第9話 生徒会長との邂逅
「それでは最初のホームルームで言っていた通り、委員会の希望は明日まで。部活は来週末までです! しっかりと熟考して選んでください。是非、青春を見つけてください!!」
柏木先生から、またもやギャルゲーの選択肢みたいなことを言われてしまった。本当に青春が好きな先生だ。
入学して数日。
幼馴染から攻め込まれつつ、学校生活に慣れ始めた今日この頃。そろそろ入る部活や委員会を決める時期が近づいてきた。正直、委員会の事とかはすっかり忘れていて、どんなものがあるのかも把握していない。
部活も…特にやりたいスポーツもないし、文学部に入る気もないなぁー。委員会も特にないし。でも…しいて考えている事と言えば。
「ねぇ美夢ちゃんはどうするか決まった?」
彼女と同じところがいい。そもそも入るのだろうか。
「委員会の方は決まっていますよ。昴君が決まっていないのなら、一緒にどうですか?」
「いいの? 入るよー! 俺がいっても大丈夫なところ? 人数オーバーしてない?」
「大丈夫です! 基本的に人手不足なところなので。気に入ってもらえるといいのですが、そこは昴君次第……一緒にできたら嬉しいですし」
期待の眼差しが突き刺さる。一抹の不安が過るけど、こんなに期待してくれているのだから多少合わなくても頑張りたい。なんだかワクワクするな。これと言って得意分野がない俺でも、果たして務まるところなのだろうか。
そして連れていかれたのは─。
「生徒会室…!!」
生徒会室。
その名の通り、あのラノベでも題材になっている『生徒会』が使う部屋だ。
「風香お嬢様を生徒会長に、私が副生徒会長になるのが目標です! ……その、どうですか?」
少し不安げな目でこちらの様子をうかがう美夢ちゃん。不安なのは俺も同じ。
これまでの人生で生徒会とは一切無縁の生活だった。題材になってるラノベも読んだ事はないし。正直、生徒会が何をするところなのか全くわからない。しかもこのマンモス校の生徒会ともなれば、何か特別な力必要になってくるのかもしれないし…不安だ。果たして俺の能力でやっていけるのかどうか。
しかし、そんなことはどうでもいい。彼女が期待してくれているのだ。それに比べれば俺の悩みなど、ないも同然。
「俺がやっていけるのか不安だけど頑張ります!! 迷惑かけたらごめん!!」
「フフ、相変わらず素直ですねー。大丈夫です。何かあった時には私がフォローします。では入りましょう。お嬢様はすでに中に入っていますし。失礼します! 入ります」
そうしてドアに手をかける。
そういえば生徒会長って誰なんだろう。入学式にいたような、いなかったような…ダメだ、泣いていた記憶しかない。そんなことを思い出している間にも扉は開かれた。
俺達を待ち受けていたかのように、正面に男女一人ずつが立っていた。
「やぁこんにちはー! 今年は3人か。僕たちの仕事も減って嬉しい限りだね。ねっ、生徒かいちょ……れーちゃん」
「れーちゃんって言うな! わざわざ言い直してまでその呼び方はやめろ! 生徒会長の威厳というのをだな─」
「まぁまぁ。2人っきりの時は許してくれてるんだから固いことは言わないの。肩に力を入れすぎても、新入生ちゃんたちが怖がっちゃうから良くないよ。肩を揉んであげるね」
「ちょっ! 急に何を?! も、揉むな!! ……ふふっ…く、くすぐったい!!」
いきなりめっちゃイチャついてる。言葉では軽く拒否してるのに、強くは振り払おうとしてないで悶え続けている。開けた瞬間にイチャつきを見せつけてくるとは、なんて恐ろしい先輩だ。
今の会話から察するに、肩を揉まれている女の人が生徒会長。なんだか見たことがあるかも。
「……はぁ、美味しい紅茶だわ」
そんな2人には目もくれずに、椅子に座り、紅茶を嗜む西園寺さん。優雅だ。こんな2人に無反応とかなんて精神力。俺はただただ困惑するばかりなのに流石ご令嬢。
