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OneLoser(ワンルーザー)  作者: kíséri/キセリ
The first series:「ぼくのうた」
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「うぉい、乾杯!ゴチになります!!」


「乾杯!いやいやこちらこそ先日ご迷惑をおかけしました」




 今日はあの不思議な日、迷惑をかけたゆりに仕事終わり、奢りに飯に来ている。

 もちろんアレが何だったのか気になるけれど、もうゆりには見えていなかったんだし何をどう考えても答えは見つからないだろうからあまり考えなくなった。アレが単なる夢だったとは思ってない。確実に見えていたし、聞こえていたからだ。


 こうなることを見越して彼女は僕に言葉をかけたのだろうか。そしたらどうして僕に覚えていてほしかったのだろう…ダメダメ。考えたって結局わかないんだから。




 今日来ている居酒屋は僕たちが大学生のころからお世話になっている居酒屋。こじんまりとしたカウンター5席、座敷2部屋の立地が激悪な居酒屋で僕たちの秘密基地みたいなところ。

 何か嫌なことがあったり、インターンや就活などの大きなイベントが終わればいつもここにきて二人で打ち上げをしていた。マスターとももう7.8年の付き合いで社会人になった今も少しサービスしてくれたりするから、付き合い的にも二人で飯を食いに行くときはだいたいここにきている。


 この居酒屋には壁掛けの小さなテレビが設置されていて、だいたいおっさんたちが競馬や野球を見ているわけだが今日は僕たち以外はいないのでマスターに一言「テレビ変えまーす」といって「あーい」という返事を聞かずに勝手にリモコンをまわす。


「あ、Hirumaでてるじゃん」


「…いいよなあ、あんなイケメンで身長も180あって、歌もうまくて。神さんは何物を与えるんだよ。僕は一物ももらってないのに。」


「あーあーまた始まったよ、超ひねくれモード」




 僕個人的にはひねくれているつもりは全くない。僕だって小学生の時とかは特に“僕は世界一歌が上手い”と思っていたし、自分自身に自信があって、自分は天才なんだって本気で思っていた時期もある。



 だからいつだったかな。小学生の音楽の授業で誰かが前でうたっているのを聞いて「へたすぎる。僕の方がぜったいうまい」って思ったことがある。でも小学生が知りうる世界は狭い。ああこの世界にはどうしても敵わない天才がいるんだ、もっと小さいころから大人に混じって努力していた人もいるんだ、天才ではなくても、僕が学校に行って部活して学習塾に行っている間に今死ぬほど努力している人がいるんだ、あぁ僕って学校という小さなコミュニティの中でも下の方のレベルなんだって。


 それに気が付いたときにようやくフラットな目線で自己分析をするようになる。その結果が今である。僕はひねくれているのではなく自己分析をした結果の事実を述べているだけだ。


 僕は神様から1物も与えられなかった。小さい頃はただ小さい世界で自惚れていただけだ。これは僕を一番知る僕が自己分析した結果なんだから間違っていない。


 この番組はHiruma特集らしくHirumaを徹底的にインタビューしまくって素性を明かそう、という番組だった。二人ともお腹もいい感じに満たされてきていたのでなんとなくテレビに視線と耳をよせる。




「好きな食べ物かぁ。なんだろう無難に肉ですかね!肉が好きです!」


「休日は…普通にゲームしたりですかね。実はオンラインゲームに最近ハマっていて知らない人とグループ組んで敵を倒しに行ったりしてます!……それがびっくりするほどバレないんですよ、アハハ!」



  なんか好きなもの一つとってもなんか僕とは違うなと感じる。だってこんなどこにでもいそうな28歳現在彼女なし特技なしひねくれサラリーマンの僕が「肉が好きです」なんて言ったらスーパーのやっすい肉を想像されそうなのに、Hirumaが肉好きなんていうと国産牛のステーキ肉と追加で赤ワインまで想像できるんだから。


 Hirumaが休日オンラインゲームをしています、なんていうと有名なゲーミング系のPCやテーブルなんかがすべてそろったネオン系の部屋でかっこいいヘッドホンをつけてゲームをしているところから、休憩にポロォンとおしゃれなアコギの音を奏でているところまで想像できるのに、僕なんかが休日ゲームしていますなんて言ったら…。



「ちなみにHirumaさんはもともと音楽とかはなにかされていたんですか?」


「いやあそれが本当にやっていなくて…。たまに嘘だろって言われるんですけど本当にピアノも習っていませんし、高校生の頃に友達の影響でアコギを弾くようになってからですね。僕の音楽人生は。…もともと音楽自体だれより好きな子供ではあったとは思いますけど、勉強も普通くらいなので全然天才タイプとかではないです。」



 …へえ、そうなんだ…。こんな音楽センスある人絶対幼少期から音楽やってたタイプの人だと思ってた。


 …まあでもだいたいそんなのは本人が自覚していないだけで絶対天才だし。”Hiruma”だからできたんだ。絶対家も金持ちだし、その道に進む環境が整ってたんだろ。音楽の道に進むとかお金ないと無理だし、圧倒的陽キャっぽいし、クラスの人気ポジションだっただろうから人前に立つことも慣れていたんだろう。まあでもこうやって謙虚なのもHirumaにアンチが異常に少なくて、ファンが多い理由だよな…




「ではこれが最後の質問です。Hirumaさんはリスナーにどういったことを今後伝えていきたいですか?」



「…今までもこれからもここは変わりません。これをみているそこのあなたに、僕の曲を聞いてくれて歌ってくれているあなたに、夢を追いかける楽しさを伝えていきます。やらない理由なんて探せばいくつでもでてきます。そんな中“自分はこれが楽しいんだ”っていう唯一の“やる理由”を自分の心の中で見つけてもらえるように歌っていきます。そのうえで僕の音楽がみんなの勇気のちょっとした足しになればこれ以上うれしいことはありません。」








「………」


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