3.『ティクランシェ』
宜しくお願いします
先程の賑やかとは裏腹に、今の社長室は沈黙で満ちている。
「なあ、シオン」
「かしこまりました、清原みきさん、どうしてあなたがチーフマネージャーに抜擢されたか知ってますよね。」
「う、でも社長、こんな保険をかけなくても私は青花ライカとして『ティクランシェ』とアルファード芸能事務所に尽くすし、それに、」
「勘違いするな、お前は『ティクランシェ』の最後の切り札、だから一番安全なところへ隠す。」
「は?仰ってる意味が、」
「シオン」
「かしこまりました、清原みきさん、いいえ、青花ライカ先生、あなたは実に才能が溢れる存在です、だからこそあなたを求める輩がうじゃうじゃと潜むのです。」
うじゃうじゃって、
「で、でもチーフマネージャーにしたらかえって目立つのでは、」
「いいえ、以前は高田達がいるから建前がついたのですが今外に対して『ティクランシェ』はもう恐れ入らない存在、切り札をなくした花瓶の集まり。」
ひっど、彼らは私が認めた才能が確かにあるのにでも確かに彼らはの人気は高田さんが程よいラッピングしてもらったからこそ得たもの、
そう、だからこそ、
「今までが順調すぎた、そして、高田さんがいなくなったら彼らには何もできないと認識されている。」
「その通りだ、」
「だから何もできないバイトのチーフマネージャーってことですか?リスクが大きすぎません?」
「シオン」
「かしこまりました、みきさん、これはこのアルファード芸能事務所の全てを賭けた戦いなのです、この意味、分かってもらいますか?」
うあ、マジっすか、
要するに私が“最後の要”だから“一番安全な場所にいけ”と、うう、ただこき使われるだけだと思うが、気のせいか?
事務所にある小さな休憩室の中、『ティクランシェ』の三人は暗い顔をしながら離れて座っている。
「どうしてこうなった!!高田さん、どうして!?」
クッションを叩きながら叫ぶ光はこの中で一番高田さんのことを慕っていると誰もが知る。
だけど、
「光、落ち着け、彼は俺たちを見捨てたんだ。」
「お前はどうしてそんなに落ち着ける?」
「だってそうだろう、彼は俺たちを見捨てたんだ、裏切ったんだ!」
「光、翔太、落ち着いて、」
「。。。。。。。。。。。。」
「。。。。。。。。。。。。」
はあ、外から聞こえるぞったく、
“コンコン”
「皆さんもう晩食のお時間ですし、なにか出前とか取りますか?それとも私がコンビニに行きますか?」
「そもそもどうして高田さんの穴は来て間もないバイトに任せるんだ?!」
「こら光!清原さんは何も関係ない、それに彼女は巻き込まれただけだ!!」
そうだ、ったく贅沢言うな、こっちは印税なんかケチられながら曲を提供してやってんだ。と言いたいけど、彼らは私が青花ライカって知らないんだよね~
はあ、
そもそもなんで数年間龍穏寺家の小部屋で引きこもっていた私がこんな事になったか、まあ、それはそれは三日三晩語り続けても埒が明かないから手短に、
まあ、要するに引きこもり始めた私は勉強以外何もすることがなく、ある日自分は『世界の知恵』とも言われた龍穏寺家の書庫の本を全部読んだと気づく。
そこで何もすることがなく退屈になった私は外で新しい本に出会うため街に出て本を探すと決意する。
突然だが、運命の出会いってっ信じるか?
私は信じるな、だって私はその頃出会ったのだ、エンターテインメントを極める本、『ラノベ』に!
『ラノベ』は実に深いものだった、知らない世界が脳内に飛び込み、程よいところに一巻に終止符が撃たれる。
その流れだ私はアニメと出会い、三流で自称オタクのパリピより、いいえ、今ではモノホンのオタク共と萌え要素を語り合えるほどのオタクになっている。
そんな『ラノベ』とアニメがあったこそ私は次第に歌詞や曲、そして自分好みのライトノベルを書くことになり、そこで青花ライカが誕生した。
運命だった、何もかもが、それで私の人生はファンタジーとともにあると思った矢先、私は人生二度目の運命の出会いを果たしたのだ。
そう、それは私がとある逆ハーレム系のアニメを見ていた頃、私はバカげたシナリオと選曲ミスに腹を立てていた、だがそのアニメを、それも12話を最後まで見れたのは紛れも無くキャラクターの三人がとても良かったから。
いいや、厳密に言えばそのキャラクター共には魅力とか萌え要素とかあまりなかった、だけどその声が、演技がとてもマッチして、そして私は彼らが出る作品を片っ端から見た。
結果、あの三人は神っている。でも彼らは三人で一つ、一つが欠けたら魅力が大幅にダウンする。
だから私は彼らがをモデルに、彼らがユニットを結成するようにラノベを書いた、結果、彼らのユニット『ティクランシェ』は大ヒットし、彼ら三人が奇跡的に同じ事務所だったためアニメが終了しての今でもまだ活動を進んでる。
私?
私は『ティクランシェ』のファン一号としてどうか彼らを解散しないため作詞作曲、及びラノベ活動を頑張っている。
そしてなにか気づいたアルファード芸能事務所はある日私を召喚し、悪魔の契約を交わし(『ティクランシェ』の活動を間近で見守れると引き換えにこき使われる契約)数週間前バイトとして彼らの付き人をやっている。
まあ、私が龍穏寺ミナってことは知らせてないけれど。
え、辛くないって?
ううん、私にしたら彼らは私の子供、息子的存在、だから息子に手を焼くのはお母さんの仕事でしょう、だから、
「なあ、なんとか言えよ、清原さんが高田さんを追い詰めたのか!?」
はあ”!?
