百合と太陽と僕
誤解しないでほしい。アレは僕の発言じゃない。僕がこんなアツい事言えるわけないだろ。
そうだ。もう由来さえ“暑苦しい”から来てるんじゃないかと思わせるほどアツいコイツだ。
そういえば冷静に見るとめちゃくちゃ若いな、コイツ。短髪のいかにもドラムやっていそうな…そうだな野球部というよりはサッカー部の中のゴツイイケイケ系の雰囲気。彼の背中からは二本のスティックが見える。練習終わりか。
今までシンと冷たく張り詰めた糸がゆっくり溶けるようにゆっくり穏やかになっていっていたreveの空気はコイツの発言によって一瞬にして真夏のハワイのような陽気な雰囲気に変わった。
さっきまで萎れていた百合の花は急にハワイに追いやられたもんだから突然の季節の変化に戸惑いを帯びながらも少しずつ色を取り戻し、太陽に向かって花を咲かせようとしている。
「ハハハ!!いやあすまんかったすまんかったお前意外とアツいやつだったんだな!!ナヨナヨしたうぜえ奴かと思ってたわ!」
太陽は一瞬にして強引に季節を変えた。
彼があまりにも純粋に、そして豪快に笑うもんだからつられて表情が緩む。それは僕だけではなかった。ここにいる全員の雰囲気がガラッと変わったのを感じた。
僕は今とても心地よかった。
太陽は強引に、それでもって地球に温もりを永遠に与え続けている。その温もりがとても心地よかった。僕の心の奥の奥にある薄い飴細工が溶けていくのを感じる。
本能的に、感覚的に、これは言葉では説明できないけれど、でも僕はコイツと音楽をやりたいと思った。純粋にこの太陽の上で歌いたいと思ったんだ。
きっと僕とゆりに足らないのは“強引さ”だ。僕は流れに逆らうのがとても苦手で、そんでもってゆりは優しい。そんな僕たちに足りないものが、強引に季節を変え得るほどの圧倒的強引さとパワー。
「ハハハ!」と豪快に笑う彼を見て、思わず声をかけてしまった。流石に僕も30手前だ。ここで声かけないといけない、と勘が…未来の僕がそう訴えかける。
「音楽やろうっていうのは…どういうこと、かな?」
「ん?だってお前らその格好的に仕事してんだろ?そんなに音楽やりたいなら仕事なんか辞めちまえ!!ってこと!」
「わかった。そうしよう。ね、ゆり。」
そういって彼を見ると、彼は僕の言いたいことが分かっているのか、満足げに「だな」と一言返事をし、右口角を上げてお得意の悪い顔をした。
「ね、アツ。」
「ん?なんだ?それになんでその呼び方…」
「これからよろしく」
「え?え?どういう意味?え?」
そう戸惑う彼を横目にゆりと大爆笑する。すると隣に立つ凛とした彼女がコッソリと「アイツ馬鹿だからハッキリ言わないと多分理解できないですよ」と言ってきたので今度こそはっきり言った。
「一緒にバンドを組まない?…いや組もう!」




