悪い人に捕まりました。
どうやら、この世界での私は、メアリー=オズボーンという名らしい。
オズボーン伯爵家の生まれで、この世界の貴族の子供と同様に王立魔法学園に通っている。
廃れた王都の旧貴族街にある見るからに年季の入った邸が、私の住む家だ。
学園の先生に、階段から転げ落ちて一時的な記憶喪失になった事を伝え、ようやく自分の名前と住所と、クラスを聞き出す事ができた。よかった……ちゃんと家があったんだ。
しかも、邸の外壁は汚れでくすみ、幽霊屋敷のようで私好みに陰気な雰囲気が漂っている。
なんて素敵な邸だろう。オズボーン伯爵家は由緒正しい貴族だけど、邸を修繕するほどのお金はないらしい。蝋燭代もケチっているせいで邸の中は常に薄暗い。埃を被った不気味な肖像画に、古びて擦り切れた絨毯。それに、今にも落下してきそうなシャンデリア! どれを取っても理想的だ。
ああ、なんて素敵なのだろう。キラキラした宮殿みたいな学園に比べたら、快適で居心地がいい。
こういう西洋風の邸に住むのが、私のちょっとした夢で憧れでもあった。
以前、参加したゲームショーで、海外のホラーゲームを少しだけ覗いてみた事がある。洋館が舞台のゲームだった。猟奇的な殺人を行う科学者の男が犯人で、館の秘密を解き明かしながら、捕らわれた子供たちを救出するのだ。子供の救出に失敗すると、その子供が腐乱死体となって襲いかかってくる。
なんと心躍る素敵なストーリーだろう!
私もそんな感じの、〝オシャレ〟なホラーゲームに出演してみたかった。
どうして、私はこんな場違いなキラキラ恋愛ゲームに、召喚されてしまったのだろう……。
ここでは、ただ陰気なだけで、何の役にも立ちそうにないのに!
なんて、いじけている場合じゃない。
邸の私の部屋は、なんとも素晴らしい事に屋根裏部屋だ!
三角形の天井で、小さな天窓が一つついている。ベッドと机と、古くて趣のある衣装タンスが一つあるだけで、暖炉もない。床はところどころ腐っているから踏むとブヨブヨしていた。
私はここが自分の部屋だと知って、歓喜の悲鳴を上げそうになった。
こんな素敵な部屋が与えられているなんて!
天井に張っている蜘蛛の巣もいい感じのインテリアだ。しかも、大きな蜘蛛さんが同居人。
あれは人類の天敵を駆逐してくれる蜘蛛さんだ。大事にしないといけない。
壁に取り付けられている割れた鏡で自分の姿を確かめる。
髪は背中の中程の長さまで伸びていて、前髪で顔は隠れている。
顔は青白く、痩せ細っていて、目が異様に大きく爛々と輝いている。
その瞳の色は、なんと……真っ赤な血の色だ!
私は両手で口元を押さえ、嬉しさのあまりに上げそうになった奇怪な悲鳴を飲み込んだ。
血を吸い込んだ呪いの魔石みたいな美しい色だわ!
