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OneLoser(ワンルーザー)  作者: kíséri/キセリ
The first series:「ぼくのうた」
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おじいちゃん

「りっちゃん達、明日仕事休みけ?」


「…うんやすみ」


「よしじゃあ明日昼に駅に集合な、見せたいもんある」




 この二人で帰らせるのは危ないと感じたのか、マスターはまだ少し早いのに店を閉めて僕たちを車に乗っけて家まで送り届けてくれた。



 そして翌日。マスターのクソデカボイスモーニングコールで起きた。

 何のやる気も出ない僕はドタキャンしようとしたけどマスターに「こーへんかったら次来た時大学生んときから今までサービスしてきた分の20万払ってもらうからな」という脅しにより行く以外の選択がなくなりきちんと時間の数分前に駅に到着した。20万は言いすぎだろと思いながら、もし万が一、億が一、マスターがきちんと計算していた場合は失礼になるし普通に払えないしマスターはこういうのは払わせるタイプだから素直にやってきた。


 それから二人とも合流して、マスターのおごりで昼飯を食いに行き、現在駅前にいる。




「てかマスター今日どういう予定なの?俺来る必要あった?」


「あるある。ちょっとついてきぃ。」




 もう本格的な夏がはじまりそうな時期。太陽の圧を日に日に強く感じる時期。もともとインドアだし、休日に家から出ることなんて基本ないからもうすでに体力が10しか残ってない。休日ということも相まって人が多い。人混みが苦手な僕からすれば、夏×人混みは地獄だ。


 人混みの中には学生の子たちもたくさんいる。いつからだろうか学生たちが制服や部活のユニフォームで駅やショッピングモールに来ているのを見かけると羨ましく思うようになったのは。あんなに首元が苦しくて家に着くとすぐに脱ぎ捨てていた制服。


 なんだろうなこの感情。いいなあって思うんだよ。この子たちにはまだまだ楽しいことがたっくさんあって、ワクワクすることがたくさんあってその分つらいことややるせないこともたくさんあるんだろうけど、こんなに笑顔が素敵で。

 こういう子たちにも自分に幻滅する日がくるのかもしれないけど、どうかこんなに素敵な笑顔が暗くなってしまいませんように。心を閉ざすという選択をしませんように。こう願わずにはいられないんだ。



「あ、おった。…りっちゃんこっちおいで」

「…はい」



 そこには、路上ライブというにはちんけな、座って弾き語りをしているおじいちゃんがいた。日差しが当たらない交差点の影の方で、コードを乱雑に書いているノートを足の上において、チップを入れてもらうための透明の保存容器を少し前に置いてある。


 絶対おじいちゃんの弾き語りは交差点に並ぶ多くの人たちに聞こえているはずなのに、誰も聴いていなかった。交差点の方はもちろん太陽がガンガン当たっているのに意地でもそっちには行かないぞ、という強い意志を感じるほどだった。観客は一人もいない。なのにこのおじいちゃんはどうしてこんなに楽しそうなんだろう。



「りっちゃん、どう思う?」


「…メンタルすごいなと思います。こんなに人がいるのに誰も聴いていなくて恥ずかしくないのかなって。僕なら絶対恥ずかしい。共感性羞恥というか…。…なんか向こうの方の弾き語りしてる人の周りにはちらほら観客いるじゃないですか。それも相まって恥ずかしい…というか劣等感覚えないのかなって思います。」


「そうかそうか。じゃあそれあのおっちゃんに聞きに行こか」


「えっ、えっ!?!?」





 僕が戸惑っているうちにマスターは僕の腕を強引に引っ張り、あのおじいちゃんの前にまで連れてこられた。

 マスターはなんのつもりなんだ!?そんな、本人に共感性羞恥です、はやばいでしょ!


「あーおっちゃん、今ちょっと時間もらっても大丈夫け?」


「ん~~?なんじゃ?」


「いやうちの子がおっちゃんに聞きたいことあるゆうてんねんけど」


「ほ~?そっちあついんとちゃうか?こっちおいで」


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