第二十六話『飛行船の出会いと交渉の鍵』
「本当にこれに乗るのか」
目の前に巨大な船がある。 飛行船だ。 ハルリール公国に向かうため、飛行船にのりに来た。
「ええ! 飛行船です! 早く乗りましょう!」
ルエルが興奮気味にいった。
「大丈夫なのか? 本当にただの船なんだけど。 そもそも船の形にする必要ある?」
「早く、早く!」
ルエルは船から出された階段をかけていった。
俺たちが乗ると船は浮き空へと飛んだ。
「本当に浮いた!」
「高純度の魔晶石を組み込んで飛んでいるらしいです。 これもハルリールの魔巧技術らしいですよ!」
船の縁から空をみてルエルがいう。
(まあ、一応羽はえてるけど、飛べないもんな)
「それでハルリールはどんな国なんだ?」
「領土はそれほど大きくないですが、他の国に先駆けいち早く魔巧技術に取り組み、世界でも有数の技術をもつ先進国です。 その魔巧具を貿易し巨万の富を得たかなりの力をもつ国です」
ルエルがそう自慢げに話していると、そばにメガネの青年がやって来た。
「ほう、よく知ってるねブタくん」
「誰がブタくんですか!!」
そう、短い足をじたばたしながらルエルは抗議する。
「はははっ、すまない、この子は君の界獣かい?」
「ええ、そうです」
「すごいな。 話す界獣とは......」
物珍しげにルエルをみている。
「界獣に詳しいんですか?」
「ああ、好きでね。 彼らは人間とは違い、本質の存在だ。 下らない我欲とは無縁のものだからね。 とはいえ、私の専攻は魔巧技術だがね。 まあ、縁があったらまた会おう」
そういって、青年は去っていった。
「変な人だな」
「......でも何か奇妙な魔力を放ってましたよ」
ルエルがそういって鼻をひくつかせた。
「奇妙な魔力?」
「腰に剣を帯びていましたよね。 あれからです。 多分魔巧具かと」
「デュラードの持ってるやつみたいにか」
俺は向こうに歩いていく青年の背を目でおった。
ハルリールにつくと町の大きさに圧倒される。
「これは......」
「すごいですねえ!」
ルエルの興奮するのも無理はない。 そこは現代社会とも変わらないような町並みがあった。 町全体に街灯があり、浮いて移動する車、映像の投影された看板など、町中に魔巧具と思われる機械もそこかしこにある。
「ここまでとはな。 水も水道か。 まだ他の国は井戸だぞ」
「帝国もこのぐらいの文化水準らしいですよ」
「そうか、かなりのものだな」
「とはいえ、この動力、魔力なんですよね。 魔高純度の魔晶石があるからということですけど、本当にそこまでの魔力を集められるのでしょうか......」
ルエルがそうつぶやく。
(確かに、もしかしたら界獣から魔力を奪う魔星石のようなものを使っているのか...... いやさすがに国規模でそんなことが発覚すれば、他の国との信用を失い国が失墜するだろう)
「わからないな。 取りあえず、目当てのものを買おう」
俺たちは店を回る。
「源力玉? まさか、そんなものはここでは扱っていません」
「ありませんねぇ。 あれは希少なんです。 それよりこの魔巧具はどうです? お安くしときますよ」
「さすがにお客さん、そんなもの、町の店では扱ってませんよ」
全ての店で購入できなかった。
「......ありませんね」
ルエルが肩をおとした。
「まあ、希少なものだしな。 お金だけあってもやっぱり無理か。 リシェたちに何かお土産でも......」
「おお! 君たち!」
そのとき、飛行船であった青年が目の前にいた。
「どうした? 浮かない顔して」
「魔巧具を買いに来たんですが、それがどこにもなくて......」
「ほう、どんなものだい? もの次第だと販売してくれないものもあるぞ」
「やはりお金を持ってでもですか?」
「ああ、他国に技術流出するようなものは、地位か権力でもなければな。 それでお目当てのものはなんなんだい」
「えっと、確か源力玉です......」
「源力玉か...... それは希少技術だからな。 かなり難しいぞ。 何に使うんだ?」
「俺の町に電灯や火力として使うつもりなんですが......」
「ふむ、町か...... どこに住んでいるんだ?」
「ラークエイド国の森ですね」
「ラークエイド...... その森って禁獣がいたところじゃないか」
「その禁獣はこのナナミさまが倒したのです!」
鼻息荒くルエルが自慢げにいった。
「嘘だろ! 禁獣を倒した...... 君はハンターなのか」
「ええ、何とか仲間と協力してですけど」
「そうか......」
少し考えているようだ。
「少し頼みがある。 聞いてくれたら私が源力玉は用意しよう」
「本当ですか!」
青年は魔巧具研究者の【クリエイス】と名乗り、俺たちについてくるように言いながら事情を話し始めた。




