615列車 1,2,1,2・・・
2062年4月4日・火曜日(第28日目)天候:霙 東日本旅客鉄道上越線土合駅。
「せーの、1。」
はじめの一歩。階段1段目から登り始める。次の階段には「2」という数字が入っており、この先この数字は484まで続く。上を見上げれば、絶望を覚えるほど遠くに太陽光の入る部分を見る。
5段に1回ペースぐらいで踊り場が設けられる。手すりにつかまりながら、ゆっくり、ゆっくりと階段を上る。
「これしんどいなぁ。」
「結構キツいかも・・・。」
まだ始まって10段ちょっとくらいしか登っていないのだがなぁ・・・。
だんだんと背負っている荷物以上に足が重くなってくる。さっきこの階段を走って上っていった鉄道ファン達の体力がすごいものだと感心する。
「足が・・・足が重い・・・。」
「萌頑張って。」
「ごめん、無理。次の踊り場でベンチあるからちょっと休もう。」
「はい、はい。」
踊り場にあるベンチに腰を下ろした。
「これキツい・・・。荷物ここに置いて、私達だけで上に行っちゃう。どうせ誰も盗りはしないって。」
「そうだなぁ・・・。さっき全員上に行って足しなぁ・・・。そうするか。」
僕たちは背負っている鞄を置いた。重い荷物が背中から無くなったことで多少なりとも足を軽くなる。貴重品をスーツのポケットにしまい、ペットボトルを片手に再び階段を上る。次のベンチでまた休憩。
「・・・ハァ・・・、ハァ・・・。」
「大丈夫。ナガシィ。」
「大丈夫。ちょっと運動不足なだけだと思うし・・・。にしてもキツいなぁ、ここ。」
「これでよく走る気になるわね・・・。こんな階段上り下りするってだけでも気が遠くなりそう・・・。」
「谷川岳なら途中までロープウェイがあるからなぁ・・・。少しは楽だろうさ。」
「楽っちゃ楽だと思うけど・・・。」
再び階段を上り、休憩・・・。
「下から登り初めて何分経った。」
「15分くらい経ってる・・・。まだ着かないの・・・。」
階段を登る時間よりも休憩してる時間の方が長そうだな。なんだかんだ30分くらいかけて462段の階段を上りきる。
「やっと着いた・・・。」
下を見下ろすと闇に呑まれていく階段が続いている。
「これは怖いなぁ・・・。」
「夜来たら、何か絶対でそう。」
「新清水トンネル掘削したときの殉職者の例とか出てくるかもな。」
「よして・・・。今でも気味悪いのに・・・。」
「蛍光灯が付いてるだけましだろ・・・。」
僕たちは階段を背に通路を歩いて、ラチの外へえと出た。昔ながらの駅員が中に入って改札をするスタイルのものがある。今は駅員がいないため、その脇を通る。ものがかける台がおかれ、そこには「登山計画」と書かれたポストがある。谷川岳に登る人たち用におかれているものだな。台には人の写真があり「この方を探しています」とも書かれている。
「この人助かったのかな。」
「・・・写真がそのままって事は絶望的じゃないか・・・。」
もちろん、助かっていて欲しい。
駅舎の外に出てみた。出入り口の上には「日本一のモグラ駅へ」の看板がさがる。
「本当に日本一のモグラ駅ね。」
「本当だな・・・。」
「それにしても、これって雨。雪・・・。」
「傘は鞄の中において来ちゃったな。」
土合駅の周辺は天気が悪い。日陰になりそうな所には大きな雪の塊が残っている。この辺りにはまだ春が来ていないみたいだ。
結局外には出れないため、僕らは駅舎の中に戻り、通路を盗ってさっきの階段の上に来た。行きはよいよい、帰りは怖い・・・ちょっと違うなぁ・・・。
僕らが荷物を置いたベンチまで戻ってくるとホームはもうすぐである。だが、まだ列車はやってこない。
「この時間でないとこういうこと出来なかったのよねぇ。」
「うん。他の時間は列車の間が空きすぎてたからな。谷川岳に登るんならまだしも、この駅だけ見るんなら3時間とかいる必要は無いでしょ。」
因みに土合駅に停まる越後湯沢方面行きの列車は8時34分、9時56分、(11時50分)、13時49分、17時58分、20時59分だけだ。間隔が一番短いのは8時34分から9時56分の間だけなのだ。次の11時50分の列車は土曜日と長期間の休み中にしか運行していない。水上方面行きは6時38分、8時39分、(10時20分)、12時39分、15時34分、18時16分だ。
「それもそうね・・・。」
にわかにトンネルの中がうるさくなる。ちらりと時計を見ると9時53分になろうとしている。湯桧曽駅から下り列車が接近しているのか。
「行こう。もうすぐ列車来るし。」
荷物を持って、階段を降りた。ホームに行き着くと白いライトを照らしてE129系がホームに滑り込む。小和田駅の時も思ったが、こんな駅でも時間になればちゃんと列車がやってくるのだ。
土合9時56分→越後湯沢10時19分




