第十七話『少女と家と果実の森』
「うああああ!!」
俺はフィグルスさまの城を出て声をあげた。
「俺に子育て! 無理に決まってんだろーが!! 自分すら育ってないのに!!」
「まあまあ、仕方ないよ。 あの子を放っておいたら牢屋のなかだもん」
「そうですよ。 その選択は素晴らしいものです!」
リシェとルエルはそう勝手なことをいう。
「そんなこと言っても子供だぞ! 簡単に育てられるわけないだろうが! 金があればいいってもんじゃないんだぞ! なあ頼むよ! 助けてくれよ! 女の子なんて育てようがないよ!」
「はいはい、私も手伝うよ」
「ええ、もちろん私も!」
「頼むよぉぉ!」
城の前で情けない声をあげていると、少女が連れてこられた。
「......あ、あの今日から俺のところで暮らすんだ。 このお姉ちゃんとブタもいるから」
「誰がブタですか!」
「............」
少女は答えない、というよりどう答えたらいいかわからないようだ。
(ああ、もうどうしたらいいかわからない!!)
俺はリシェをみた。
「はいはい、私はリシェ、あっちはナナミ、この子はルエル、ねえ、あなたのお名前は」
「......リル」
「リルちゃん、いいお名前だね。 さあいこう、ごはん食べないと」
そういって手をにぎり、歩きだした。
「ふぅ、よかった」
「まあ、少しずつ打ち解けるしかないですね」
ルエルと共に歩きだす。
(16で子持ちかよ......)
俺は天をあおいだ。
「くそっ、この世界で成功者になれると思ったのに」
宿に戻って愚痴がでた。
「なってるじゃないですか?」
「うん?」
「仕事で成功してお金もあって、子供までできたでしょう?」
「うん、うん? 確かに...... でも何か違う」
その時、風呂からリシェとリルが戻ってきた。 リルは帰りにリシェが買ったワンピースを着ていた。
「寝たか......」
リルはルエルを抱き枕にベッドで寝息をたてていた。
「うん、ごはんを食べてお風呂にはいったからね。 だいぶ疲れてたみたい」
「リルからなにか聞いた?」
「うん、なにか気がついたらどこかにいたらしいね。 とても冷たくて四角い部屋だったんだって、ただ界獣が現れてその力で逃げ出すことができた。 そのあと盗賊に襲われて界獣を使ったら、ごはんがもらえたって......」
「盗賊に使われてたってことか...... 冷たい所、どこかに監禁でもされてたのかわからないな...... それでいくつだ」
「多分5、6才らしいけど、体はとても小さいね」
「たぶん食事をちゃんととれてなかったから成長不良なんだろうな」
「......かもしれない。 よくあることだね。 私もそうだったから」
そう悲しげにリシェはリルの寝顔をみている。
「そうなのか。 いやごめん......」
「いいよ。 私も気づいたらミリエラはそばにいて、一人だった。 その前のことはよく覚えてないけど、ある人に助けられて、いい人に預けられたよ」
「この世界はそういうのが多いのか」
「この世界?」
「いや......」
(俺が異世界人だと言ったら混乱させるか......)
「まあ、戦争や貧困なんかでの口べらしはよくあるよ。 スラムなんかでは子供たちも多くいるの」
(まあ、俺たちの世界でも住む所では、そういう子供もいたんだろうな......)
「しかし、これからどうするか......」
「お金はあるんだよね」
「ああ、依頼をこなしたからまあまあある」
「それなら住居を買えば?」
「住居? 家か。 これで買えるかな」
俺はカードを見せた。 数値が浮かぶ。
(確かにリルも宿暮らしより家の方がいいか)
「ええ、十分よ。 町の方がいいかな」
「じゃあ、明日見に行ってくるから、リルを頼むよ」
俺はリルをリシェに預け次の日、不動産屋に向かった。
「ここしかないの? すくなくない?」
出された書類をみて、俺は不動産屋の店主にきくと、困った顔をしている。
「いやぁ、町だとそうですな......」
小柄な店主はなにか奥歯にものが挟まったようなものいいだった。
「いや、金ならあるんだよ」
「それを疑ってる訳じゃないんですよ。 お客様ハンターでしょう?」
「そうだけど」
「ハンターを近くに住むのは周囲の人たちがいやがりましてね。 借り主がいなくなることもあって......」
「どうして?」
「そりゃ、ハンターは犯罪者なんかも捕らえますよね。 そうすると報復なんかで周囲が被害に遭うことがあるんですよ」
「なるほど、それでいやがられるのか......」
「ええ、郊外や森の中ならいくらでもあるんですが......」
そういって地図を持ってきた。
「この大きいのも売ってるの? これって町ぐらいの広さじゃないの!?」
「ええ、小国ぐらいありますよ。 ただモンスターもでますからな。 価格もこんなもので......」
「安い!!」
「ダメですよ! モンスターもでるし、町から遠すぎますよ。 リシェさんに怒られますよ!」
ルエルがそばでダメ出しをしてきた。
「......まあな、でも安いな」
「町からなら遠いですが、この森だけじゃなく湖や山もついてきます! 果実もたくさんなってるようですよ! それが食べ放題!」
店主が熱く語る。
「か、果実が食べ放題!?」
ルエルは身を乗り出した。
「そうですとも! このお値段は今後二度と出てこないお値打ち価格! どうです! ここを手に入れたら国を手に入れたもの同じですぞ!」
「ど、どうする?」
「どうします!?」
俺とルエルは顔を見合わせる。




