2章 27 お告げ
とりあえず4人を相手にする事になったけど、どうやらコイツら気功が使えないみたいだな。俺を囲んで構えている今も気功の変化はさほど感じない
となるとそこまで警戒する必要はないけど、背後に回られると見えないから厄介・・・いや待てよ・・・ここまで近いとはっきり相手の気功が分かる。使えなくても人体には気功が流れてるし、殺気立てば否応にも濃くなる
手に武器を持ってないし、気功が使えないなら・・・少しやってみるか
4人に囲まれても冷静でいられるのは日々の鍛錬のおかげか・・・傍から見たらただのイジメだけどな
視線を左右に動かし目で牽制する。後ろに回った奴は気功を読み取る事でどう動くか警戒して・・・やっぱり後ろの奴が先に動いた!
俺は振り向き後ろから襲いかかってきた奴に・・・あれ?どうしよう・・・えっと・・・待て待て痛い痛い!
何のプランもなく振り向いたら頭が真っ白になり殴られた。その後他の連中も突っ込んで来てボカスカ殴る蹴る・・・たったの数ヶ月で強くなれれば苦労しないってか・・・まあ、そりゃあそうだ・・・とりあえず亀のように身体を丸めて防御を固めるが、容赦なく降り注ぐ拳と足・・・いい加減ムカついてきたな
「がはっ!?」
適当に空圧拳を放ったら誰かに当たった
その瞬間残りの3人が警戒して飛び退くとようやく攻撃の手が止んだ
身体中が痛い・・・骨も折れてるかも・・・ある程度気功で防いだつもりだが・・・痛い・・・
「・・・ホーリーヒール」
ヒールでも良さそうだが、痛かったので必殺ホーリーヒールを自分にかける、傷はあれよあれよの内に治り瞬く間に全快・・・空圧拳で打たれた腹を抱えて屈む奴と飛び退いた3人が目を見開いて驚いていた。さっき王様の時に見せただろうに・・・
「こっからが本番だ!もう俺の身体に触れる事はないと思え!」
逆に言えば触れないで下さい!痛いから!
「誰一人として殺すなよ!ローブ!」
誰がローブだ!・・・って、殺さないのか?いや、自分で裁きたいとかそんな感じか?手出し無用とか最初は言ってたのに、いざ手伝うとなると注文の多い野郎だ・・・仕方ない・・・
「不可抗力で死んだらごめんな!」
一応王様の言い付け通り殺さないように手加減する
4人同時に空圧拳の連打をお見舞い・・・反撃する間も与えずに気絶するまで続けた
初めからこうしとけば良かった・・・最後の一人が膝から崩れ落ち倒れると一息ついて王様と無口の様子を確認する
戦いは一進一退・・・やや王様が不利か?王様が日頃どんな生活をしてるか知らないが、専門である武術家とあれだけ戦えるなら大したもんじゃないかな・・・さて・・・
「邪魔をしたらただじゃおかないぞ!そこで見ておけ!俺が勝つ様をな!」
死に様なら見れそうだけど・・・
王様は少し戦いづらそうだ・・・波動派の気功は相手に触れて気功を流す事によりダメージを与えるみたいだから自ずと攻撃しようとすると触れられる可能性が高くなる。俺みたいに離れて空圧拳連打ってのが1番楽かも
王様の強さはよく分からないけど、遠距離からの攻撃手段は無さそうだ
大体王様が間合いを詰め攻撃を仕掛け、無口が王様に触れようとすると王様が離れる・・・その繰り返し
無口は迎え撃つだけの分体力の消耗は少ない。方や王様は元気に突進して行くものだから息も切れ切れだ
攻略の糸口が見えないまま繰り返される攻防。最初は格闘技を生で観戦している感覚だったが正直飽きてきた。さっさと終わらせてくれないかな・・・
「チッ・・・掴みに来るだけか?もっと面白味のある攻めをせんと客に飽きられてるぞ?」
「・・・」
さすが無口。王様の煽りなんてなんのその
「つまらんな・・・もう終わりにしよう」
「!?」
一瞬王様を見失った・・・気付いたら無口の横に移動していた王様。確か・・・縮地?気功を爆発させて目にも止まらない速さで移動する・・・俺がコクウに使った時は通じなかったけど、無口には有効だったらしい。驚愕の表情をする無口・・・その左頬に王様の拳がキレイに入った
吹き飛ぶ無口に逃がさんとばかりに追い討ちをかける王様。だけど無口はそれを待ってましたと言わんばかりに両手を広げ王様に抱きついた
「くっ!しまっ・・・」
「死ね」
王様の身体が一瞬震える。そして崩れ落ちる王様・・・死んだか?
