5.親友ができました?
本日二回目、よろしくおねがいします!
龍穏寺分家主館一階、書庫
そこは『世界の知恵』と言われてる程の本の数と世界でも珍しいと言われてる激レア本がずらりと並んでいる。
そして、その本好きなら誰もがが喉の奥から欲しがる一冊を手に取り、本皮で作られた専用ソファーで横になっている龍穏寺家分家現当主龍穏寺遥大の姿は彼の近くでお世話しているメイドたちの頬が赤くなる程に神々しい位ほど煌めく。
「はあ、今日も来なかったな。」
だが外の者は知らない、龍穏寺分家の大黒柱が憂鬱な目をしながら何を悩んでいるのか、ただ彼らは龍穏寺遥大がグラスの中のワインを飲み干し、ボトルからグラスへ新しい一杯を注いでるとこを見て心の中で黄色い歓声を上げている。
「ねえ待って、ねえ、何かの間違えよ」
「そんな事あるわけ無いでしょう、それに、あの女は確実に『開かずの間』の前にいた。」
そうやって大きな本棚の影から出てきたのはこの家の長男、龍穏寺霧人、と長女の龍穏寺涼香、でも二人は少し争っている様子。
「何だ、珍しいな、二人が揃うの。」
「ああ、お父様、ごきげんよう」
「ご無沙汰しておりますわお父様、今日もお元気そうで何よりですわ。」
「なにか悩み事か?」
「いいえ、お父様、ただ霧人がちょっとおかしいことを、」
「これは事実だ、信じないならばどうでもいい。自分でなんとかする。」
「な、霧人!」
「ほう、それは面白そうだな、では父である俺に何があったのか、この件をどう捉えるのか、そして未来への対策を今ここでプレゼンしてもらえないか?」
「お父様!」
「ええ、喜んで。」
「ジイ、プライベートスペースの確保を。」
「かしこまりました、では、今日は皆共々失礼します」
「ああ、」
「お疲れさまでしたわ、ジイ。」
「お疲れだった。」
ワインのグラスに反射される光が揺らめき、先程注がれていたワインも半分なくなっている。
「.............『開かずの間』の主に仕えるもの?女はそう言ったのか?」
「まったくバカげた話ですわ、ここは龍穏寺家、そして龍穏寺の家の主は私達と冷夏お母様4人しかいないのに、ほんと、ただのストーカーじゃないですの?」
「でもあの女、僕に話すとき最初はオドオドしてたのに急に自信の塊みたいに話してくるんだ、まるで、彼女の自信の源は彼女のその主みたいに。」
「あるじ.............まさか、ミナちゃん、」
「お父様さっきなんて?」
「いや、なにもない、」
「ミナちゃんって誰ですか?」
「聞き違いだ。」
「父様、実は数日前本家の鈴子おばさんが来て、そして聞かれたの、『あの小汚い下僕はまだ龍穏寺家にすがりついてるのでしょうか?』と、」
「く、」
「小汚い下僕?姉さんそれはどういう?」
「そんなの私が分かることではありません、ですが、この家になにかあるのかは確かです。ねえ、お父様、お願いします、もしかしたら『開かずの間』の前にいた女の人と関係あるかもしれません!」
「。。。。。。。。。。。。。。。。」
「父様........!」
「お父様!!」
「.............霧人、あなたはその女の人の顔はちゃんと見たのか?」
「いいえ、ただ、ちょっと変わったスーツみたいな服でした。」
「スーツ、か、まあ、ミナちゃんが着るものではないな。」
「ですからお父様、ミナちゃんって一体?」
「はあ、彼女は、ミナちゃんは冷夏の連れ子、あなた達の妹だ。」
「。。。。。。。。。。。。。。。。」
「。。。。。。。。。。。。。。。。」
「.............いや、でも、え、だって、龍穏寺一族の婚姻は嫁いでくる女は初婚であると、」
「だが俺は冷夏のことを愛してる。それにそんな数百年前の頭が堅い人たちによって作られたものに彼女との幸せを邪魔されたくなかったんだ。」
「まあ、それはわかります、たしかにこの家の家令は女を見下すようなところがあるからな。俺にとってはそんな掟あっても無くてもどうでもいいが。」
「ええ、ですがそのミナさんはこの数年間どこに?」
「居たよ、この屋敷に、『開かずの間』に、数年間ずっと。」
「「え、」」
「ミナちゃんと冷夏を責めないでやってくれ、ミナちゃんは龍穏寺家に来て間もない頃親戚の、主に本家の人達からひどい思いをさせられ、冷夏はあなた達のお母さんになる為必死に頑張ったが実の娘とはすれ違ってしまった。