うっとりしていると、部屋の扉がゴンゴンと乱暴にノックされる。
「お嬢様、食事の時間ですよ! さっさと下りてきてください。まったく、どうして私が……」
メイドの不機嫌な声が聞こえて、「は、はいっ!」と緊張して返事をした。
食事の時間! そんなものがあるのね。人間って素晴らしいわ。
「怒られるんですから、早く下りてきてくださいませ!!」
メイドは大きな声で言うと、ドタドタと足音を立てて離れていく。私はホッと胸をなで下ろした。
取りあえず衣装タンスを開いて服を探す。
葬式服みたいなドレスばかりだけど、レースやリボンまでついていてかわいい。
まさに私好みの服だ。
私はウキウキしながら着替えて、部屋を出た。
◇◇◇
どうやら、私には家族がいるらしい。といっても、両親は二人とも火災に巻き込まれて死亡したらしく、養ってくれているのは叔父夫婦だ。リスモンド叔父様と、バーバラ叔母様だ。
二人の間には、息子と娘の二人がいる。長男は王立魔法大学に通っていて、寮で生活しているため、邸にはほとんど戻ってこないそうだ。娘のヒルダは私と同じ歳らしい。
一階の食堂に下りて、ドキドキしながら扉を開く。
どんな夕食が食べられるのだろう。それに、私の家族と初めて合うのだ。
いい印象を持たれるように、行儀良くちゃんとしないと。
服の埃をはたいて、目立つ袖の毛玉を取り除き、深呼吸してから食堂に入る。
長いテーブルに、燭台が置かれていて蝋燭の炎が揺らめいている。
テーブルにはすでに叔父様と叔母様、それにヒルダが座っていた。
ヒルダは叔母様によく似た赤い髪の美人だった。
「なんだ、お前まで来たのか……」
すでに食事を始めていた叔父様が、私をチラッと見て顔を顰める。
「メアリー、あなたその真っ黒な服しか持っていないのかしら?」
「今日は誰の葬式だ?」
叔母様と叔父様が皮肉っぽく言う。
私は取りあえず笑っておいたけれど、それが余計に癪に障ったようだ。
「まあ、気味の悪い!」
「そう言うなよ。これでも、兄貴たちの残した子供だ。面倒みてやらなきゃな」
「ハッ! 一緒に死んでくれていたらよかったのに」
叔母様は鼻で笑って、分厚いステーキを口に運ぶ。
真っ赤な口紅を塗った口がクチャクチャと動いていた。
急にガシャンッと音が立って、私も叔父様たちも同時にヒルダを見る。
皿にフォークとナイフを叩き付けるように置いた彼女は、うんざりした顔で立ち上がる。
「食欲が失せたわ。部屋で食べるから」
そう言うと、彼女は席を離れて、私を睨むように一瞥してから食堂を出ていってしまった。
亡霊がいれば、誰だって食欲が失せるだろう。私は悪い事をしてしまったと小さくなる。
「ごめんなさい……呼ばれたから、来たんですけど……あ、あの……私も部屋で食べようかな……」
あまり歓迎されない雰囲気を感じて、私はオドオドしながら言う。
「ああ、そうするといい。おい、メアリーの食事は部屋に運んでやってくれ」
叔父様が隅に控えていた給仕の使用人に向かって言う。
私はそそくさと食堂を出て、自分の部屋に戻る事にした。
正直、家族とはいえ、知らない人と食事をするのは緊張する。ヒルダはきっと、私がモジモジしているのを見て、先に席を立ったのだろう。こういう場合、どうするのがマナーなのか教えてくれるために。
「ツンデレって言うのかな……ああいうの……」
私は廊下を歩きながら呟いて、ククッと笑った。
料理を運んでいたメイドが、ギョッとしたように私を見て、避けるように小走りで立ち去る。
ツンデレはかわいいと、ゲームのプレイヤーたちもチャットで話していた。
私はこう見えて、色々と物知りなのだ。ゲームの配信なんかも、こっそり覗いていたから。
◇◇◇
メイドが運んできてくれた夕食は、すごく豪華だった。
パンと野菜スープに、林檎まで付いている。
野菜スープは小さくきったベーコンが二切れも浮かんでいて、クタクタに煮込まれたキャベツとタマネギが入っていた。その上、真っ赤な林檎が一きれ。
きっと、今日はすごくご馳走が出る日だったに違いない。
人間って、なんて素晴らしい!
