孤独と味方
プツッ
ゆっくり目を開けるとそこにはゆりがいた。辺りは緑で囲まれていた。
...戻ってきたようだった。
「............ゆり、」
「...あー見終わった?」
「まって、どういう、」
「...はは、まぁ、どういうことだろうね?」
「まって、ゆり、」
「...はいはい、落ち着いて〜?」
まさかの最後のシーンはあそこで終わってしまった。
ようやく声が出せるようになったのに、上手く声が出せない。
ゆりが、ゆりがとても辛そうに、泣いてたのに、
「...律、聞いて。俺だってね、全然強くないよ。見たでしょ?」
彼は悲しそうに微笑みながら僕の目をしっかり見た。
「あれが俺だよ。弱っちいんだよ。律が思う凄い人なんかじゃないよ。でもね、律。俺、よわっちいけどさ、律見てるともうちょっと頑張ろうって思うんだよ。なんでだろうね、なんか要領悪くても、でも頑張ってることが伝わってくるからかな。俺も頑張ろうって思うんだよ。羨ましくなったりもするけど、でもそれは律有りきなんだよ。俺は律無しじゃ頑張れない。」
「…僕は、そんなにすごくないよ、僕見て頑張ろうなんて、そんなの出来る人じゃないよ、」
そう言った途端、あることに気がついた。そしてゆりの腰にもう一度腕を回した。今度はちゃんとあったかい。
そうか、そうだったんだ。
僕たち人間は永遠に孤独な存在なんだ。どんなに仲が良くても、それが家族でも兄弟でも、心の底は何を考えてるか分からない。分かりようがない。どんなに頑張って伝えたとしても、“言葉”を介した瞬間それはその人のフィルターにかかって伝わる。自分の思った通りに伝わることなんてない。だから人間って、僕も、ゆりだってめちゃくちゃ孤独なんだ。
僕だけじゃなかったんだ。
この疎外感は僕だけじゃなかったんだ。
みんな同じように孤独を感じてる。
でもそれを僕は、僕たちは分かっていなかった。
自分だけが疎外感を感じていて、自分だけが孤独なんだと思っていた。
だからずっと他人が羨ましかった。周りに人がいる他人が羨ましかった。
でもその他人もとても孤独だったんだ。みんな孤独だから孤独ではなさそうな人を見ては羨んでいた。
でも違う、僕たち人間は等しく孤独だったんだ。
自分のことをわかってくれる人なんて自分以外いないんだ。なのに人間は誰かに分かってもらおうとする。そうやって僕は苦しんでいたんだ。
でも違った。僕たちの最大の味方は自分自身だけだ。
他人ではない。
なのにそれを誰かに託そうとするから苦しむんだ。そうか、僕らは等しく孤独で、最大の味方は自分なんだ…。
それに気づいた瞬間、緑と赤のこの世界がフェードアウトし、あのおじいちゃんにであった交差点がフェードインしてきた。
今までの景色や音とは別世界で、車や人の声、信号の音も目に入る色もうるさい。すごく長い時間あそこにいたような感覚があり、このうるさい世界も懐かしく思うと愛情がわいてくる。
信号を渡った先にはマスターとおじいちゃんがいる。
空を確認するとまだ赤くなる前で、そんなにも時間は経っていないことを確認した。なぜか手をつないでいた僕たちはどちらからともなく手を離すと、信号が青であることを確認して僕たちはマスターたちの元へと向かった。




