第三十二話『動く城と円卓の王たち』
「何勝手なことをしてるの!!」
「すまない......」
リシェの眉が上がり、少し声も震えていた。 俺とルエルが何も告げず勝手に行動したから、怒りと心配が混ざっているようにも見えた。
「しかしリルの偽物とはね......」
「確認されなかったのですだ?」
ティモシーとイズがそういった。
「もう、そんな余裕はなかった...... あのゼグドだったから確実に本物だと思い込んだんだ......」
リルは静かに傷の手当てをしてくれている。
「ありがとう...... わたしのために」
「いや...... 当然だよ」
「ふぅ、しかたないね。 それでゼグドは」
「フィグルスさまに引き渡してきた。 あいつの後ろにいる王契将がわかればいいけど、王契将は七人だったよな。 フィグルスさまとイオスさま、残りの五人は」
「【鏡の王、デュライア】、【杯の王、シェルディオ】、【城の王、ガルグルム】、【糸の王、サンフォイザ】、【秤の王、ハリベイル】ね」
「あの王獣を従えるのか...... どんな人間なんだ」
「すごい人たちよ。 みんな逸話を持ってる。 私はシェルディオさまに昔から憧れているの。 昔、モンスターを倒したのを一度だけお見かけしたことがあるの......」
思いだしたようにリシェが話した。
「それより、王獣が現れたってことはナナミ、預言の王契将ってお前のことだったんだろ」
そうティモシーがいう。
「どうだかな。 多分あれが王獣だとは思うが、殺されかけたからな」
(しかし、あれを制御できる気がしない。 制御もできないのに王契将何て言えるのか)
「一応、フィグルスさまに伝えてある。 この宿で待機しろとのことだ」
すると数日後、連絡があった。
「待っていたぞ」
フィグルスさまがそう馬を降り言う。 俺たちはザクレア国境付近にいた、フィグルスさまに来るようにいわれたからだ。
「フィグルスさま、こんなところまで俺たちを呼んだのはどういうことですか?」
「もうしばし待て」
「マスター すごい魔力が近づいてきます!」
ルエルがいうのと同時に、大地がうねるように遠くから砂煙が舞い上がっている。 その中に大きな城が動いている。
「城が動いてくる!?」
「あれはガルグルムの王獣、【アーストータス】だ」
「ナナミ、下に亀がいる!」
リシェがいうように確かによく見ると、城の下に巨大な鈍色に光る亀がいた。 その甲羅には紋様が描かれている。
「あれが城の王の王獣か。 それでなぜ城の王が?」
「私が全ての王を召集したのだ。 ナナミを、紹介するためにな」
「俺を」
「そうだそなたは王獣の契約者かもしれない。 王獣の契約者は全員に、認知させることが皆の取り決めでな」
そうフィグルスさまがいう。
「ですが、ゼグドの背後には王契将がいるかもしれない...... あいつは何か話しましたか」
「......いや、ただひたすら召喚士への憎悪を語るのみだ。 どうやらやつの故郷は召喚士によって滅ぼされたらしい」
(それで俺にあんなに敵意を持っていたのか......)
「さあ、いこう」
亀が止まったのを見て、フィグルスさまと俺たちは城へと向かった。
巨大な亀の背に築かれた城へと足を踏み入れる。 城内は荘厳な雰囲気の中、左右対称の建造がなされている。
「なんか寺院みたいだね」
リシェが城内を見渡して言った。
「ああ、それに人が住んでいる気配がないな」
「ガルグルムを慕うものたちが従事している。 やつは真面目で頑固だ。 この城を見るとわかるだろう」
「確かに無駄なものが一切ないですね」
「やつの性格を表している。 潔癖でとても清廉だ」
そういうフィグルスさまの表情は言葉とは裏腹に表情が固い。
(緊張しているのか...... まあ、王契将に敵がいるかもしれない。 元々仲間ではないようだしな)
大きな扉を開けると、そこに巨漢の男がいた。 その面構えから揺るがぬ信念を持つように感じる。
「フィグルス、他の者は集まっている」
そう呼ばれ入った部屋には大きな円卓があり、天井には天体なのか星座のようなものが描かれている。 円卓の中央には各王契将の紋章らしきものが七つあった。 そこに六人が座っていた。




