1.清原みき
本日二回目
宜しくお願いします
龍穏寺家豪邸、とあるメイド休憩室にて、今日が当番だったメイド数名が仕事を終わらせ、アフタヌーンティーを堪能している。
「ねえ見てみて、霧人坊ちゃんのグループが出した新作アルバムですわ!」
「キャカッコイイ!流石ですわ!!」
「まあ、『ゲレンデ』の新作アルバムは素敵ですが私にとっては『ティクランシェ』の新曲も魅力的ですわ!」
「ええ、そうね、デビューしてたったの一年で各界の新人賞を受賞するなど『ティクランシェ』もなかなかですわ!」
「そうね、でももっとすごいのはそのアイドルグループの作詞作曲する青花ライカ先生じゃないですの?」
「ええ、その乙女の心にガツン!ときながらポカポカするその歌詞と何か包み込まれるようなハーモニーが絶妙にマッチし、まるで麻薬みたいに何度も聞きたくなるような曲ですわね!」
「それに青花ライカ先生って作詞作曲するだけじゃなく小説界でも才能を発揮してらっしゃると聞きましたわ!」
「まあ、なんて才能溢れるお方なのでしょう!」
「ですがやはり霧人坊ちゃんたちの方に及びませんわね!」
「「ええ、それはそうですわね」」
「そうなんですか?」
「きゃ!あ、あなたはたしか新しく来た、」
「あ、先輩方はじめまして、清原みきと申します。」
「まったく、それにあんたさっき『そうなんですか?』と聞いたわね、家の坊っちゃんを見下してる気?」
「え?そんな、まったく!!ですがやはり新人なのでこの家のことをもっと知りたいですわ。」
「はあ?!あんた、知らないでここに入ったの?」
「その、すみません。」
「ふん、よくぞ聞いてくれましたわ、いいでしょう、アホらしい新人にこの懐が深い先輩から教えて差し上げましょう!」
「そうね、あんたこの豪邸の持ち主はあの世界的に誇るあの龍穏寺家会長の親戚だと知ってるわよね。」
「ええ、まあ、」
「ここの人はね、知性、礼儀、嗜みだけじゃなく顔もいいの。」
「そうよ、それに長男の霧人坊ちゃんはあの東嶺大学経済学部に所属しながらあの国民的アイドル『ゲレンデ』のメンバー!!きゃ!!もし私がお気に召されたらどうしよう!!」
「もう、ご冗談を、それに霧人坊ちゃんに釣り合うのにはやはりみんなが羨む美人で才女の人じゃないと!」
「きゃ!でもその気持ちわかりますわ、私ももしかしてっと思ったら、きゃ!!」
「.............ああ、うん、やっぱここってテンプレね。」
「あんたなんか言った?」
「いいえ、そうだ、私まだ仕事が残っていました、では先輩方、ごきげん「あ、そういえばこの家に霧人坊っちゃんと涼香お嬢様以外もう一人お子さんがいましたと執事のジイ・リラビアン様にきいたことありましたわ!」」
「え、」
「それってただの噂じゃない?」
「私はそのお子さんは数年前流行病でおなくなりしたと聞いておりましたわ。」
「いいえ、その子はまだ生きており、海外へ留学しておりますと聞いておりますわ。」
「そうかしら、ですが噂ではジイ様は毎日三食をあの開かずの間の方向へお持ちしてますわよ、それって、」
「はしたない、そんな訳あるわけ無いじゃないですか!」
「そうよ!」
「あの、先輩方、私まだ仕事が残ってるので、」
「ああ、まだここにいたの、」
は?!ザッケンナ!
「ご、ごきげんよう。」
「つっかれたーーー!!んんん、やっぱ体力の回復には時間がかかるか~」
屋敷の3階の奥にある小さな部屋、それは現在開かずの間と言われ、家族はともかくメイドたちからも避けられている。
はあ、言っておくけどここは私、清原みきこと龍穏寺ミナの寝室であり、数年の間私みたいな引きこもりを住まわせてくれた場所でもある。
時計の針が昼の十二時の方向へ指した途端低音のイケボが時刻を教えてくれる。
“コンコン”
「ミナお嬢様、お昼をお持ちになりました。」
「。。。。。。。。。。。。」
ジイ、ゴメンね、私のせいであんな噂まで流されて、それに、
うううう、どうして私は清原みきとしては普通に話せるのにいざ龍穏寺ミナになったらなんにも喋れないの!!?
「では、いつも通り外に置きますね。」
あ、行っちゃう!