「ってえなあ!!」
「グハッ!」
膝が地面に着く前にクンと起き上がると右腕を突き上げた
不意をつかれた形となった無口は顎に王様の拳を受けて吹き飛んだ。あれは痛い
王様は息を大きく吐くとそのまま落ちて来た無口に拳を激しく打ち続ける
連打連打連打の嵐にとっくに気を失った無口に最後と言わんばかりの一撃・・・無口は壊れた人形のように飛んで行き地面に倒れた
「スー・・・フウ・・・」
王様なんだからスタイリッシュに決めるかと思いきやかなり強引に決めたな。深呼吸を終えると王様はこちらに振り向き手招きする
──────かかって来い、と
めんどい!非常に面倒臭い!呆れて顎が外れかけたわ!
「巻き込んでしまい誠に申し訳ありませんって言えや!」
「勝手に侵入してくるのが悪い!身体が暖まってきたところだ・・・来ないならこちらから行くぞ!」
言うが早いか離れていたはずの王様が目の前に!
下から突き上げてくる拳を腕で受けてそのまま念動力で身体を浮かせて上空へと逃げた
「卑怯だぞ!逃げんな!」
「うっさい!何が卑怯だボケナス!それとも何か?手加減してくれとでも言うのか?」
「・・・上等だ・・・そこで待ってろ」
王様が飛び上がった俺を睨み付け、屈んだ瞬間に嫌な予感がした
飛び上がる気満々の王様に向けて念動力を発動・・・何とか押さえ付けに成功する
「くぉら!なんだこりゃ!?さっさと解け!」
解いたら飛んで来るだろうが!誰が解くか!
上空から押さえ込む俺と飛び上がろうとする王様
しばらく膠着状態が続くと先に王様が折れた
「あー!もう!何なんだよお前は!」
地面に腰を落とし喚く王様・・・ただの駄々っ子って言うか・・・ガキ大将って言うか・・・とりあえず・・・
「俺の勝ちだな」
「負けてねえ!」
コイツだけは・・・首を刎ねるまで認めない気がする・・・
地上へと降りながら今回のNTB作戦は失敗に終わったと確信した。また別の作戦を考えないと・・・まあ今回は王様の人となりが分かっただけでも良しとするか・・・
「・・・そろそろそのフードを外したらどうだ?」
地上に降りた俺に王様はフードで隠した顔を覗き込むようにして言い放つ。外せる訳ないだろ
「外さぬか・・・ならばこっちは勝手にお前の正体を探るとしよう。と言っても既にほぼ正体は分かっている」
えっ?・・・いや、はったりか?俺の反応を見て新たに情報を得ようとカマをかけてるのかも・・・
「先ず呼び方・・・俺を呼ぶ時は大体国王様と呼ぶ者がほとんどだ。それが何故かお前は王様と呼ぶ・・・その時点で他国の者の可能性が高い」
「こ、国王様」
「今更遅い・・・で、次に魔法を使える・・・これは自国の者でも使える者は居ると思うが魔法の扱いに慣れすぎている。我が国でそこまで慣れるほど使用出来るとは思えん」
「・・・」
「そう言えばこんな報告が上がってきていた。ハモト村で流拳派と螺拳派が対抗試合を行い流拳派が勝利・・・その後何者かに螺拳派の者が皆殺しにあったと・・・目撃情報ではローブを着た男だとか・・・」
「・・・」
「偶然とは怖いものだな・・・その流拳派と螺拳派の試合の審判は今回警護に来ている指拳派のユン・・・」
エイ!
「あだっ!・・・何をする!?」
念動力デコピンを王様に食らわせた
ノータリンと思いきやズバズバ当てるんじゃねえよ・・・このままだとユン達に迷惑がかかる・・・ここは一旦・・・
「待て!正体を見せろ!」
「・・・やだね。俺にメリットはない」
正体を見せなきゃ大丈夫・・・王様だって確証は無いはずだ・・・シラを切り通せるはず・・・
「・・・魔法の使用を許可すると言ってもか?」
「はあ!?お前あれだけ拒否ってたじゃねえか!嘘つけ!」
「嘘ではない。国を憂うなど上辺だけの言葉に心動かされなかっただけ。お前の正体の方が数倍心動かされる・・・過去の因縁が吹き飛ぶ程にな」
無茶苦茶だな、この王様。それだけ自分に正直に生きてるって事か?・・・見せるか?・・・見せてもし王様が裏切ったら指拳派のみんなに迷惑がかかる・・・でもこんなチャンスは二度とないかも・・・ユン・・・ヤクモ・・・
俺が意を決してローブのフードを外すと王様は目を細めて見つめてくる。まるで全てを見透かそうとするように
「ほう・・・存外弱そうだな」
このっ!気にしてる事をズケズケと!
