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第二十九話『蝶の預言と王契将の未来』

 俺はとても困っていた。


「うーん、仕方ないよ。 最近、ナナミは帰ってこなかったし......」


 リシェがそういうと、イズもうなづく。


「そうです。 ナナミさまを、待って寝ずにいたりしましたからね」


「マスター......」


 遠くでリルが窓際で足を抱えて窓の外を見ている。


 どうやらあまり構わなかったからすねてしまったようだ。


(色々やることが...... なんて言っても無駄だな。 確かに最近動き回ってリルとコミュニケーションをとってなかった。 俺も両親が不在が多かったから、わかっているつもりだったが、結局同じことをしてるな)


「さて、どうするか......」


「まあ、なんとかなだめるから...... それより手紙が来てるよ」


 リシェから手紙を預かる。


「嘘だろ......」


「なんですか?」


 ルエルが聞いてきた。


「よりによって、フィグルスさまからの要請だ」


「......それは断りづらいですね。 どうされます」


 リルのことが気にかかる。 


「いや、ここは断るか」


「待って...... それならいい方法があるよ」


 リシェがそう話した。



「わーー!!」


 リルが目を輝かせている。 俺たちはみんなでマルガストに来ていた。


(リシェがみんなでいけばいいといってくれて助かった)


「ほら、あれ!!」


 リシェは俺の手をつかんだ。


(ふぅ、どうやら機嫌も直ったみたいだな)


「私も来る必要あるのか?」


 ティモシーが困った顔をしている。


「ああ、ティモシーにはリルの護衛をリシェとしてほしい。 ここはゼグドがいた場所だからな。 それでなにかわかった事はあったのか」


「いや、ただ噂では今まで見たことのない、特殊な能力をもつモンスターが各地で現れていた、それだけだ......」


「そうか、でもフィグルスさまもクリエイスさんも調べてくれている。 今は報告を待とう」


「そうだな...... やみくもに探しても見つからんか」


 その日はリル、リシェとイズ、ティモシーと共に一通り観光を楽しんだ。



「よく来てくれた。 ナナミ待っていたぞ」


 フィグルスさまがそういって俺とリシェを迎えた。 リルが寝たあと城に来た俺はフィグルスさまに会いに来ていた。


「それで、直接あって話とはなんですか?」


「それは僕がお話ししよう」


 後ろからメガネの青年が現れた。


「あれは!?」


「しっているのかリシェ?」


「【本の王契将】、【イオス】さまじゃないかしら」


「よくごそんじで、いかにも僕は本の王契将だ」


 そうメガネを指で押し上げイオスさまはいう。


「まあ、あちらで話をしよう」


 フィグルスさまにいわれて応接室の方に移動した。



「それで、私に話というのは」


「そうだね。 まず分かりやすく彼に僕の事を説明してくれるかな、フィグルス」


 そうイオスさまはフィグルスさまに水を向けた。


「そうだな。 分かりやすくいえば...... 変人だな」


「はははっ、ひどいな! 外れてはいないけど」


 イオスさまは机を叩いて笑った。


(なんか仲良さそうだな)


「実際、国も持たず隠居同然に引きこもっているのだ。 王契将の役目も特に果たさないのだから、変人というしかないだろう」


「僕はこの世界の人間関係には関わりたくないのさ。 地位だの、金だの、国だのにね」


「王獣の所有者は世界にそれだけ責任がある。 お前は特に未来をしることができるのだから」


「未来...... そんな力が」


「......まあ、好きで手に入れた訳じゃないよ...... では本題には入ろうか。 さっきフィグルスが話したように僕の王獣は未来を知らせてくれる。 とはいえ、完全という訳じゃない」


「というと」


「まあ、見てもらった方が早いね。 【アジャクレシエタ】」


 そういうと空間が歪み、光る美しい大きな蝶が現れた。


「きれい......」


 その蝶はゆっくり優雅に飛ぶとイオスさまの手の中に止まる。 するとイオスさまは本をめくるかのように羽をパラパラとめくり始めた。


「それは......」


「ああ、これは本でね。 ここに、起こることが詩のようにかかれる。 まあ見たまえ」


 蝶が輝くと空中に一文字ずつ舞うように文字が写された。


 ひとつ、王の契りは増えゆきて

 眠れる獣に新たな名を刻まん

 

 ふたつ、空の裂け目は広がりて

 世界の律は揺らぎ、根を失わん


 みっつ、名もなき者、声を持たぬ者

 その手にて、光と闇の境を越えん

 

 されど、選ばれし者は知らず

 その歩みが、世界を繋ぐことを

 

 そう書かれていた。

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