OneLoser
「「かんぱあああい!!」」
今日はマスターへの報告も兼ねてreveに夜、食べに行くことになった。
ついにバンド組んだのか、僕たち。
なんだか変な感じだ。
あのテレビの中のキラキラしたバンドマンたちの仲間入りを少しだけできたのかと思うと胸が弾き飛びそうだった。憧れのバンドマンの仲間入りだ…。
世界が途端にキラキラして見える。
どうしてもニヤニヤが止まらなくて少しトイレに駆け込んだ。洗面台についてる鏡を見るとそこには頬の筋肉が緩みに緩んでいる自分がいることに気が付いた。
慌てて両手で頬を持ち上げるが、バンドを組んだ事実を思い出すと結局口角がギュインと上がってしまう。もともと垂れ目なのに笑うともっと垂れ目になってしまう僕の目は今、もう転げ落ちそうなほど垂れている。
こんなおかしな自分、初めてだ。
トイレで見る自分の顔なんて、いつも嫌に火照っていたり、真っ青になっていたりして、どんな時だって表情筋は重力のまま下に垂れ下がっていた。なのに、今はもうほとんどの表情筋が重力に反して可笑しな顔になってる。そんな自分の顔を見て吹き出してしまう。
「ハハッ!…なんだこの変な顔!ハハハ!…はああおっかし!」
自分の顔を見て爆笑して涙が出てくるなんてな…。本当におかしくなってしまったのかもしれない。
ギィィ…とドアが開く音がしたのでそちらを見ると、そこには何かおかしい物を見るかのような表情のゆりと陽翔がいた。
「…お前、何してんの?…マジで頭イってんじゃね…?外までお前の笑い声聞こえてんだけど…」
「え、まって、はずかし」
「もう律おかしくなったんじゃない?ほら!もう今からバンド名とかこれからどうするかとか決めるんだから早く戻ってきて!」
ほら!といって二人に半ば強引に腕を引っ張られ、自分たちの卓に戻る。右腕を陽翔、左腕をゆりが引っ張るもんだからもうめちゃくちゃ歩きにくい。
なのに、なのに、なんだろうこの気持ち。すっごく、くすぐったい感じ。
「なあ!ゆり!コイツニヤニヤしてんだけど!!きもい!!」
「うわ、ガチじゃん…ねえ律どうしたの…」
「アハハハハハ!!むり!!!しぬ!!ハハハハハ!!」
ニヤニヤしてる僕の顔を見て本気で引いてる陽翔を見てツボってしまった。笑いすぎて足が止まりそうなところを無理矢理引っ張られているのに、全然嫌じゃないおかしな僕。
トイレから僕らの卓までのルートにマスターがいるキッチンがある。
「なんか楽しそうでええこっちゃ!」
そういってニカッと笑顔を見せてくれるから僕も最大の笑顔を見せた。
そして僕たちのバンド、“OneLoser”の物語が始まる。
ついに1シーズン目完結しました...。
といってもまだまだこの物語は、バンド「OneLoser」の物語は、続きます。
まだ彼らの物語は始まったばかりですから。
いつかの活動報告にも書きましたが
小説を書く上で、「律だったら何をいう?」「ゆりならどうする?」を常に考えることを大事にしています。
人間がアウトプットできるものはインプットしたものだけです。
でも小説家は誰かの人生の一部を描かないといけない。それは簡単そうで簡単ではない。
なぜなら私は律ではないし、ゆりでもない。
律もゆりも、アツたちだって私の操り人形じゃありません。
フィクションだけど彼らには彼らの人生があって、それを描かせてもらっているという感覚です。
たまについつい作品に「私」が出てきてしまうのですが
そんなこと律なら思わないな、考えないなと一旦おちついて考え直したりもしています。
そうやって試行錯誤したこの作品がひとまず区切りまで書き切れたこと、そしてたくさんの方の応援をいただけたこと、本当にうれしく思います。
これからもどうぞよろしくお願いいたします。
では、次の更新をお楽しみに。
陽向りお




