音符たち
彼女…桃花さんが言うには、今日組んでいたバンドでの練習があったがメンバー内でのトラブルが起こり、バンドをやめさせられたとのことだった。
聞くところによるとアツがリードギターの人とそもそも仲良くなく、今日の練習でリードの人がミスをしたことに対してアツがブチ切れ、喧嘩発生。
スタジオ内のギターアンプに刺していたシールドが喧嘩によってブツ!!と大きな音を鳴らして抜けてしまい、そのアンプが故障。
バンドのボーカルがスタジオのオーナーと仲が良かったことから弁償代は免れたがアツとリードの人は出禁を食らった。そしてその二人は必然的にバンドを辞めることになり、アツが辞めるならと桃花さんも一緒に辞めたそうだった。
「俺はミスったことにイライラしたんじゃねえんだよ。アイツ、音楽を馬鹿にしやがったんだ。俺もみんなも本気でやってるのにアイツは生半可な気持ちでギター弾いてやがった。それが何より許せなかったんだ。」
「私はそんな本気なアツの音楽が好きだから、アツが辞めるなら私も辞めようと思ったんです。」
なんだか彼らの絆の深さにどこか親近感を覚えた。音楽を通してお互いを尊重して尊敬して。
正直その理由を聞けば逆にアツのことを好きになるだろう。そんなに本気で音楽に向き合っているなんてとてもカッコイイじゃないか。多分彼女も彼のそういうところに惚れたんだろう。スタジオのアンプを壊すのはやばいけど。
しかし彼らの音楽をまだ聴いたことは無いがもうすでに分かる。まるであの不思議な日の音符たちのように、彼らを取り巻くように音符たちが彼らの周りをギュインギュインと踊っているから。
「じゃあ一回お互いの音楽を聞かせあう必要があるんじゃない?僕たちの音楽を聴いたら一緒にしたいと思ってもらえるかもしれないし。どう?律」
「……そうだよね。うん、そうしよう」
正直、律とマスターの前でしか音楽を披露したことがないし、こういう時に限ってあの飲み会のようなことになったらどうしようと思うけれど、これは避けては通れない道だった。
別に動画を見せればいいだけだとも思ったが今後一緒にやっていくなら早めにこの問題に衝突するべきだ。
二人にも納得してもらって来週、コンバスの移動は大変だからとゆりの実家に集まることになった。
ガチャ…キィィ…バダン。
「ふぅぅ。」