今まで指をくわえて見ているだけで口にしたことのない料理の数々を味わえるのだ。
この調子でいけば、いつか〝ミートパイ〟も食べられるかもしれない。
ミートパイ……なんて素敵な響きなのだろう。
私はうっとりしてから、プルプルと首を振った。そんな贅沢は、いくら貴族でも許されないはずだ。
王侯貴族でなければ、食べる事が許されない食べ物だ。きっと、王宮の晩餐会とかで出されるのだろう。
私も一度くらいは参加できるかもしれない。なにせ、貴族のお嬢様なのだ。
私は白い寝間着に着替えて、割れている鏡を覗き込む。
元のゲームでは、私は鏡から鏡を移動して現れる亡霊だった。
そして、鏡の中から這い出してきて、プレイヤーを襲うのだ。
「今も入れるのかな……」
恐る恐る鏡に手を触れてみると、表面が波紋のように揺れる。
見れば、手首の辺りまで鏡の中に埋まっていた。
これは!! もしかして、本当に…………。
私は一度手を引っ込めてから、思い切ってズブッと鏡の中に両腕を突っ込む。
まるでヌルヌルした液体の中に腕を突っ込んだような感触だった。
「つ、使える……私の能力、この世界でも使えるわ!」
私は嬉しくて独り言を漏らし、今度は遠慮なく頭を突っ込んでみる。
鏡の中は私がよく知る世界だった。真っ暗な水の中のようで、何も見えない。
これは鏡から鏡を移動できるかもしれないと、私は寝間着の裾をつかんでエイッと飛び込む。
ああ、流される~~。
出口となる鏡があると、薄らと光っているのだ。それも以前のゲームと同じ。
チラッと見れば、叔父様と叔母様の寝室のようだ。二人が情熱的なキスを交わしながら寝台にダイブするのが見えて、私は「わっ!」と両手で目を覆う。これは未成年が見てはいけないものだ。
十八禁ゲームの世界である。
早々に立ち去り、別の鏡を探す。ここは…………。
チラッと顔を覗かせてみると、ヒルダの部屋のようだ。何をしているんだろうと気になって見ていると、彼女は赤い豊かな髪を頭の上でお団子に結び、一心不乱にノミと金槌を振るって石を削っていた。
部屋中に置いてあるのは、様々なポーズを取る石像だ。
しかも、よく見れば全部ユーイン殿下の顔だった。
ヒルダは「うふふっ」と、含み笑いを漏らして、目を爛々と輝かせながら石像を彫刻している。
私は慌てて鏡から顔を引っ込めた。
あれは見てはいけないものだったかも……。
見付かったら、あのノミと金槌で頭蓋骨を抉り出される!!
思いがけずヒルダの秘密を知ってしまったけれど、これは絶対に口外しない方がいいだろう。
それにしても、ヒルダがユーイン殿下のファンだったなんて。
あの光の王子様は確かに女子に人気がありそうだった。
ヒルダもそうした、殿下に憧れる女の子の一人なのだろう。
近付かないでおこうと、私は身震いしてからすぐに暗い鏡の中を平泳ぎスタイルで進む。
クロールとか、バタフライとか色々と試してみたけれど、このスタイルが一番進みやすい。
私は鏡の出口があるたびに、ちょっと覗いてみる。
以前のゲームでも、こんなふうに鏡から鏡を移動して色々な場所を覗いて楽しんでいたのを思い出した。
プレイヤーが楽しそうに写真を取っているところに、チラッと映り込んでみたりした事もある。
今思うと、ちょっと自己顕示欲が強すぎて恥ずかしい……。
でも、写真に写った私を見て、プレイヤーたちが悲鳴を上げたり、怖がったりするのを見るのが好きだった。みんな、それぞれ楽しんでくれていたから。
そんな事を考えながら、色々な部屋や場所を覗く。分かった事は、どうやら私が出入りできるのは鏡だけではないようで、鏡のように映るものなら、窓でも水面でもいけるらしい。
◇◇◇
急に流れが早くなり、押し出されるように鏡の外に転がり出る。
頭を床にぶつけてしまい、続けて体が抜け出る。
「い、今のは……みっともない出方だったわ……」
元、ホラーゲームの亡霊役としては、あるまじき無様な姿!
