双子の絶望へのカウントダウン~第1部 牙を剥く悪意~
ルナは、ヴィータの冒険者ギルドの扉を開けた。そこには、数多くの冒険者たちが居座っていた。掲示板を見るもの、おしゃべりをするもの、はたまた受付嬢の渚を口説く者。そして、ここでもルナは自分を強くしろと冒険者達に声を掛ける。
しかし、誰もルナなど相手にせず皆ルナの事を煙たがっていた。しかし、そんな中1組のパーティがルナに声を掛ける。
そのパーティは、赤髪の男剣士と、黒髪の男格闘師、緑髪の女魔術師、青髪の男サポートの4人編成のパーティ。
そして、その様子をしっかりと見ている渚。実は、ルナに声を掛けた冒険者とは、最近ヴィータで問題視されている熟練の冒険者だった。成果はそこそこあげているものの、その動向があまりよろしくないと言われている。
「よう、嬢ちゃん!強くなりてーのか?」
「そうだ!ルナはつよくなりたい!おまえたちは、ルナをつよくしてくれるのか?」
「あぁ、構わねーぞ!俺達は優しいからな、お前さんの望みを叶えてやるよ!」
「ほんとうだな!やくそくだぞ!わかったか!」
「わかった、わかった!だからそんな怖い顔すんじゃねーよ!」
「よし!じゃ、いまからおまえたちをルナのこぶんにしてやる!」
「………ふははははっ!子分か………。いいね、そのノリ!俺は嫌いじゃないぜ!」
「よし、だったらはやくいくぞ!」
「おう!行こうぜ、親分!まずは、人目に付かないところに移動するか!」
「なぜだ!?ここでつよくするんじゃないのか?」
「親分、お前はおバカさんなのか?こんな狭い所で強く出来るわけないだろうに…………」
「そ、それもそうだな………。じゃ、どこでやる?」
「少し待ってろ親分!とっておきの場所がある!」
「お、おう!」
男達は、掲示板に行って1枚のクエストの張り紙を取る。そして、そのクエストを渚の所へ持っていき手続きを開始する。
「これを受ける。メンバー俺達と、あそこのおチビちゃんだ」
「………あの子は冒険者ですか?」
「いや、違う!あいつは、俺の兄貴の子供だ!」
「認められません。冒険者でもない子をこのクエストに連れて行くなんて」
「はぁ?なぜ?別に違反じゃないだろ?最低条件のAランクパーティーがどうこうしてるんだ、問題は無いだろ?それに、俺は兄貴にあのおチビちゃんを鍛えてくれと頼まれてるんだ」
「なら、せめてもっと低いクエストでお願いします。そうですね…………このFランクのクエストなら構いません」
渚が差し出したのは、街からすぐ近くの森に出没しているシルバーウルフを3体倒すクエストだ。
「ちっ!こんなしょぼいクエストか…………まぁいい!これを受けてやる」
「承知いたしました。必ず、シルバーウルフの魔石を3つほどお持ちください。それがクエスト達成の条件なので」
「はいはい、了解」
男達はルナの所に戻り、クエストを受けたことを報告する
「親分、お待たせしました」
「おそいぞ!いつまでまたせるつもりだ!」
「すみません、強くなるにはクエストを受けるのが一番かとおもい手続きを開始していました」
「まぁいい!ルナはつよくなれればそれでいいんだからな!では、さっさといくぞ!わかったか!」
「へいへい、行きましょう!場所は、街から出てすぐ近くの森の中です」
「うむ」
(なぁ、あの武器見ろよ。結構いい代物じゃねーか?)
(やっぱりお前もそう思うか?適当にあのチビの相手して、ボコボコにした後、あの武器を奪って森に置き去りにして殺しちゃえば、俺達は不慮の事故で罰を受けることはない)
(ナイスアイデアね!相変わらず、やる事がエグいけど)
(なーに、今までこれでバレてないんだ!今回だってきっと上手くいく)
(いくらになるかな…………あの武器!相当高く売れそうだぜ!)
「なにをごたごたはなしをしている!はやくいくぞ!」
「そこは、ごちゃごちゃね!今行きますよ、親分!」
こうして、ルナ達は目的の場所へと向かった。
「ここですぜ、親分!ここに現れるシルバーウルフを倒しながら修行をします」
「おぉ!まものたいじ!ルナ、はじめてやる!」
「おっと、初めてですかい?でも、ここの魔物は弱いんで、親分の持っている武器で倒しても強くはなれません。ですから、その武器は俺達が預かり、親分はこの木で魔物を倒してください。そうすれば、あっという間に強くなれますよ!」
「おぉ、なるほど!ひげからもらったぶきじゃだめか。わかった!じゃ、ちょっともっててくれ!」
何も知らないルナは、大輔から貰った月影の重斧を男達に渡してしまう。
「よし、じゃとっとしゅぎょうをはじめるぞ!」
「へーい!じゃ、まずはお前が死ねや、クソチビ!」
「え!?」
その頃、ルナを必死に探すステラ。しかし、何処にもルナの姿はない。行き交う人に聞き込みを開始するも誰もルナを見ていないと言うのだ。
「………おかしい。ルナは目立つはず」
そう、ルナはアギトから貰った熊の帽子を被り背中には月影の重斧を背負っている。目立たないわけがない。それを皆知らないと言う。それはなぜか?
答えは簡単だ。ルナの口の利き方が悪すぎて、ルナを探しているステラも問題児としれていて関わりたくないと言うのが冒険者達の本音だ。そして、ステラは冒険者ギルドの看板を見つける。
「…………あそこなら、何か手がかりがあるはず」
【ガチャ】
ステラは扉を開け、冒険者ギルドの中に入る。ルナが来たとき同様に中には冒険者達がたくさんいた。その中をキョロキョロと見て回るステラ。そして、それに気が付いた渚がステラに声を掛ける
「どうしたのお嬢ちゃん?迷子?お母さんとお父さんは?」
「………いない。私の家族はルナだけ」
「ルナ?あなたのお姉ちゃん?」
「………違う。ルナは私の双子の妹」
「双子の妹?」
「………うん。熊の帽子を被った私ぐらいの女の子。背中には斧を背負っている」
「え!?」
「………あなたは、ルナを知っているの?」
「え、えぇ。先ほどあなたの言う特徴の女の子を兄弟の妹だからと言って連れているのを見たわ。それにクエストも受けて行ったけど………」
「………違う。私達双子は、この世界に転生してきてアギトに保護された」
「えっ?アギト様の知り合い?」
「………うん。アギトには大切にしてもらっている。家族でもない私達を優しく迎え入れてくれた」
「「「えええええっ」」」
ギルドの中に居た冒険者達が一斉に声をあげる
「おいおい、あの生意気な熊嬢ちゃんは勇者様の知り合いかよ」
「俺達、煙たがって追い返してしまったぜ…………」
「勇者様は、エリス様とも深いつながりがあるんだろ?俺達やばいんじゃねーか…………」
「あぁ、妹のティファ様を助けた英雄だろ?そんな人の連れを俺達は軽くあしらった…………。終わりだ俺達」
「………それで、ルナ達は何処へ行ったの?」
「確か、街のすぐ近くの森でのクエストに出かけたわ」
「………そう。ありがとう」
「あ、あの…………。この事はアギト様達に伝えたほうがいいんじゃ…………」
「…………それはダメ!アギト達は今忙しいから!ルナの事は私1人で何とかする」
「で、でも…………」
「………心配してくださってありがとうございます。でも、本当に平気なので。失礼します」
そう言って、ステラは急ぎルナが居る森へと走り出す。




