元気なご挨拶
翌日。
シロと共にギルドマスターは帰って行った。
しっかりと朝飯も食って。
……いい加減、金請求するか? 食堂じゃないんだけどな。
さて、今日はクロに仕事をしてもらう。
と言っても、日課のように毎日我が家の結界を調べに来ている魔法使いを庭付近に連れてきてもらうだけだが。
これで俺も庭に出れば、結界越しに会話が可能!
この結界、外と中で気温が違うんだよ。
現在、外は夏に向かってるらしいが、結界内は春のような感じ。日差しもキツくない。
もっと早く気付けば良かった!
まぁ、気づいたとしても、出る気は無いから変わらないけど。
「お前がここの主人か」
「そう言えば初対面でしたね」
「ああ。遠目で見ただけだ。後はあの声だけ送られてくる魔法道具越しだ。
で、何の用だ?」
ここで俺は予めネットで買っておいた物を出す。
「隣に引っ越して来たんですよね? これ、引越し祝いです」
「ん? あ? あ、ああ、ありがとう……。
って、なんだこれ? 植物? 糸?」
「それ、素麺って言う食べ物ですよ」
「素麺? ……美味しくないぞ、これ」
「そのまま食えばマズいに決まってるでしょ!
えっと、沸騰した湯に入れたら柔らかくなるから、ツユにつけて食べるんですよ!」
「ツユ? それはどんなのだ?」
「あっ、そうか。素麺も知らないなら、ツユも無いよな……。
箱に入ってませんか?」
「……無いぞ?」
「じゃあ後でツユも渡しますよ。クロに持って行かせます」
「そ、そうか。悪いな」
「いえいえ。話してたら俺も食いたくなったな。
……あっ、そうだ。1回食べてみますか? 俺が作るんで、一緒にどうです?」
「……じゃあもらおうかな」
「クロも食うか?」
「たべるー!」
「よし。じゃあ作るわ。ちょっと待って下さいね」
昼は素麺。
うん、美味い。
魔法使いはワサビを出し過ぎて悶絶してた。
こういうのって『異世界あるある』じゃない?
「はぁ。このワサビというのにはやられたが、なかなか美味かった」
「いえいえ。次回からは注意してください」
「判った。ありがとう。じゃあ」
「ではまた」
ご近所付き合いもなかなか悪くないな。
今度は蕎麦でも勧めてみるか?
……じゃなーい!!
素麺食う為に呼んだんじゃないんだよ!
魔法の事を聞くんだよ!
「ちょっと待ったーっ!」
「うん? 何だ?」
「聞きたい事があったんですよ!」
「聞きたい事?」
「魔法について教えてもらいたくて」
「はぁ?! お前、魔法で結界作ってるんだろうが! しかもこんな強固なやつを!
今更何が聞きたいんだよ! 嫌味か?! 嫌がらせか?!」
「だから前にも言ったでしょ?! 結界は神様が作ったんだって!
俺は魔法について全然詳しく無いんですよ!」
「……まだその設定で行くつもりなのか? バカにするのもいい加減にしろよ?」
「本当だって! 現に、結界の解除も出来ないんだぞ!
自分で作ったんなら、解除出来るだろ!」
「解除の必要が無いから、魔法陣に組み込まなかったんだろ?」
「それ! 魔法陣! 魔法陣って何?!」
「魔法陣も知らないって言うつもりか? お前さぁ……」
「そうだ! クロ! ちょっと外に出て魔法を使って見せてやってくれ!」
「わかったー!」
「あっ! 簡単なの! 周囲を破壊するようなのはダメだぞ!
そうだ、水! 水を作ってくれ! 水たまりくらいのな!」
「はーい!」
「水の魔法が……」
「良いですから! まずは何も言わずにクロを見ててください!」
「はぁ……。しょうがないな」
予想通り、クロは詠唱もせずに水を生み出した。
当然、魔法陣なんかはどこにも出てきてない。
それを見た魔法使いが復活するまで30分もかかった。