急いで起きあがり、キョロキョロと部屋の中を見回す。
幸い、誰も見ていなかったようでホッとした。
立ち上がり、寝間着についた埃を払う。
ここはどこだろう?
邸の中ではないようだった。倉庫なのか、麻袋や木箱、酒樽などが積んである。
コソコソと移動してドアを開けてみると、そこは細い廊下だ。
恐る恐る、足音を立てないように移動する。
階段を上がってみると、部屋の中から人のこえがする。
慌てて顔を引っ込めてからもう一度確かめると、いたのは数人の男の人達だった。
テーブルを囲んで、何か深刻そうに話し込んでいた。
「なんだか、とてもマズい状況のような気がするわ……」
見てはいけない場面だったのかもしれない。
私は急いで階段を下りようとしたけれど、足を踏み外してしまった。
「ギャアッ!」と、大きな声を上げて転がり落ち、みっともなくひっくり返る。
ネグリジェの裾がめくれて、脚が剥き出しだ。
「おい、誰だ!!」
「侵入者だぞ!!」
あっという間に見付かってしまったらしく、上にいた男たちが次々に階段を覗く。
「……ね、寝間着姿の女?」
「誰だ。娼婦なんて連れ込んだのは!!」
「ちげーよっ、知らない女だ」
そんな騒ぎの声が聞こえて、階段をバタバタと男たちが下りてきた。
私は逃げるタイミングを失い、無抵抗のままあっさりと捕まってしまった。
こ、怖い……!!
清め塩を投げつけられたり、爆音お経責めにされたり、木魚を叩くバチで殴られたり、警策で打たれたりするかもしれない! 成仏しちゃう!!
椅子に縄で縛り付けられた私を、男達が取り囲む。
「なんだ、こいつ」
「てめぇ、どこの回し者だ!?」
威嚇されて、私は悲鳴を呑み込み縮こまった。
涙が込み上げてきて、脚も震えている。
「ご、ご、ご、ごめんなさい! 見逃してください……許して下さい……悪さはしてないんです!」
私は歯をガタガタ言わせながら悲鳴を上げた。
お線香で燻すのはやめて~~!!
「チッ、どうします? この女。聞かれたからには、帰すわけにはいきませんよね?」
男の一人が、偉そうにソファーにふんぞり返っている男を見て尋ねる。
年齢は十代だけど、この中では一番偉いらしい。
フードを被っているから顔ははっきり見えない。
不機嫌そうな雰囲気を漂わせていて、酒瓶を直接口に運んでいる。
なんだか、柄の悪い不良みたいな人だ。
男はソファーから立ち上がると、ゆっくり近付いてくる。
私は逃げようとして縛られた体をモゾモゾと動かした。
何重にも縄が巻かれているせいで、指先くらいしか動かせない。
そのまま、バランスを崩して椅子ごと倒れてしまった。
こ、怖いです!! 近付かないで~~!!
