戦争になれば、リルもリシェも皆も......
町ができたとしても、どうしようもなくなる)
「......少し家族と話してもよろしいですか」
「私は反対! そんな危険なことをナナミがする必要はないよ!」
「そうです! マスターは充分この世界につくしました!」
リシェとルエルはそういう。
「私も...... うっ......」
リルは泣きながら言葉をつまらせる。
「そうだな。 お前が世界を背負う必要はない」
「ああ、フィグルスさまはわからんが俺もそう思うぜ」
ティモシーもシャガもそう話した。
(俺もそんなことはしたくない。 でも王契将だったガルグルムさまですら倒すやつがいる。 そいつの目的がわからないが、このままだといずれ戦争になる気がする......)
そうなぜか確信があった。
「......シャガ、試練について何かわかるか」
「ああ、確か無意識の世界にいき、直接対話するらしい。 もちろん帰れるかの保証はない......」
「ナナミ! ダメだよ! 行かせない!」
リシェとリルはそう止めた。
「ただこのままだとおそらく......」
「間違いなく拘束に来ます......」
シェイネスが部屋にはいりそういった。
「拘束だなんて......」
リシェが言葉を失う。
「反対する王契将もでるでしょうが、ガルグルムさま亡きあと王契将同士の戦いは避けるはず......」
「だろうな」
シャガもうなづく。
「大丈夫だ。 必ず王契将になってみせるよ」
(やはりやるしかない...... うまく成功すれば俺が王契将になってここを守れる。 戦争も起こさせなくできるかもしれない)
俺も不安だが悟らせないように明るくそう振る舞った。
「そうか...... すまぬ。 今は対立できないのだ」
フィグルスさまは頭を下げた。 そばには目を伏せるシェルディオさまがいた。 俺は皆を説得してフィグルスさまのもとにきていた。
「かまいません。 戦争が起これば俺たちも危険にさらされますから」
部屋に向かうと王契将六人が揃っていた。
「それでは、【拝謁の儀】を執り行う」
俺を中心に、六人の王契将が囲むと、みんな目を閉じた。
「ナナミ、目を閉じ心を空にしろ」
フィグルスさまに言われ目を閉じた。
(今はただ成功することを信じよう)
それから無心になり、暗闇の世界に落ちていく。
しばらくすると、浮遊感のようなものがあり、目を開ける。
そこは宇宙空間のように真っ暗だった。 遠くには星の瞬きのように光る点が存在する。
「ここが無意識の世界か...... 浮遊感以外の肉体の感覚がないな」
周囲に光が近づいてくる。
「これは、シェリーか」
その他にもギュラ、クアト、エフェネ、ザッファ、エトゥロ、そう思える光が俺の回りに集う。
「みんな、来てくれたのか。 ルエルがいない......」
下のほうから途方もない存在の圧力を感じる。
「あれだ......」
俺は下に向かう。 近くにあると錯覚していたが、それは途方もなく遠くにあった。
そこには高密度の黒い光が存在していた。 体もないが近づくだけで消し去られるような感覚を覚える。
「......なんのつもりだ......」
黒い光から圧迫感を感じる。
「すまないが、話を聞いて欲しい」
「......話だと、聞くと思うか」
明らかに拒絶の感覚がある。
「ああ、力を借りたい」
「人間風情が......」
「うっ!!」
弾き飛ばされそうになる。
(これは拒絶の意思だけで弾かれたのか...... やはり、説得なんて......)
俺の回りのシェリーたち光が回りを回る。
「貴様たち...... 小賢しい」
光が吹き飛ばされても、また集まってくる。 その光は小さくなっているように感じた。
「やめてくれ! このままだとお前たちが消えてしまう!」
俺は間にはいり止めた。




