枯れた百合の花
「てめえ本当に頭いかれてんのか?あ?こいつがどんな思いで、こんな足震わせながら叫んだと思ってんだよ!求めてる言葉??は!?!?お前がこいつに投げかけた言葉はこの世に存在するすべての言葉の中で唯一“不正解”だ!!そんなのもわかんねえのかよ!」
「へ…?」
「お前みたいなやつが音楽をする資格ない。音楽ってのは求めてるものをあてずっぽうで投げかけるものじゃない。音楽は自分の強い想いを音と共に届けるもんだ。こいつは悩みに悩んで、でも答えが出てこなくて、でもあやふやな事言わなかったじゃねえか。わからないものは分からない。怖いものは怖い。でもやりたいんだ、って。めちゃくちゃ真っ直ぐ言ってたじゃねえか。これが音楽の本質だ。お前みたいに、適当なこと言ってその上大不正解。はっ調子乗ってんじゃねえ。そんなお前が奏でる音楽が誰かの心に届くわけがない。ちっ、しけた面しやがって。俺が断言してやる!!届かねえ!!」
ゆりの表情が次第に暗くなっていく。それでもプライドのせいか今にも下を向きそうな表情で彼を見ていた。
僕はどうすればいいのか分からなかった。
今まで僕だけが笑われたり、怒られたりすることはあったけど、その逆は無かった。
それくらい僕にとっても周りから見てもゆりは完璧だった。
こういうときに僕の立場は何を言うべきなんだ。何を言っても嫌味にとらえられる気がして何か言おうとしてはその声は音にならず、ゆっくり息を吐いた。
「ちょっ!アツ!なにやってんのよ!もう…すいません、大丈夫ですか?あの、クリーニング代は私たちの方でお支払いしますので…」
急いで僕たちの方に駆け寄ってきたのはボーイッシュなきれいな女性。彼女さんかな。
目の前にいるゆりはぼぅっとして一ミリも動かない。
アツと呼ばれていた僕の隣にいる男性はその女性に叱られていて、事の発端である僕は彼らの間であたふたしている。
「コイツはもう帰らせるので、クリーニング代が分かり次第こちらにご連絡ください」と何もやっていない女性が何度も謝りながら電話番号を乱雑に書かれたメモを僕に押し付けてアツを連れて出ていった。