「まったく……早々に見せつけてくれますね。うらや……ゴホンッ! 空耳です!」
「まだ何も言ってないよー!」
でも空耳という事にしておこう。まだダメージを受けたくないから、そうしよう。
「えー、というわけでまずは自己紹介。僕が生徒会副会長の『加賀美 吹雪』。肩の力を抜いて、気楽にやってるから、よろしくねー」
「入学式で知っているかと思うが、私が生徒会長の『佐々木 レイナ』だ。さっき見た光景は忘れるんだ。いいな? 決して誰にも広めるな!」
先に自己紹介したのは茶髪のミディアムヘアー。平均身長の俺よりも頭1つ分くらい大きな高身長。しかも男の俺から見ても美男という加賀美先輩。言葉通り、肩の力を抜いている感じだ。なんとも凄い人が先輩にいたもんだ。でも仕事できるオーラが凄い。
そしてやはり入学式にいた生徒会長の佐々木先輩。少し茶色よりの黒髪ボブカット。少し鋭い視線だけど加賀美先輩から肩を揉まれたおかげか、さっきよりも少し頬っぺたが赤くなった代わりに肩から力が抜けている気がする。
「雨宮 美夢です。お世話になります。よろしくお願いいたします!」
「小鳥遊 昴です。全然生徒会について全然知らなくてご迷惑をかけてしまうかもしれませんが、頑張りますのでよろしくお願いします!」
「大丈夫、大丈夫。今からそんなに緊張してたら疲れるよ。今の生徒会長みたいにリラックス、リラックス」
「わざわざ私を引き合いに出すな! それとお前たちのことはよく覚えている。入学式で号泣してたし、校門で抱き合ってるのも見たし」
「うっ……」
さすが生徒会長。よく見てらっしゃる。
あの出来事がばっちり見られていたとは、今考えても恥ずかしすぎる。
「まぁそれはいいとして生徒会の活動だが、イベントごとの時は多少特殊な業務があるが、通常時はまだ1年のお前たちは雑務がメインになる。うちはできて数年のマンモス校だから、細々とした仕事が多い。能力云々は心配する必要はない」
「そうそう。わからないことがあったら、聞いてねー」
「了解です! あのそういえば、他の方々は? 2年の先輩とか、顧問の先生とか」
「それなら他の委員会との打ち合わせに行ってるよ。顔合わせは生徒会長と副会長の僕らがいれば基本的には済むし、すぐにやらなきゃいけないわけでもないからね。まぁそういうわけでこれからもよろしく。はい、解散。後輩ちゃんたちは帰って大丈夫だよ」
「「えっ?」」
解散?もう終わりですか。意外とあっけない。でもちょっと待って。生徒会長である佐々木先輩も驚いて声を上げてるんですけど。
「おい! まだ仕事が─」
「資料作成とかでしょ? 後輩ちゃん達にやってもらうわけにはいかないし、俺がやっておくから大丈夫、大丈夫。知ってると思うけど、仕事はしっかりするタイプだから。それとも……れーちゃんが手伝ってくれる?」
「ぐっ……そ、そこまで言うなら仕方がない! 手伝ってやる! それと、れーちゃんって言うなと何度も言っているだろ!」
これは俺たちが入れる余地はなさそうですね。できることと言えば、空気を読んでさっさとここから逃げることです。
「ではこれからよろしくお願します。失礼します」
俺が行動するよりも先に美夢ちゃんと西園寺さんは動いていた。この2人は流石だ。先輩のイチャつきにも全然動じていない。
俺もそれに追従するように一声かけて、生徒会室を後にした。
想像していたよりあっさりと顔合わせは終了。どんな先輩だろうと戦々恐々としていたけど、ホッとしたような、この先が心配になったような。でもあの2人、絶対に仕事ができるタイプだ。しかもなんやかんや優しそうだし、とりあえずは一安心かな。
それにしてもまさか俺が生徒会に入ることになろうとは、昨日まで想像もできなかった。生徒会のイメージが漫画とかアニメでしかなかったから最初は不安だったけど、なんか会長と副会長はキャラが濃いし、和気あいあいとしていてホッとしたよ。




