秘密ですよ?
正気に戻った魔法使いは、俺を詰めてきた。
すぐに結界に引っかかって近寄れてないけどさ。
「なにあれなにあれなにあれなにあれなにあれ!!!」
……まだ、正気じゃなかったわ。
「落ち着け! だから言っただろ! 魔法って何ってな!
俺やシロクロの魔法と違うのかって聞きたいんだよ」
「違うわ! 詠唱もするし、魔法陣も使うわ!」
「そう! それ! それが聞きたいんだよ!」
やっと聞きたい部分に到着する事が出来た。
長かったぜ。
と言っても、到着しただけで、そこから長くなりそうな気がするが。
そうだなぁ、RPGで苦労して遠くの村に到着したら、村の中をたらい回しにされるイベントが起きる。
そんな感じ?
「とにかく、詳しく、かつ、分かりやすく説明してくれ。
そうだな、才能は有るけど知識が無い、聡明な子供に説明するような感じで頼む」
「難しい事言うな……。俺、教わったけど、まだ誰にも教えた事ないんだぞ!
なのに最初がそんな無茶振りか!」
「大丈夫! 出来る出来る! 頑張れ!」
「教わる方が、言うセリフじゃないけどな……」
困惑しつつも説明を始めてくれた。
「じゃあ話すけど、判らない事があったら、その都度聞いてくれ。
まず、魔法を使うには詠唱が必須。それは魔法陣を作る為だ」
「詠唱で魔法陣を作る?」
「そうだ。正確には空中に魔法陣を書く為の魔法を、指先に発動させる為だ。
魔法を使う人間は、予め爪に魔法陣を書いている」
そう言って指を見せてくれた。
確かに爪に魔法陣が書いてある。
……細かいな~。あれか。米粒に文字や絵を書く名人みたいな人が居るのかな?
あれ? 全部の指に書いてあるな。意味があるのか?
「そして魔法陣。
これを書く事によって、魔法を発動する事が出来るようになる。
当然発動には詠唱が必要だ」
「って事は、詠唱→指の魔法陣を発動→魔法陣を魔法で書く→詠唱→書いた魔法陣の魔法を発動。
こういう事?」
「そうだ」
「めんどくせっ!」
「面倒でもそんな物なのだからしょうがない。
だから、省略化する為に、他の指にも魔法陣を書いている」
「どういう事?」
「簡単な魔法、例えば火を付ける魔法を使うのに、いちいち魔法陣を書くのは面倒。
だから、他の指に火の魔法陣を書いておくのだ。
そうする事で、その指から火が出せる」
言いながら実践してくれた。
右手の小指に書いてるんだな。小指の先がライターみたいになってる。
結界の向こう側、すぐ近くでは魔法は可能なんだな。
お蔭でじっくりと見る事が出来たよ。
「ちなみに俺の場合、左手に攻撃魔法や防御魔法を書いている」
「へ~、そうなんだ」
「おい、つい言ってしまったけど、誰にも言うなよ!」
「えっ? 何で?」
「ちょっと考えたら判るだろうが! 魔法には魔法陣が必要。
それは左手に書いてある!」
あ! つまり戦闘になったら左手を潰せば良いのか。
そうする事で、魔法が使えなくなる。
そりゃバレたくないよな。
「カモフラージュとして、魔法陣を書いているヤツも多い。
中には足の指にも書いている者も居るぞ。
ちなみに体に書く魔法陣もある。外に発動させないタイプはこの手が多いな」
「例えば?」
「アイテムボックスが有名だ。
ただし、大量の魔力が必要だし、魔法陣も複雑。
それを体に書く職人も少ないし、書く時は激痛に耐える必要がある」
あっ、判った。入れ墨するんだな。
それを麻酔無しでやるのか。……想像しただけで痛くなってきたわ。
ん? 入れ墨って痛くないって聞いた事があるような。
あっ、でもそれは現代の機械を使っての話かもしれない。
それに、もしかしたら特別な針とか使うかもしれないね。
どっちにしろ、する事は無いから良いんだけども。
「なるほど。理解出来たよ。ありがとう」
魔法を使うのに魔法陣が必要。そして詠唱も。
そりゃ無詠唱で魔法陣も無しで、魔法を使えば注目されるよね。
納得納得。
「で、お前はこの結界をどうやって発動している?
地面に魔法陣を書いたのか?
それにそこの犬やお前の所の猫。どうやって魔法を使っている?
魔法陣は何処だ? もしかして毛を刈って肌に直接書いているのか?
どうなんだ?!」
また詰めてきた。
知りたい事は聞いたから、もう帰ってもらって結構なんですけど!