多分ミナちゃんは俺達のことを憎んでいるんだ、俺達がいたから実の母親と引き離された、俺達がいたから当時ここにいたメイドたちは本家の命令を受け彼女を痛みつけた、俺達がいたから彼女はその『開かずの間』に閉じこもった。」
「な、」
「痛みつけ、閉じこもった」
「ああ、そうだ、その本家の人間はミナちゃんを傷め付けることで冷夏に離婚を強要させるつもりだったが、く、だがこれはもう言い訳にしか聞こえない。」
沈黙が部屋の中を満たし、それぞれがそれぞれの思いを馳せながら長女の涼香は難しそうに口を開いた。
「..........ほんと、信じ難いお話ですわ。」
「..........ああ、そうだな。」
「では最後のに一つ、ミナさんはどういう人でしたか?」
「姉さん?」
「まあ、最終的には私の目で確かめますが、ですが私達はもう大人なのです、大人の事情ってやつも少しですがわかっているつもりであります。」
「そうだな、まあ、一番悪いケースでは僕の家庭事情が週刊誌に書かれることだけだからな。」
「フフ、よく言いますわね。」
「あなた達、」
「大丈夫ですわ、お父様、私達がなんとかしますわ。」
「ああ、そうですな、それに姉さんは小さい頃から妹が欲しいって言ってますものね。」
「ソ、そんな事、ありませんわ、ただ、姉としてしかたなくやっているだけですから勘違いしないでくださいよね!」
「それなんだが、二人は何もしなくていい、」
「な、どうしてだ!」
「そうですわ!長年外に出ないと体からカビが生えてしまいます!」
「いや、姉さん、」
「はあ、実はミナちゃんはあなた達に出会ってから部屋に閉じこもったんだ。」
「それはどういう?」
「覚えてないか、小さい頃、あなた達の遊び相手になった長い髪の女の子、」
「まさか、」
「みーちゃん?」
「そうだ、本当は二人の遊び相手になってから段取りをわきまえて姉弟にさせるつもりだった、だがその日を待たずにミナちゃんは部屋から閉じこもった。」
「そんなの強硬手段を得て無理やり連れ出してきたらどうでしょう?」
「いや姉さん、そうしたらミナって子がもっと引きこもるでしょう。」
「うう、」
「だから二人に頼み事がある、ミナちゃんの心が癒やすまで見捨てないでやってくれ。」
「父様、」
「お父様、」
“コツ、コツ”
“コツ、コツ”
ただ二人の足音だけが聞こえる龍穏寺家主館一階と二階の階段、
本当は普段と変わりがない夜を迎えていたはずなのに、龍穏寺姉弟はそれぞれ難しい顔をしながら自分の部屋へと進む。
「なあ姉さん、お父様が前回僕たちに頭下げてくれたのっていつだっけ?」
「わからない、でも私の記憶にはなかったわね。」
「そうだな、ずっとあの人に自分を認めてほしいと頑張ってきて、勉強も運動もアイドル業だって、それなのに小さい頃たった数回しかあったことがないあの妹さんの為に実の子どもたちに頭下げるって、」
「多分、みーちゃんは私達が思ってる以上に傷ついていたに違いない。」
「みーちゃん、ふ、懐かしい響きだね。」
「ええ、あの時私はこの子を妹のように可愛がっていた、でもそれが返って傷つけたのかもしれません。」
「僕たち、取り返しがつかないことをしてしまったんだよな。」
「ええ、一生悔やんでも悔やみきれない程に.............」
「。。。。。。。。。。。。」
「。。。。。。。。。。。。」
「どうする?ミナさんのこともそうだし、その女従者さんのこともあるし、」
「わかりません、ただ、私はあの頃から、みーちゃんと初めてあった頃からずっと、一度でいいから彼女が心から笑っている姿を見たかったですわ..........................」
「ぷ、ハハハハハハハハハ!!!!う~わ、ハハハハ、神ってる、これマジで神ってる!!ハハハ!」
うあ!なにこのマンガシリアスなタイトルの割にはチョー面白いな!!
「あ、あの、お客様、他のお客様にちょっと響いてる模様で、」
「ああ、すみません、以後気をつけます。」
東京都内某所、とある漫画喫茶にて私はシャワーを浴び、快適なクーラーとコーラーと共に以前から気になっていた漫画を満喫している。
いや~でも事務所じゃなくここに来て正解だったよ、やっぱり、節約のためとはいえいつどっかでこき使われるか分からないところに寝るより比べたらここはもう天国!!