あれってあれだろう、高田だろう、私の存在を今でも知らず、上辺だけ社交上手の嘘つき野郎だろう、ったく私知ってるぞ、あの高田ってやつサイコパスの性質があるってことを。
でもテメーらマジでふざけんな、高田の野郎に耳元で何言われたかしらねえが自分ンがみっともないっていつ気付くのかしら?
「あの、私はただあなた達と仲良くしたいだけで、」
「すみません、俺達だけにしてもらいませんか?」
はあ”!?
「そうです、バイトさんに申し訳ありませんので、」
おい、今回は清原さんじゃなくバイトさんと呼びやがったぞこいつ、
そうね、うん、そうよね、子供には反抗期ってものがあるって本の何処かで読んだことあるわ、そう、だから
「あの、あとで仕事があるのでは?」
「そんなの行くわけ無いだろう!」
「ごめんなさい、今回は謝っておいてください。」
「いや、でも皆さん、」
「ちょっと、邪魔。」
“ブチッ”
「はあ”!?テメーら今更何言ってるんだ?」
「え?」
「は?」
「き、清原さん!?」
「テメーら後で何するつもりだ?」
「いや、だから帰る「仕事だろ?しかもその局では初めて出してくれる大手番組だろ、テメーら少しでも自分がアイドルだという自覚はあるのかよ?」」
「お前に分かるか!?さっき仕事場で高田さんがヘッドハンティングされたという情報が流れた途端みんな毛虫を見るかのように接してきたんだぞ!」
「だから?」
「「「え?」」」
「だからお前たちは逃げて、まるで高田さんが居なければ何もできない事を業界のすべての人に、今まで支えてくれたファンの皆様に見せ、その小さな殻の中に永遠に引きこもるのですか?」
そう、あの時の私のように、何年も、何年も、孤独で、暗くて、明かりを望んでいながら明かりを怖がる惨めな存在に。
「お前に俺たちの何が分かる!?」
「分からないよ!あんたたちの気持ちだろう、私が知ってどうする?」
「う、」
「だけど今の私はこう言える、私は他人に嘲笑われたときの気持ちも、人間として見られていないときの虚しさも、身近で愛しい人を憎んでしまう感情も全て知っている。
それは引き篭もりたいよね、だってそれはまるで世界を奪われたようなかんかくですもの。」
「「「。。。。。。。。。。」」」
「虚しい、悲しい、でも愛おしい。だけどそれと裏腹に自分の無力を骨まで痛感し、気づけば自分はどうしてここにいるか、どうして存在してるのか分からなくなる。
それはまるで鮮やかだった世界が一瞬にモノクロになり、そのモノクロでさえ壊れることを恐れて今度は自分が殻に閉じこもり、その馬鹿げた小さな世界を守り抜いている。」
「く、でも、俺たちは、」
光が泣くのを必死に抑えてることを見て私は少しだけホッとした。
ああ、彼らはまだ戦いたいんだ、
私はそう思えたのだから。
「光さん、」
「え?」
「翔太さん、」
「あ、」
「空さん、」
「う、」
「あなた達は何をしたいですか?」
「ぼ、僕たちは、」
「翔太、」
「く、僕たちは歌いたい!この三人で、世界でのドームツアーをするって言う夢があるんだ!!!」
「あ、」
驚いた、彼らにこんな夢があるなんて、でも、よく言いました。
「だけど僕たちにはもう為す術がない、」
まあ、空の言うとおりですわね。
「それじゃあ、目の前にある仕事を完璧にこなすっていうのはどうですか?」
「え、」
「今のあなた達3人ではこれしかできそうはございませんが、」
「う、お前、言うな!」
「4人、」
「え?」
「そうだな、今日からお前が俺たちのチーマネだから俺たちと戦ってくれよな!」
「チーマネ?」
「チーフマネージャーってことだよ、もう、どんだけ世間知らずなんだ?」
う、反論の余地がない、
「じゃあ今日からよろしくね、チーマネ!」
「そうだな、俺たちのためにせっせと働け!」
「無理はしないでね。」
「あ、空ずるーい!それ僕が言いたかったのに!!」
「ったく空、翔太、見苦しいぞ、それにそれはリーダーの俺が言うはずのセリフだったのに、ったく!」
「ふふふ、」
「「「なんで笑う!」」」
「いいえ、何も、」
ああ、近い未来に天国に行かれる高田さん(笑)、私はこの子達を絶対に世界に誇れるような声優アイドルにしてみせます!ですから絶対に負けません、そして、彼らのマネージャー兼“お母さん”として死ぬ気でがんばると誓います!!
太陽が沈んで数時間、私はうちの子たちを見送り、終電ギリギリでやっと『引きこもりの館』もとい龍穏寺家の豪邸に着きました。
「はああああ~~~」
眠い、
明日は確かあれだな、昼からのアニメ収録と『ティクランシェ』がゲストのラジオ放送、うん、それじゃあちょっとだけ曲の進行を確かめて、あのシリーズの新刊を読んで、うん、それで、
「誰だ!」
ん?誰が誰だ?
「そこにいるお前、どうして家の開かずの間の前にいる?」
開かずの間?ああ、私の部屋だね、
その前って、ん?!
「誰だ?場合によっては警察呼ぶぞ!」
このサラサラとしたショートヘア、このキラキラエフェクト、この男らしさを欠けない柔らかい顔ライン!
ううう、これは、あいつだ、私の義理兄、龍穏寺霧人!
GOD DAMN IT!!!!
よりによってどうしてこいつなんだ!?
「お前、まさか」
な、そうだよな、数年前あったことがあるもんな、く、
「そうです、私は、」
「俺か姉貴のストーカーか?」
は?何いってんのこいつ、
もう一度言います、基本週一更新ですが偶に狂うこともあります。




