第十一話『魔星石の代償──界獣の命と召喚士の誓い』
階段をすすんだ先には大きな通路があり左右に部屋が並ぶ。
「こんな場所でデュラードはなにをしているんだ......」
「わからない...... でもいいことではないよね」
「ただ前のルカーのときのように待ち構えている召喚士もいるかもしれない。 気を付けていこう」
「そうだね」
リシェは腰に差した短剣を握った。
その時、エフェネが左右の部屋へと散った。
「あれは...... 界獣か」
ひとつの部屋のドアの窓からなかを覗くと、檻に入れられた界獣たちがいた。
「こっちもよ...... お腹が動いているから呼吸している。 どうやら眠っているみたい」
反対側の部屋を覗いていたリシェがそう言った。
「どうする? 一部屋ずつ探すか」
「いえ、先に奥を探ろう...... 嫌な予感がするんだ」
(確かに、こんなに界獣を集めてなにをするつもりか、調べておくか)
俺たちは先へと進む。
突き当たりに大きな部屋がある。 そこには無数のエフェネが集まっている。
「エフェネが魔力を感知しているのか」
「ねえ、みて!」
リシェが声をあげる。 中には何か機械のようなものがあり、界獣たちが液体のはいった容器に入れられていた。
「これは......」
「中には入るよ」
俺たちは慎重に中に入る。
そこには無数の壁に並べられている筒状のガラス容器からチューブがのび、中央の機械に繋がっていた。
「これは?」
「魔巧技術ね...... でもこれはなにをしてるの?」
そのチューブにエフェネは群がっている。
「このチューブから魔力の反応があるのか...... まさか、界獣から魔力を奪って何かをつくろうとしている」
「しっ! 誰か来る!」
俺たちは機械の後ろに隠れた。
部屋に入ってきたのはデュラードともう一人白衣の女性だった。
「【メニフィア】それで状況はどうなっている」
「はいデュラードさま。 界獣より【魔星石】の抽出に成功しています」
(魔星石......)
「ミリエラ!」
そうリシェが小さな声をあげた。 みるとメニフィアという女性が猫のような界獣を抱いている。
(あれがリシェの界獣か......)
「ではみせてくれ」
「はい」
メニフィアは機械の前にたつとスイッチを入れた。 すると周囲の界獣のはいった容器の液体が光り、チューブから中央の機械の上に光があつまり透明な結晶が形成されていく。
「おお......」
デュラードは感嘆の声をあげた。
「見て!」
リシェにいわれてみると、容器の界獣たちが光のように散っていった。
(どうやら界獣から魔力を奪い取ってあの結晶をつくっているのか......)
「素晴らしい。 これで界獣の脅威からこの世界を守れよう」
デュラードがいうと、メニフィアは静かに顔色も変えずにうなづく。
「......はい、その結晶は小さなものですが。 この界獣のように霊獣クラスならばより大きな魔力の結晶を作り出せるでしょう」
「ならばやってみてくれ」
「どうしよう! このままだとミリエラが消される!」
「落ち着け...... リシェはこのままミリエラを奪い取って、他の部屋の界獣を逃がしてくれ。 ルエルもそこにいるかもしれない」
「でも、私が離れたら姿が見えるよ!」
「大丈夫だ。 逃げる手段はある。 俺を信じてくれ」
俺の顔を見たリシェは無言でうなづいた。
「よし、俺がデュラードとメニフィアを攻撃したら、走ってすぐにミリエラを抱いて部屋をでろ」
俺は立ち上がる。
「エフェネ!!」
できるだけ大きな声で走りながらエフェネを呼び出した。
「なんだ!?」
エフェネが無数に分裂しながらデュラードとメニフィアにまとわりつく。
「くっ......」
その時、落としたミリエラの姿が消えた。
(よし! できるだけ派手に動いて、こちらに注意をひきつける)
「シェリー!!!」
シェリーの光が一直線に走り、ガラスを貫いた。 容器が砕け、液体が床に広がると、界獣たちが微かに動いた。
そしてガラスが割れる音が部屋に響くと、ドアが開くのがみえた。
(よし、リシェは行ったな。 あとは......)
「何者だ......」
「男爵、界獣の捕縛は貴族でも重罪なんですよね」
俺はそういいながら機械の裏からでた。
「......召喚士です」
メニフィアがそう告げた。