椅子が起こされたかと思うと、男がズイッと顔を寄せる。
白銀の髪がフードの下から覗いている。殺気立った鋭い目を向けられて、私は気を失ってしまいそうになった。これは、殺人鬼の目だ。私はたくさんのホラーゲームを見てきたから知っている。
殺人鬼キャラと同じ冷酷で無慈悲な目だ。
私は心の中でありったけの悲鳴を上げた。
「そ、それ以上……近付くと…………の、の、の、の、呪いますよ?」
私はビクビクしながら声を絞り出す。
「あ?」
「な、なんでもありません、ごめんなさいっ!!」
ギュッと目を瞑って、清め塩攻撃に備える。
塩をかけられると、ナメクジみたいに消えてしまうかもしれない。
「おい、お前。名前は?」
「…………あわわわわっ」
動揺のあまりに舌がうまく動かず、言葉が出てこない。
力一杯椅子を蹴られて、肩が跳ねた。
「メアリーです!! メアリー…………オズボーン!!」
「オズボーン? ああ……あの落ちぶれた伯爵家か」
男は私が座っている椅子の座面の端に足をかけたまま呟く。オズボーン家の事を知っているらしい。
ただの庶民のごろつきではないかもしれない。これで、完全に顔も名前も住所も割れてしまった。
うまく逃げられたとしても、邸に押しかけてきたり、待ち伏せしたりしてくるかもしれない。
もう逃げられないだろう。
「そのオズボーン家の娘が、どうやってここを突きとめた?」
「つ、突きとめたわけじゃ……あ、ああ、あの、信じてもらえないかもしれないんですけど……た、たまたま、偶然、夜の散歩をしていたら……ここに、辿り着いちゃって………覗くつもりはなかったんです! 誰かに場所を聞きたくて。私は迷子なんです!!」
「あ? 偶然散歩で通りかかった? そんな話、誰が信じるんだよ。あんまり舐めたこと抜かしてると、てめぇ、死ぬぞ」
顎を乱暴につかまれて、タコみたいな口になってしまう。
「本当なんです…………私にはちょっとした…………の、能力があって……鏡の中を移動してて……」
私は半泣きになりながら訴える。男は他の男達と顔を見合わせる。
「鏡の中を移動できるだと?」
「は、はい!」
「固有魔法の一種ですかね?」
男の一人が首を捻りながら言う。別の男が「そんな魔法、聞いたことねーぞ」と囁いていた。
私の顎をつかんでいる白銀の髪の男が、ニヤッと悪魔みたいな顔をして笑う。
「面白しれぇ……それが本当なら、やってみてもらおうじゃねーか」
◇◇◇
椅子に括り付けられていた私は、一度縄を解かれる。
逃げ出さないようにと、もう一度縄で縛られた。
犬のリードみたいに、白銀の髪の男が私の綱の端を握っている。
「おい、やれ」
そう言われて、背中を蹴り飛ばされる。よろめいて、そのまま鏡の中にドボンとはまった。
平泳ぎスタイルで進むと、別の鏡の出口が見える。
先ほどの男たちの一人が丸い鏡を持っていた。
そこに頭をグイッと突っ込み、窮屈な穴から出るように外に出てみせる。
「本当に鏡から鏡に移動しやがった!」
「すげー……」
男たちが感心して拍手してくれる。私はちょっと照れて、ヘニャっと笑った。
それほどでも……。
けれど、すぐに白銀の髪の男が目の前にやってきたものだから、ビクッとして追い詰められたネズミみたいに小さくなった。
白銀の髪の男は私をジロジロ見た後で、愉快そうに目を輝かせる。
その手が私の頬をペチペチと叩く。
「面白れー女だな」
面白れー女!!
生まれて初めて言われました……開発者様(お父さん)
私は妙にドキドキしてしまう。
面白れー女と言われると、恋が始まってしまうそうだ。
ということは、これは何かのフラグでしょうか。
なんて、うっかり妄想に浸りそうになっていた私は、凶悪な笑みを浮かべる男を見て青ざめる。
亡霊役だった私に、恋のフラグなど立つはずがない。
これは獲物を見つけた捕食者の目!!
「あの~~これで、家に帰してもらえます、よね?」
私はオドオドしながら尋ねる
「ああ、帰っていい。名前は覚えたからな。それに、お前。王立魔法学園の生徒だろ?」
「なぜ、それを……!」
驚愕して尋ねると、彼は「あ? 貴族なら当然だろ」と呆れた顔をする。
そうでした。この王国では、貴族の子供はもれなくあの学園に入学する事になっているんでした。
「明日、午後三時。東の時計塔に来い。逃げたら、その時計塔のてっぺんから逆さ吊りにしてやる」
胸ぐらをつかまれた私は、コクコクと頷く。
解放されて、鏡の中に飛び込み、ようやく自分の部屋に戻ると、私は両手と両膝を床についた。
「こ、怖い……人間の世界……怖い!!」
今日はもうベッドに入って寝よう。
私は這うようにベッドに移動し、ツギハギだらけの上掛けに潜り込んだ。




