現実と非現実
そこにあった数字は“56”。
0は一つもついていなかった。いいねも一つもついていなかった。
「「………」」
衝撃過ぎて声も出なかった。
「ぇ、ぇえ…まじ…」
「……ね……」
それからお互い何も話すことなく、飯を食って仕事に戻った。もちろん仕事に集中できるはずもなかった。
アレ?結構やばい世界に僕たちは入ってしまった感じ?そりゃあ簡単にバズるなんてそんなわけないとは頭の片隅に思っていたけど、でもそれでもワンチャンあるんじゃないかと思っていた。
なぜなら僕たちが投稿した動画には僕たちの思い出が詰まっているからだ。あの動画はその場限りの動画ではない。今までの学生時代からの思い出の延長戦である。それがまさかの100回再生も行かないなんて想像もしていなかった。
そもそも僕はSNSに疎いので、流行の言葉はゆりや会社の同僚に聞いて知っているレベルだからどう工夫をすれば伸びるのかも全く分かっていない。SNSをあまり見ない僕的には投稿した動画の完成度は素人にしてはレベルが高い動画のように見えていたが、まさかあのレベルでダメだということ?
そんなにレベルの高い世の中になってるのかと驚きつつ、僕の担当はSNSではなく仲間集めと作曲であることを思い出す。SNSの分からないことはとりあえずゆりに任せよう。僕は僕の仕事を一旦考えよう。
「蒼原くん!昨日ねすごいラッキーあったの!」
そう声をかけてきたのはいつも笑顔が素敵な堤さん。堤さんはいわゆる会社のマドンナ的存在。僕なんかが話しかけた時には部長から鋭い視線が届く。でも堤さんはこんな僕にも話しかけてきてくれる天使だ。憂鬱な会社の唯一の癒しである。
「どうしたんですか?」
「それがね~!昨日、人生で初めて自販機のルーレットが7777になったの!!すごくない!?追加でもう一本ゲットしたの!もうこれうれしすぎてみんなに自慢してるの~!」
「…めちゃくちゃすごいですね!!」
自販機のルーレットが7777?どこか聞き覚えがある。…そうだ僕が何かの日に願ったんだ。
堤さんに小さな幸せが訪れますように、ルーレット7777になりますようにって。
まさか。流石に偶然だろう…。うん、流石に偶然だと思うけど、気になって丸山さんのところに話しかけにいった。
「丸山さん!お疲れ様です。あの、本当に関係ない話なんですが…最近朝の電車でラッキーなことありませんでした?」
「ん?んん、そういえば、今日の朝いつもならすごい満員電車で息苦しいくらいなのに、たまたま僕の目の前の席が空いたんだよ。すごくない?ああ、あとこれは電車じゃないけど今さっき昼休憩にコンビニ行ったらポケットから1万円出てきたんだよな。今日は大分ツイてるわ。…てかそれがどうしたの?」




