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第三十四話『均衡の妥結──二人の監視者』

「このままでは決着がつかない...... 今回は互いに妥協することでどうだ」


 ガルグルムさまは戦いを中断してそういった。


(力が拮抗していたからか......)


「それでナナミの処遇はどうするつもりだ...... 我らも一方的に引くつもりはないぞ」


 フィグルスさまが聞くと、ガルグルムさまはうなづく。


「お互い、部下を彼につけると言うことで均衡を保つならば、私はひこう」


「......そうだな。 それならば互いに片寄ることもあるまい。 ハリベイル、サンフォイザどうか」


「......仕方ありませんね」


「まあ、このままやって共倒れも困るな。 いいだろう」


 二人も受諾した。


「では、私が部下をつける」


 ガルグルムさまがそう言うと、フィグルスさまがうなづく。


「シェルディオ、こちらは私でよいか」


「ああ、構わない」


「ナナミ、二人そなたにつくことになるが了承してくれ」


「構いません。 俺はリルたち家族が守れればそれでいいので、フィグルスさまの決定に従います」


 そう俺は答えた。



「すまぬな。 こちらから赴けば説得できるかと思っていたのだが......」


 フィグルスさまは頭を下げた。


「いえ、フィグルスさまが言っていただけなければ、いずれ拘束された可能性もありました。 それに......」


「あの中に敵がいる可能性か......」


「ええ、ゼグドの言葉を信じればですが」


「しかし本当にいるのでしょうか? 仮にも王獣を使役できるような人たちですよ」


 ルエルがそうつぶやく。


「......強い理想はときとしてその信念ゆえに危険なものになりうるからな」


 そう言ってフィグルスさまは少し沈黙した。


「......では、うちからはシャガをつかせる」


「はい」


「フィグルス、少し彼を借りられないか」


 そういいながら、シェルディオさまが歩み寄ってきた。


「ナナミをか?」


「ああ、お前たちが部下をつけるなら、問題あるまい」


「どうだ? ナナミ」


「いや、すみませんが家族がいるので......」


「大丈夫です!」


 リシェが割り込んでいった。


「そうか、それはよかった。 では私の国【ミグレシア】で待っている」


 そういうとシェルディオさまはその場を後にした。


「おいおい、リシェ」


「リルたちも連れて行こうよ。 ゼグドもいなくなったし、大丈夫でしょ」


「......まあ、確かに、旅行と考えるか。 リルにまた嫌われるのも困るしな」


「ナナミ来たぞ」


 ガルグルムさまの城から一人の少女がやってきた。


「ガルグルムさまからの命令であなたの監視をさせていただきます。 【シェイネス】ともうします」


 そう丁寧に頭を下げた。


「わかったシェイネス。 俺たちはこれからミグレシアに向かう。 構わないか」


「はい、私がつきますので構いません」


 そう言う表情には感情を感じない。 ただ仕事を淡々とこなす機械のようだった。 


(こちらには興味がなさそうだ)

 


 俺たちはミグレシアに来ていた。 優しい風が吹き青々として草を揺らし、見える湖の湖面が鏡のように青空を映していた。 そこは景勝地としられるだけあり、美しく雄大な自然があった。


「ここがミグレシアか。 きれいな国だとは聞いていたが予想以上だな」


 シャガは景色を見て感嘆している。 


「シャガも来たことがなかったのか」


「ああ、俺は孤児としてフィグルスさまに拾われてから、あの国から出たことはなかったからな」


(フィグルスさまに名前をもらったっていっていたな)


「そうか、一応ゼグドはいないが、リルのことも頼むよ」


 景色を楽しむリルの姿を見ながら、俺はシャガに話しかけた。


「ああ、任せとけ。 それで、シェルディオさまの頼みとはなんだったんだ。 城で聞いてきたんだろ」


「どうやら湖の近くでモンスターがいたらしい」


「そんなのこの国の奴らでなんとかなるだろ?」


「それが、そのモンスターが普通じゃないらしい」


「どういうことだ? 禁獣クラスの強さなのか」


「強さはそれほどでもないらしいが、とにかく行ってみて確認する...... シェイネスいいか」


「構いません...... ついていかせていただきます」


 そう感情もなく淡々と答えた。


「なんなんだ...... 無愛想なやつだな」


 腑に落ちないようなシャガを連れて、俺たちはそのモンスターが現れるという湖に向かった。



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