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第三十三話『七座の裂け目──王契将の均衡』

「それでフィグルス、我らを呼んだのはどういう事情があってのことだ」


 ガルグルムさまは席に着くと、そう話しを切り出した。


「うむ、皆に集まってもらったのは他でもないこの者のことだ」


 そういって席に着いたフィグルスさまは俺を紹介する。


「その者......」


 そう女性が穏やかな声でいった。

 

「そうだよデュライア。 彼はナナミくんさ」


 イオスさまがそういった。


「確かに、面白そうな子だね...... 何か特殊な力を感じるよ」


 鎧を着こんだ背の高い女性が俺を見てうなづく。


「ナナミ、あれがシェルディオさまよ!」


 そうリシェは興奮気味に小声で言った。


「そうですね。 どうやら巨大な魔力があのブタ...... 界獣からします......」 

 

 目を閉じた背の高い青年がいうと、短髪の男性が続ける。


「ハリベイルがそういうなら間違いないが、まさかその子どもが王契将だなんていうんじゃないだろうな」


(あの人がハリベイルさまなら、この人が糸の王サンフォイザさまか)


「サンフォイザ、私はそう思っている」


 フィグルスさまがそういうと、場が一瞬で張りつめた空気になる。


「おいおい、本当かよ......」


「ふむ、まさか新たな王契将とは......」


「しかし、それほどの力は感じぬが」


 皆一様に口を開いた。


「イオス」


「ああ、そうだね」


 イオスさまは再び王獣を呼び出し、その預言を七人に見せた。



「新たなる王契将の出現、それが我らを呼んだ理由ですか」


 静かにデュライアさまがいう。


「もちろん、まだ確定しているわけではない。 巨大な力をもつ界獣が彼のそばにいるのは間違いない」


 フィグルスさまがそういうと、みな黙った。


「それでこいつをどうするかということだな」


 サンフォイザは腕組みする。


「それを私に一任してほしいということだ」


「......それはできぬ」


 フィグルスさまの提案をガルグルムさまは一蹴した。


「そうですね。 王契将はその力より、他の王契将に過度に干渉することは互いに禁止したはず......」


「ハリベイルのいう通りだぜ。 俺たちは互いにこれ以上の力を持たんという取り決めをしただろう。 お前だけ突出した力をもつことになる」


 ハリベイルさまにサンフォイザさまが同調する。


「だからこその紹介だろう。 王獣と決まったわけでも、王契将となったわけでもない。 子どもだ。 フィグルスに預ければ問題ないと私は思う」


「シェルディオに一票」


 そうイオスさまは軽く言うと、デュライアさまが静かにうなづく。


「そうですね。 悪意や、他意があるなら我らに隠せばよいだけのこと...... フィグルス本人が我らを呼んだのはその証明では?」


「そうかもしれぬが、やはり我らの取り決めは絶対...... 均衡こそが我らの義務、力の偏りは争いを生む」


「均衡は強制的に支配や管理で行うものではない。 それこそ争いを生む」


 シェルディオさまがハリベイルさまにそう反論した。


「そうだ。 仮に監視をつけるとして誰がやるのだ。 やるものが干渉しないとも限らん」


 そうフィグルスさまがいった。


(どうやら、王契将は互いに警戒しているのか...... まあ、あれほどの力をもつのだから当然といえば当然か)


「こちらは四人、そちらは三人、決まりじゃないかな」


「イオス、多数決じゃねえんだよ」


 そうイオスさまをサンフォイザさまはにらんだ。


 その場の気温が一気に下がるように感じ、張りつめた空気が場を包む。


「フィグルスたちには悪いが、やはり捨て置けぬ。 ここで拘束させてもらう」


 そうハリベイルさまが立ち上がると、みな距離を取る。


「僕は戦闘力ないのでパスね」


「......私も回避させてもらいます」


 イオスさまとデュライアさまは部屋から出ていった。


 フィグルス、シェルディオさまとガルグルム、ハリベイル、サンフォイザさまが対峙する。


「......ランズアーガ」


 ハリベイルさまがいうと、空間から黒い粘体がぬるりとあらわれ黒いクラゲの形になった。 そして空間が激しく振動し、急に体が重くなる。


「ぐっ...... これは」


(体が潰される重力か!)


「すまないがおとなしくしてもらう」


「させないね! イルティーナ!!」


 シェルディオさまがいうと、円卓のコップからあり得ない量の水が逆巻いた。 そこからイルカが飛び出て口から水を圧縮して放つ。 その水流は床をえぐり、石片がとんだ。


「アーストータス!」


 ガルグルムさまが呼ぶと、床から鈍色の大きな亀が何体も現れ、その水を防いだ。 


(あれはエフェネのような分体なのか!)


「グランメイル!」


 フィグルスさまが叫ぶと、その体全体を覆う鎧姿になった。


(あれがフィグルスさまの界獣か)


 そして迫る亀たちに腕をふると、その衝撃で複数の亀が吹き飛び壁へと叩きつけられた。


「待て......」


 ガルグルムさまがとめ、一度、皆が対峙する状態になった。



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