「あ、ああ、」
「お嬢様、くれぐれも無理をしないでくださいませ、」
ジイ、ゴメンね、ゴメンね、本当にゴメンね、ゴメンね、
でも、私は.......
.......私は龍穏寺家の娘ではない。
厳密に言えば龍穏寺はお母さんの再婚相手の名字でそれ以前は三畳のお部屋でお母さんと二人暮らし、その前は実の家族四人ぐらしで幸せに.............
.............いいえ、思い出したくもない。
お母さんが再婚するとき不安がなかったといえば嘘になるけど、やっぱりお母さんの幸せを望んでいた。
でも、お母さんが再婚し、不安と未来への期待を交えながらくぐった龍穏寺家の門はとてもとても重かった。
まず、龍穏寺家の親戚たちは子供の私をあざ笑い、まるで使用人みたいにこき使い、何度もできなかったら物理的攻撃を行った。
それはまだしも私が初めてこの屋敷に来たときに着ていたメイド服のせいかあの龍穏寺家の姉弟は私を下僕みたいに使い、気づいたら私は毎日体が痛くなるほど肉体労働を強要されていた。
まあ、今ではわかる、この龍穏寺家は由緒正しい名門だからお嫁は初婚に限るってことも、あの姉弟は私の存在を知らないってことも。
でもあのとき幼かった私はこれに耐えきれず、血のつながった実のお母さん助けを求めた、だがあの人は母親になる責任より女の幸せを優先した。
知っている、お母さんはあのとき龍穏寺家の新妻とと新しいお母さんというポジションの為必死だったことを、だから私の義理のお父さんが私に頭を下げてくれた、そして引きこもることを黙認してくれた。
だが今でも鮮明に思い出せる、あの女が、お母さんが私の手を振り払ったときのあの冷たい目を。
だから私は寂しかった、誰も私のそばに居てくれなかった、例えそれが私の血がつながった家族でも.............
メイド服を脱ぎ、昼御飯を部屋にあるアニメポスターたちを眺めながら食べ終わった頃、私の携帯からライン電話がかかった。
え、どうして引きこもりが携帯、しかもラインを持っているって?
まあ、それは先に置いといて、
“カチャ”
「もしもし空?こんな時間に珍しいね。」
『悪いな、仕事の邪魔だったか?』
「ううん、昼飯食べてるとこ。」
『そっか、実は後で翔太と光と一緒にメシ食べることになってな』
「うーわ、またっすか、アイツラどんだけ愚痴好きなんだよ」
『いや、実は今日ベスタ芸能事務所のアイドルと初めて会ってな。』
「おい、」
『うん、わかっている』
「いいや、全然分かっていない。お前たちは何?」
『うう、『ティクランシェ』、です』
「そう、実力声優アイドルグループの『ティクランシェ』だ、それなのにどうして正統派アイドル、しかもリア充の溜まり場と言われてるベスタ芸能事務所のアイドルなんだ?まあ、覚悟はとっくにしてるが」
『いや、その、ええっと、』
「おい、ま・さ・か............」
『う、ああそうだ、この件は高田さんが、うう』
「ち、今から事務所へ行く、お前たちも仕事が終わったら社長室へ来い。」
『いや、その、』
「しらばっくれんな、高田があのリア充事務所の人たちと会食したネタはもう上がってんだぞ。」
『う、僕も高田さんを庇おうとしてんじゃなく、ええっと、その、御手柔らかに。』
「善処します。」
『いやいやみきさん、御願しますから身内に犯罪者を出したくないんです!!』
「本心は、」
『ボッコボコにしてください!!僕たちが付いてるので安心してあのリア充どもを、『ゲレンデ』共をぶっ潰してください!!!!!』
いや、ボコボコって、キャラ崩壊していますよ空さん、
『なんだ、みきちゃんと話してんのか?みきちゃん、今回のことは手を出すな、いいか、これはオレたちの問題だ。だから慈悲深い俺達は『ゲレンデ』共には海か山か選択する権利を与えてやる。』
いや、アイツらシヌ前提で話進んでね?はははおかしいなぁ~いつもは穏やかな子供たちなのに~
『みきりん、大丈夫、『ゲレンデ』は僕たちがやる、僕たちがみきりんを守る、リア充シネ、マジで爆発しろ。』
いやベスタ芸能事務所、お前たち何しでかした!
「.............善処します。」
“カチャ”
部屋は一旦時計の針の音しか聞こえず、カーテンの隙間から差し込む日差しは意外と眩しい。
「『ゲレンデ』っか、............
........................なんか聞いたことがある名前だな、」
基本1週間に1更新という亀更新ですが。。。。。。




