表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/57

54話・幸せの青い鳥



「もうね、わしも嬉しくて仕方ないのです。成長を見られなかったのは残念ですが、わしにこんなに立派な息子や、優しい嫁さんもいて、年をとっても可愛い妻がいる上に、愛らしい孫までいた。神さまに感謝してもしきれませんよ」


 泣きそうな顔をするステパンに、「爺ちゃん。それぐらいのことで泣くなよ」と、ダニールが声をかける。それを微笑ましく見守るカーチャに、スターシャ。スターシャは、夫の涙にもらい泣きしそうになっていたのを、私と目が合い誤魔化すように発破をかけた。


「さあさ。これから忙しくなるよ。ぼうっとしていないで、あんたたちはさっさと次のパンを仕込む」

「はいはい。行くよ。爺ちゃん」


 父子が二人で店の奥に消えていく。そこには何の蟠りもないようだった。長いこと家族と切り離されていたステパンは、すぐに家族に受け入れられたようで、それが自分のことのように嬉しく思えた。店の窓には青い鳥が置かれていた。


「あの時の青い鳥?」

「ああ。それね、そこに置くことにしたんですよ。実はその鳥を窓辺に婆ちゃんが置いたら、爺ちゃんが帰って来たんですよ」

「カーチャは幸運を運ぶ青い鳥だって言うけど、たまたまだよ。窓辺に置くようになったらお客さんも今まで以上に増えて来たので有難いけどね」


 カーチャが興奮気味に言えば、スターシャが苦笑いをした。そう言いながらも満更でもない様子だ。


「ステパンさんは石工のお仕事は辞めたのですか?」

「家族と一緒にいたいから、石工の仕事はもう辞めるって。でも、孫たちにせがまれて小鳥を作っていたら、夢中になりすぎて沢山作り過ぎてね。それを見たご近所さん達が欲しいと言ってくれているから、近いうちに旦那の作った作品の展示販売も考えているよ」


 青い鳥はスターシャ一家に、幸せを運んできたようだ。青い鳥を眺めているとキラリと輝いたような気がした。


「今日は何にするかい?」

「ノアール、何がいい?」

「そうだな。ロールパンと、チョコレートパイを。サーラは?」

「私も同じのを」

「じゃあ、ロールパンとチョコレートパンを二つずつくれ」


 ノアールと顔を寄せて、商品棚を見ていたらスターシャが「おや、まあ」と、声を上げた。何だろうと思って見返すと、彼女は気まずそうに咳ばらいをし、嫁のカーチャが袋詰めした商品を笑いながら手渡してきた。


「お二人さんは随分と仲が良くなられましたね。誕生祭の影響かしら?」

「……!」

「お二人を見ていると、私達の付き合い初めの頃を思い出して」


 カーチャが微笑む。照れ臭く思われて頷きかけると、スターシャが言った。


「ああ。あんた達も確かに見ていて、ちょっとじれったい感じだったよ。お互い知らない仲じゃないのに、わざわざさん付けで呼び合っていて、手を繋ぐにも相手の承諾を貰っていたからね」

「婆ちゃん」


 姑から若かりし日のことを暴露されて、カーチャが軽く睨むとスターシャは笑った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