第十五話『見えない宵獣団と三方の罠』
次の日、宿で待っているとドアをノックされる。
「どうぞ」
一人は短髪の赤髪の青年と、青い髪の女性がはいってくる。
「お前がナナミか。 俺はシャガだ」
「失礼ですよ! 私はミルニークともうします」
「よろしく。 こっちがルエルとリシェだ」
「よろしく」
「どうもよろしくお願いします」
ルエルが挨拶すると、シャガが目を丸くした。
「お、おい! ブタがしゃべったぞ!」
「ブタじゃないです! 界獣です!」
「本当に界獣がしゃべるの......」
二人は言葉を失っている。
「ブタのことはいい、早速盗賊のことなんだけど......」
「よくなーい!!」
ルエルは床をタシタシ踏み鳴らした。
「なるほど、夜の闇に乗じて人を襲うのか」
「ああ、輸送の荷馬車なんかだな。 襲われたやつは死んじゃいないが、金目のものはごっそり奪われている」
シャガが頭をかいていった。
「界獣を使っているの?」
「ええ、黒い影をみたという話ですね」
リシェにミルニークがそう答える。
「闇夜だけなら、朝と昼に輸送すればいいのでは?」
ルエルがいうと、シャガは机に頬杖をつく。
「出来るだけそうしてるが、ここは他の国とも遠いからな。 朝昼だけじゃ商売は出来ん」
「やはり捕まえるしかないか。 それで何人ぐらいなんだ?」
「みたやつの話だと全員で十人前後、召喚士はおそらく一人だ」
「それなら、わざわざ俺たちに頼まなくても捕らえられるんじゃないか」
「それがよ。 俺たちが張ってると出てこねえんだよ。 まあルートは三方向あるが、毎夜、毎夜は全てに警備につけねえから、何度もからぶってる」
「それって内通者がいるってこと?」
「それはないと思うわ。 この地のもののフィグルスさまの信頼は厚い。 ここに住むものに裏切り者はいないわ」
(それなら界獣の能力の線が高いな...... ただこちら側の動きをどうやって知ってるんだ?)
「とりあえず、張り込むしかないか。 この領地全てを見回るのは難しいしな」
「ああ、別れて警護しようぜ」
シャガがいうと、ミルニークとリシェとルエルもうなづいた。
その日の夜から俺たちも警備に加わることになった。
「こないねぇ」
あくびしながらリシェはいう。 空には満月がでていて明るい。
俺たちは商人の荷馬車に隠れつつ、輸送を警護していた。
「ああ、今日で何日目だ」
「四日目ですね。 魔力も感じません」
ルエルも外を退屈そうに見ながらそういった。
目的地につくと折り返してザクレアに戻る。
(どういうことだ...... 他の場所を狙っているのか)
ザクレアに着くとシャガとミルニークが待っていた。
「どうだった?」
「......やられました」
沈んだ声でミルニークが言った。
「俺たちとは違うもう一方からだ。 くそっ! 召喚士のいない警備の兵士だけだった。 荷物をあらかたやられたぜ! フィグルスさまの領地で勝手しやがって! 許せねえ!」
そうシャガは苛立つように言い、机の地図を拳で殴った。
(たまたま召喚士がいないところだったのか。 それとも......)
「こうなったら三方向に分けるか」
「それしかないか...... ただ一人になる所が二つでるぞ」
シャガが腕を組み思案するように言った。
「俺はルエルがいる」
「じゃあ、ミリエラと私で行くよ。 ねえミリエラ!」
「にゃん!」
「ミリエラがいるとはいえ、リシェは一人で大丈夫か」
そういうとルエルは首をふった。
「ミリエラは霊獣でかなりの強さを持ちますから、大丈夫ですよ」
「そうか。 それなら警備の兵士と行ってくれ」
シャガが警備兵に命じる。
「それなら、この魔巧具を持っていって、父の形見なので希少だから一本しかないのだけど......」
ミルニークが筒のようなものを差し出した。
「これは? 魔巧具か」
「ええ【流星筒】、魔力で星のように空に光があがるわ。 この平地なら三方向どこからでも見えるはず」
「わかった。 リシェが使え。 伝えるときには俺はエフェネを使う」
「お前が言ってた青い蝶か」
「分裂して発光するから、暗闇でも見えるはずだ」
「わかったわ」
俺たちは次の日、作戦を決行することになった。




