終わり
「りっちゃんどうした…」
「ッ…みんなが、楽しそうに……本気の目を僕に向けるから……僕も馬鹿になったんだ……将来のこと、未来、もう30になる!どうすんだ!?結婚は?仕事は?収入は??もう周りはドンドン結婚していってる!!僕らの年齢が考えるべきなのはソレだ!!夢?音楽をやりたい?そんなことじゃない!!もう学生じゃない!!いつまでが学生気分なんだ!!!………なのに…僕は今が一番楽しいぃ…ッ!!!音楽をずっとしていきたい!!もうこれだけをしていきたい!!もう他のことなんか考えてる時間さえ無駄に感じる!!……みんなの、みんなのせいだ…もう僕はおかしくなったんだ……もう戻れないよ……」
「律…」
店内には大勢のお客さんがいて、バイトの人だっているのに、僕は何してるんだろう。
今までこんなことなかったのに。
やっぱりおかしくなっている。
みんなひいてる。
そりゃそうだろう。
頭おかしい人がいると思われた。
もう…本当に恥ずかしい…。
いつの間にか立ち上がっていた自分に気が付く。それでも僕のちっぽけなプライドが座ることを許さなかった。無音が続く。聞こえるのは僕の荒々しい呼吸音だけだった。
「ごめん、俺が無意識で律に圧かけてたなら本当にごめん。本当にごめん。…律がそういうなら…ちょっと…なんていうんだろ……もう、…やめる?…、ごめん、律が求めてる言葉が、ちょっと俺わかんなくて……律が本当に、そんなに苦しんでるなら、…ちょっともうやめよう…。ごめん、俺がずっと律ともう一度音楽やりてえなって思ってたのを律に押し付けてたよな…うん、そうだよな、ごめん。やっぱ普通の会社員に戻るか。その方が律も、楽だろうし、…うん、ごめ…」
バシャッ!!…ガッシャン!!
「馬鹿かてめえ…馬鹿かてめえ!!!!!」
俯く僕の横に立つ新しい影。横を見ると僕よりも遥かに身長が高い男性が、ここにいる誰よりも怒った表情で立っていた。
そして彼の足元には割れたガラスの破片とコップの残骸…
そしてびしょ濡れのゆり…。




