僕だけ
「…あ、起きた!?大丈夫かよ!?」
「…んー?…」
ゆりのバカでかい声がズギッっと頭に響く。目をうっすらと開けるとそこは全くなじみのない部屋だった。何どこだ、ここ。
「いやあマジで、死んだのかと思ったわ、よかった」
「え、今何時?」
「深夜3時」
「まじか」
重い上半身をゆっくりあげる。ゆり、こんな時間まで起きてくれていた上にスーツ姿の僕にベッドまで貸してくれてたのか…。これは今度飯でもおごらないとな。
なにより僕は倒れたその瞬間の記憶は正直ないけど、あの不思議な体験の話をしたかった。
いろいろその時の話を聞くと、ゆり曰く、僕はあの浜辺で歌った後、何もないのに突然かたまって海の方を眺め始めたと思いきや、海に足をつけた後、不気味に笑って倒れたらしい。
つまりアレはゆりには見えていなかった…?僕だけ見えていた…?
「じゃあ海が奥から真っ白になっていったのも見てない?」
「…はぁ、マジ倒れて頭おかしくなってるわ。もう今日はベッド貸してやるからシャワー浴びてとっとと寝ろ。明日も仕事だぞ。」
「え、じゃああの少女は?あの今にも消えそうな。」
「はいはい、もういいから。それにそんな不気味な話、4時来る手前でしないでくれる?俺、ジェットコースターは行けるけどお化けは無理なんだよ、知ってるだろ」
「…………マジか。」
いや、マジか。どういうことだ、なぜ僕だけに見えていた?てかゆりの話によれば僕は確実に“見えていた”。つまりおかしいのはゆりなのか?いや、でもそもそもあんな意味わからないこと起きるわけない。僕がおかしいのか…?
『…ィサ……ァュ…ュ…………ェィ…ォ』
僕の鼓膜は確かに震えていた。間違いない。
なんだ、何が起こってる…。




