第十六話『霧と影の夜──罪と救いの選択』
次の日の夜、俺たちは三方すべてのルートの輸送車に乗る。
「特に異変はないな......」
「ええ、魔力も感じません。 しかし盗賊たちは人殺しはしてないようですし、あくまでも金目当てなのでしょうね」
ルエルは外を見ながらいった。
「まあ、それでも怪我人がでているしな。 捕えるにこしたことはないだろう。 それに界獣のイメージも悪くなる」
「......ですね。 最近、この手の界獣を使った犯罪が増えてきて、反界獣団体までいるそうです」
そう悲しそうにルエルはつぶやく。
「まあ、動物との共存も難しい上に、界獣はより人間とは異なる存在だからな。 受け入れない人間がいるのはやむを得ない。 ましてやかつての文明が自分達のせいとはいえ滅んだんじゃ仕方ないか」
「......そうですね。 私たちはこの世界が好きなだけなんですが」
その時、上空に花火のような赤い閃光が地面から放たれた。
「あれは流星筒か! リシェの方だ!」
俺たちは荷馬車から降りて、閃光の上がった方へとはしった。
(エトゥロを使うか...... いや、あそこの近くに行けるかわからない。 それに魔力も温存したい)
「シェリー!! あそこまで行けるか! 行けたらリシェを助けてくれ!」
光となったシェリーが先行して飛び出していった。
「はぁ、はぁ...... いた!」
遠くで盗賊とみられる者たちが剣を抜いてたっていた。 警備兵の姿は見えない。
「ミリエラ!!」
そう声が聞こえると、白い霧が噴射され、それに触れたものが凍りついた。
(あれは、クリエの氷の息か! リシェはクリエを使って姿を消しているな!
シェリーはどこにいった!? 戻ってないぞ!)
「くっ! 界獣がいる! 先にそいつをやれビエト!」
覆面の盗賊らしき者はそう叫んだ。
(ビエト...... 召喚士か!)
「マスター! 魔力を感じます! 大きい!」
ルエルがいうと、一瞬視界が暗くなる。
「なっ!!」
それは暗闇ではなく、地面から黒いものが飛び上がり、視界を遮ったようだった。
「きゃああ!!」
リシェの悲鳴が聞こえるが倒れた音も聞こえない。
(攻撃を受けたのか!? どうなっている! 敵の姿が見えない! それなら!)
「いけ! クアト!!!」
クアトが衝撃波を放った。 空間が揺れる。
「うっ......」
地面からなにか黒いものが飛び出し、その中からフードを被っ人物が飛び出した。 そしてシェリーとリシェ、警備兵たちもそばに倒れこんだ。
「お頭! ビエトがやられました!」
「なに!? くそっ! かまわねぇ! 逃げるぞ!!」
そう覆面のものたちはすぐに逃げ出した。
「待て!」
「マスター! まずはリシェさんたちを!」
ルエルの言葉でリシェにかけよった。
「大丈夫かリシェ」
「......うん、急に警備の兵士さんたちがいなくなって......」
「ああ、どうやらあいつの界獣の中に取り込まれたようだ」
「マスター!」
ルエルが呼んだので、倒れているフードの人物に近寄る。
「どうした? これは......」
そこに倒れているのはどうみても幼い女の子だった。 気絶しているだけだがボロボロの衣服をまとい、とても普通ではないと感じる。
「子供......」
リシェはそう呟いた。
「ああ、みたいだな。 仲間に見捨てられたのか。 でもあの界獣は......」
「かなりの強さだよ。 多分霊獣クラス」
リシェは眉をひそめる。
「なんだ? この腕の数字...... 1087」
少女の腕にはそう番号のようなものが刻印されている。
(数字......)
「さて、どうするか......」
とりあえず、シャガと合流した。
「ナナミどの、リシェどの、ルエルよ、よくやってくれた」
フィグルスさまがそう礼をのべた。 召喚士のいなくなった盗賊はそのあと簡単にシャガたちに捕らえられていた。
「それでフィグルスさま、あのこのことは」
俺は引き渡した少女のことを聞いた。
「おそらく盗賊に使われていたのだろうが、それでも罪は罪だ。 法は破れぬ」
フィグルスさまはそう真剣な眼差しでこちらをみすえた。
(一国の長としては法を破るのは難しいだろうな。 他の者に示しがつかない。 だったらあのこは......)
リシェとルエルはなにかを訴えるように俺をみている。
(......でも、子供だぞ。 俺自身もだ。 なにができる...... くそっ!)
「フィグルスさま、あのこを私に預けてもらえませんか」
「......育てるというのか。 しかし......」
「私に盗賊退治に協力すれば報奨をとらせるとおっしゃいましたよね」
そういうとフィグルスさまは沈黙した。
「容易くはないぞ」
そう俺の目を見据えた。
「......はい」
(本当にそう簡単に受けていいのか...... いいわけがない! ただあの子を捨ててもおけない)
「俺が育てます!」
「......いいだろう。 約束は約束、そなたにあの娘の身柄を引き渡そう」
フィグルスさまはそう約束した。