「・・・メイザーニクス共和国から来たアタルだ。これで満足か?」
「まだだ。あの力の正体はなんだ?」
「はあ?なんでそこまで・・・」
「お前の見た目や名前などどうでもいい。上辺だけの情報で俺が納得するとでも?」
知らねえよ!
あの力・・・念動力の事だよな・・・おいそれと話す事は出来ないけど、それだとこの王様は納得しなさそうだし・・・あー、くそっ
「この力は・・・」
もしコイツが超能力に興味を持ちあっちの世界みたいになるなら・・・消すか・・・
「おい・・・その殺気はしまえ。もうよい・・・戦って感じた方が楽しめそうだ」
「・・・さっきの続きをやるのか?」
「いや、今はもう満足だ。いずれ・・・な」
勝手な奴だ・・・あっ!
「おい、王様!そしたら魔法の使用は?」
「・・・どうせいずれは魔法なしでは難しいと思っていた。いい機会だ・・・すぐに使えるようにしてやる。まあ法の整備は必要だろうが・・・それは俺の仕事じゃないしな。あと・・・王様と呼ぶのはやめい・・・シュラという歴とした名がある」
「なんか軽いな・・・魔法なしでは何が難しいんだ?」
「お前の・・・アタルの知るところではない・・・そんな事よりも良いか!今回の続きは必ず・・・忘れるなよ!」
「へいへい・・・魔法の使用を許可してくれたらな。もし許可しなかったら・・・試合じゃなくて暗殺に行ってやる」
「・・・それも楽しそうだな」
「おい・・・とにかく頼んだぞ、シュラ」
「フン・・・約束は違えぬ。むっ?やっと起きたか」
気が付くと波動派の連中が一人また一人とフラフラになりながら起き上がる。最後に無口が起きるとシュラはニヤリと笑った
「今宵は楽しめたぞ!また来るがいい!」
え?
「・・・」
「どうした?さっさと去らぬか。それとも続きを所望か?次は・・・ないぞ?」
シュラから殺気が放たれると無口はゴクリと唾を飲み込み撤退を指示した
5人全員が闇夜に消えるとシュラは満足気な表情でこちらに振り返る
「いいのか?逃がして」
「構わん。もし仮に捕らえたとしたら有無も言わさず一族郎党皆殺し・・・が、それだと背後にいる奴等まで届かぬ可能性が高い」
「背後?」
「波動派からは主義主張が感じられぬ・・・ただ言われたから殺しに来ただけの使いっ走りよ・・・彼等を処分した所でトカゲのしっぽ切りされて終い・・・やるならば元を絶たねばつまらん」
波動派を裏で操ってる奴等がいると?だからわざと泳がせたのか・・・
「その元に心当たりは?」
「さあな。恨みつらみか、はたまたただの国盗りか・・・少しは楽しめるといいのだがな」
命狙われてるのに嬉しそうに言うシュラ・・・マゾか!
「精々楽しんでくれ・・・魔法の件・・・よろしくな」
「・・・暗殺か・・・」
「おい!」
確かに許可しなかったら暗殺すると言ったけど!なんでそれを楽しそうに待とうとするんだ・・・
「分かった分かった!そう睨むな・・・必ずや魔法の使用を許可すると約束しよう・・・何せお告げだからな」
「?・・・まあいいや。じゃ、俺はこれで」
「またいつでも来い!歓迎するぞ!」
遠慮しときます
念動力を使い身体を浮かせると一気に上空へと飛び上がる。そして人目につかないよう雲の上まで飛び上がると人気のない場所まで飛び去った──────
慰霊碑より戻って来たシュラに気付き、スザクはほっと胸を撫で下ろす。四方を固めているので襲われる心配よりも前回のように短い時間で戻って来なかった事への安堵だった
約束通り一時間を越えた事に満足し頭を下げて出迎えると予想外の言葉が耳に入ってくる
「今宵の語り合いは非常に有意義であった。お告げをもらったぞ・・・魔法を解禁せよ・・・とな」
「それはそれは・・・は?」
スザクは頭を上げシュラを見る。耳を疑う言葉に真意を問いただそうとするが、シュラは構わず歩き続けた
「国王様!い、今何と!?」
「耳が遠くなったか?スザク・・・慰霊碑に眠る亡霊からのお告げだ。過去に囚われず魔法を解禁せよ・・・だ」
シュラは笑いスザクは青ざめる
シューリー国にとって激動の時代の幕開けだった──────