はあ~~極楽極楽~~
よ~し、コーラーお代りしようっと!
あ、もういっそここの会員になっちゃう?来るたびにポイントたまるし溜まったポイントで10時間無料ってこともあるみたいだし、うん、そうしよう!
「あれ?もしかしてライカ先生?」
「あ、ああ、ああ、」
うあ、茶髪の美少女だ、なんか妹キャラっぽく身長低いな、うん、でも、
誰だっけ、この人、
「お久しぶりです~そうだ、私のこと覚えてます?」
いや、知りませんと言ったら気まずいし、ここは、
「あ、ああ、ああ、確か、田中さん」
「キャ!覚えてくれたんですか?!」
え、本当に当たった!?
「ええ、まあ、」
「そうです、先生のサイン会で何度もお会いした田中美奈子、この機に美奈子と呼んでいただいたら嬉しいです!」
「はは、」
懐っこいな~
いや、待てよ、
これって本当にお兄ちゃんいたら懐っこい系な妹キャラができるんじゃね?
『ニイニイ』って甘い声で呼んじゃうんじゃね?
「でも驚きました、だっていつもツインテールでメイド服を着ていたから私のことひと目で見分けられないかと思って。」
「あ~~、ああ、」
ああああ!!
あれだな、アキバで有名なメイド喫茶のナンバーワンの、
たしか前回私の本40冊買ってサインさせられたっけ。
それに釣られた男たちがこの子との共通の話題を探すために買ったと聞いていたな。
「前回はどうも、」
色んな意味で儲かりました。
「キャ!でもライカ先生はこんな時間にどうしてここに?」
「ええっと、」
義理の兄から家追い出されたって言えないな。
「終電を見逃してしまって、」
「そうなんですか、実は私もそうなんです......」
え、ここアキバから遠いよ!
「.........っていうのは嘘で、」
「嘘だったんかい!」
「キャ!ライカ先生に突っ込まれた!」
う、
やっぱちょっとウザイ?
「で、どうしてここに?」
「実は私、彼氏と喧嘩して、さっき別れたばっかなんです。」
急に重い!!ってか大丈夫なのか?あんたの人気はどこかの三流アイドルより高いんだよ!
それにあんた、他人の保護欲を煽る妹属性の割にはリア充満喫してんじゃねーか!
う~わ、どうしようこれ、う~わ!
やばい、まだ社会に復帰して間もない元引きこもりにはハードルが高すぎる!!
誰か!ヘルプ、ヘルプミープリース!!
「ごめんなさい、先生に言ってもしょうがないですよね。」
「ああ、いや、」
「大丈夫です、本当になにもないのですよ!」
何よ、そんな泣きそうな顔をしてよく言うよ、
もう、
「ミニャ子さん」
あやべ、噛んだ。
「ミニャ子?」
「あ、いや、その、元気だして、この世に男はウジャウジャいる、だから、」
いや、ウジャウジャって、それにミニャ子って!!
「フフ、ウジャウジャって!そうだよね、あんなのに気を取られる時間はないよね、ありがとう、ライっち!」
おお、開き直った、
って、え?
「ーーライっち?」
「可愛いでしょう?」
「いや、その、」
「だってライっちが私にミニャ子って、ミニャ子ってあだ名を付けてもらったんだよ!だからライっちの親友としてライっちに可愛いあだ名を付けないと!」
ミニャ子 二回も言った、
ってか、親友って、
「いや、それは、」
「嬉しい。」
「え、」
「実は私ね、女の子の友達作るの初めてで、それに親友だよ、し・ん・ゆ・う、キャ!ちょっと恥ずかしいかも!」
「あ、」
この子、フザケたように見えるけど、本気だ。
ああこれ、確かどこかの本で見た、
人間っていくつかの”必要”があってその”必要”のヒエラルキーは大きく5つに別れているって。
その中で自己実現の必要と自尊心の必要の下にある三番目の必要が友達、関係と居場所の必要。
そっか、
私は今その必要を満たしているのか、だから........
「ライっち............?」
ライっち、か、うん、悪くない。
「そうだね、今日からよろしくな、美奈子、」
「プーミニャ子!ライっち私はミ・ニャ・子!」
「み、ミニャ子、」
「うん、今日からよろしくね、ライっち!!」
うあ~眩しい~保護欲煽られる~
どうしよう、私の初めての友達兼親友はこんなリア充的な子でいいのかな..........................?




