第十四話『王契将フィグルスと盗賊の影』
「ここか......」
「すごいですね......」
俺とルエルは唖然とした。
そこはとても巨大な都市で、人々も多く行き交っていた。 デュラードや前の国の都市をはるかに凌駕する繁栄ぶりだったからだ。 そこかしこにライオンのような獣の紋様が刻まれるレリーフがある。
「リシェ、王契将って王様なのか?」
「そうね。 どこの国にも属さず、法なんかも独自に持ってる。 それで各国に睨みを利かせている。 お陰で最近は戦争もかなり減ってるの」
「そんなことをしても隣国から攻撃されないんですね」
ルエルが不思議そうにいった。
「王獣を従えているからね。 不用意に手をだそうものなら滅ぼされかねないもの。 昔実際に攻撃した国が滅んだなんて話もあるくらいだよ」
「へぇ、そんな力を持ってるのか」
「元々、この国も【鎧の王】フィグルスさまを慕って来たものたちが集まるうち、国のようになったらしいわ」
「そうなのか...... 途方もないな」
「そのお方にお会いするのだからちゃんとした方がいいよ」
「そういうの面倒だな」
「ダメ!!」
リシェに引っ張られて服屋でスーツを買わされた。
「お似合いです! 貴族のようですよ」
ルエルも首にかけてやったチョーカーを着けてまんざらでもない様子だ。
「それ誉め言葉か?」
「どうかな?」
リシェもシンプルだけど上品な青いドレス姿ででてきた。
「ああ、いいんじゃないか。 少なくともハンターにはみえないな。 どこかの貴族令嬢のようだよ」
「なんか照れるな。 そんな風に見える。 やっぱりおしゃれもたまにしないとね」
そういって嬉しそうにリシェはドレスを翻した。
「最近、盗賊たちが頻繁にでるな」
「ああ、この間も荷馬車がやられたようだ」
店の中でそんな話が聞こえてきた。
「そんな物騒なのか」
店主にきくと、うなづく。
「なんか【宵獣団】とかいう召喚士もいる盗賊たちがここいらに出没しているんですよ。 フィグルスさまの部下たちが探しているようですが、かなり手強いようで、未だに捕まっていませんね」
そう店主が眉をひそめた。
「盗賊か」
「界獣を使ってそんなことさせるなんて許せないな」
「まったくです!」
リシェとルエルは憤慨している。
俺たちは都市中央にある城へとむかった。
「ナナミさまですね。 こちらに主人がお待ちしております」
城の前に従者らしき老人が待っていて、中へと招いてくれた。 城は広いが壁に装飾などもなく、どちらかといえば無機質なつくりだった。
「広いがそれほど豪華でもないな。 なんか砦のようだ」
「質素だね。 まだ商人の家の方が豪華だよ」
「実用性はありそうですね」
ルエルのいうように戦いのための城という感じがする。
「主人はこちらです」
そういわれ中央の扉が開くと、王座に大柄な人物が座っていた。
「よく来てくれたなナナミどの。 私がフィグルスだ」
フィグルスさまは立ち上がると、思っていたより若く精悍な男性がそういった。
「そちらは?」
「ああ、俺の友人のリシェです」
「リシェともうします。 失礼ながらご一緒してもよろしいでしょうか?」
そうリシェは丁寧に答えた。
「ああ、もちろん。 それでナナミどのの界獣がその......」
「はい、ルエルと申します」
そうルエルは会釈した。
「......これは驚いた。 本当に言語を介するのだな」
(本当に...... どうやら俺たちのことは調べていたようだな)
隣の応接室に招かれ、そこでソファーに座る。 出されたお茶を飲む。 ルエルもちゃっかり席に着き、お茶を蹄で器用にのんでる。
(こいつなんだかんだ言って、体を使いこなしているな)
「それでフィグルスさま。 俺になにかご用ですか」
「......ふむ、あまり私は周りくどいのは苦手だ。 単刀直入に言おう。 少し手を借りたい」
「手を?」
「うむ、昨今世を騒がせる盗賊集団がいるのだが、その捕縛を手伝ってもらいたい。 【宵獣団】と呼ばれるものたちだ」
「確か...... 界獣を使った盗賊たちですね」
そうリシェはいうと、フィグルスさまはうなづく。
「ああそうだ。 私の手の者だけでは手に余る。 そこで君たちに協力してほしいのだ。 もちろん報酬は払おう」
(どうやらデュラードとは関係はなさそうか)
俺はリシェと目を見合わせる。
「かまいませんが、あなたの部下でも手に余るのなら、協会に依頼されないのですか」
そう俺が聞くとフィグルスさまは真剣な顔をしてしばらく黙った。
「......ハンター協会に最近不穏な動きがあるのだ。 その真偽がわかるまで協会内部の者や私自身が動くことは難しい」
「それで新人の俺たちに依頼を...... でも協会に不穏な動きってなにをしているのですか?」
(まさか、デュラード絡みか)
「まだ確実ではないがな。 帝国と通じておる者がいるらしいのだ」
「帝国と......」
(確か、帝国には協会支部もなく、関係はなかったはず...... 何のために。 前に界獣を使った兵器の噂があったが...... まさかデュラードも関係するのか)
「わかりました。 俺たちにできることは協力しましょう」
「ああ、助かる」
「あ、あと、異界から人を召喚できる者はご存じないですか? 例えば七人の獣契王の中でとか......」
「異界から人? 界獣ではなくてか...... いや、聞いたことはないな。 確かに獣契王は力をもつが、そんな途方もない力を持つとは思えぬがな...... とはいえ、私も私以外の者の力を全て把握してあるわけではない。 もしかしたらそういう者もいるかもしれんな」
「そうですか」
(嘘を言ってる風でもないな。 他の獣契王たちとは、そこまでの親密さはなさそうだ)
俺たちはフィグルスさまに協力することになった。




