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武力ゼロと追放された俺、口八丁で最強国家を作ってしまう 〜元トップコンサル白石快斗の異世界再編計画〜  作者: InnocentBlue


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第13話 強さの売り方

 

 石畳の中庭。


 夕暮れが、城壁をやわらかく染めている。白石快人はベンチに腰を下ろし、紙を一枚取り出した。


「ではフィリアさん」


 ひらり、と掲げる。


「僕のSWOT分析、いきます」

「……すおっと?」

「強み・弱み・機会・脅威、です」

「もう少し分かる言葉で話せ」

「はい」


 素直に頷く。だが目は、すでに仕事モードに入っていた。


「まず、この国の強み」


 指を一本立てる。


「国民が真面目」


 フィリアの視線が、遠くに向く。

 市場で働く人々。畑を耕す農夫。笑いながら荷を運ぶ兵士。


「……確かに」


 ぽつりと呟く。


「皆、よく働く」

「ええ。だから」


 快人は軽く笑う。


「ボロボロなのに、まだ持ってる」


 かろうじて現状維持。その言葉が、妙に現実味を帯びる。


「次」


 指を二本。


「騎士団」


 フィリアがわずかに胸を張る。


「強い、はもう言いました」

「当然だ」

「でも、それ以上に重要なのは」


 少し間を置く。


「庶民的」


 フィリアが眉を寄せる。


「……どういう意味だ」

「プライドが高すぎない」


 快人は市場の方を指す。


「普通に農作業手伝ってましたよね?」

「……ああ」

「普通、騎士ってもっと上にいます」


 彼は肩をすくめる。


「でもこの国は違う」


 ・市民と距離が近い

 ・命令だけでなく、自発的に動く

 ・嫌われていない


「これ、めちゃくちゃ強いです」


 フィリアは少しだけ考える。


「……そう、なのか」

「はい。信頼資産です」


 また分からない単語。だが、悪い意味ではないと分かる。


「そして三つ目」


 指が三本になる。


「身分制度が緩い」


 フィリアはすぐに頷いた。


「確かに、厳格ではない」

「無礼を働いたら即処刑、みたいなのもない」

「ないな」

「つまり」


 快人は笑う。


「変な縛りが少ない」


 自由度が高い。それは――


「改革に向いてる」


 風が、少し強く吹く。フィリアは黙って聞いていた。

 この国の良さを、こんな言葉で整理されたことはない。


「で、ここからが本題です」


 快人は紙をくるりと回した。


 ◇


「それを利用して」


 指先で、机をトンと叩く。


「騎士団を外に出す」

「……」


 フィリアの眉がピクリと動く。


「ある意味、傭兵化です」

「それはさすがに怒るだろ!」


 即座にツッコミ。立ち上がる。


「騎士団は誇り高き存在だ!金で動くような――」

「だから」


 快人はさらっと遮る。


「傭兵って言いません」

「……は?」

「言葉は大事です」


 彼は指を立てる。


「治安維持支援」

「……」

「近隣都市に、騎士団を派遣する。名目は治安の安定化支援」


 フィリアの口が、少し開く。


「それは……」

「ちゃんとした仕事です」


 快人は続ける。


「盗賊の排除。街の警備。訓練の指導」


 全部、騎士団の本来業務の延長。


「で」


 にやり、と笑う。


「報酬をもらう」

「……!」


 フィリアの目が見開かれる。


「それは――」

「宣伝にもなる」


 止まらない。


「アストレアの騎士は頼れるって評判が立つ。次の依頼が来る。流通も繋がる」


 一気に繋がる。


「さらに」


 指をもう一本立てる。


「実戦経験が増える」

「……」

「練兵になる」


 静かに言う。


「つまり」


 パン、と手を叩く。


「一石二鳥」


 フィリアは、しばらく言葉を失った。理屈は通っている。

 だが――


「……騎士団が納得するか」


 それが最大の壁だ。快人は、そこで初めて。

 少しだけ真剣な顔になる。


「だから」


 すっと、立ち上がる。


 そして――頭を下げた。


「フィリアさん。ご協力お願いします」


 静寂。フィリアが固まる。


「……な」


 見下ろす。この男が。あの飄々とした男が。

 頭を下げている。


「お、お前のようなやつに頭を下げられても……」


 頬が、わずかに赤くなる。視線を逸らす。


「……まあ、一応」


 ごほん、と咳払い。


「国のためを思っていることだし?」


 腕を組む。


「協力してやらんこともないぞ」


 完全にツンデレだった。

 快人は頭を下げたまま。にやり、と笑う。


「助かります」


 その声に、妙な確信が混ざる。フィリアはそれに気づかない。


「だが条件がある」

「何でしょう」

「騎士団の誇りは、絶対に傷つけるな」


 一歩、踏み出す。蒼眼がまっすぐに向く。


「それだけは譲らん」


 快人は、顔を上げた。その目は、珍しく真面目だった。


「約束します。むしろ――上げます」


 フィリアの胸が、わずかに揺れる。


 ◇


 その夜。


 快人は歩いていた。城の廊下を。


「さて」


 小さく呟く。


「次は、騎士団ですね」


 一番の難所。だが。一番、効果が出る場所。


(まずは、小さく一勝)


 扉の前で立ち止まる。

 騎士団詰所。中からは、笑い声と剣の音。

 快人は扉に手をかけた。


「失礼しまーす」


 軽い声。だが、その一歩は。


 アストレア王国の強さの使い方を、根本から変える一歩だった。

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