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僕が目をさますと、焚き火は消え、黒く焼け焦げた木だけが残っていた。
「おはよう」
どうやら、ユキは僕よりも早く目を覚ましていたらしい。丁寧に毛布をたたんで置いてあった。ティムの姿は見当たらない。
「気分はどう?」
「まあ、良いとは言えないけど悪いとも言えない」
「つまり、普通ということ」
ユキは、僕に指を指して言った。
「そのとおり」
僕は、ユキに向かってOKサインを出して答えた。
昨日の僕は激しく動き回った。気色の悪い緑色の生物を、倒しに倒しまくったからだ。おかげで身体中が筋肉痛に苛まれている。いくら体を鍛えようとも、筋肉痛とは永遠におさらばすることはできなさそうだ。
僕は、軽くのびをして、起き上がった。そして、かぶっていた毛布を綺麗にたたんで、ユキの毛布の上に重ねて置いた。
「ありがとう」
ユキは、毛布を置いたことについてお礼を言ってきた。たぶん、僕が片付けなかったら、彼女が片付けるつもりだったのだろう。なんとも気の利く女性である。僕は、少しだけ関心してしまった。こんな非常事態であるというのに、ユキはどこまでも優しいのである。
「ちょっと、外出てくるね」
「わかったわ」
僕は、倉庫のドアを開けて外へと出た。
外の気温は寒くなかったが、どうしてか霧が少しだけ発生している。
地面にもくもくと煙のように霧が充満している。幻想的な風景といえば幻想的かもしれない。
僕は、その霧の海の上を歩いた。
しばらく、特に当てもなく散歩をしていると、ティムを見つけた。ティムは、高いところに座って遠くを見ているようだった。
「ティム」
僕は、彼を呼んだ。彼は、僕の方を向いた。
「お目覚めか。相当疲れていたみたいだな。君が一番最後だ」
「言われなくてもわかってるよ」
僕は、彼の言葉を茶化すように言った。
「ところで、何をしているんだ。遠くでも見て」
僕は、彼のしていることが気になった。
「監視だ。どうもこの霧が気になるんだ」
「この地面のこと?」
「そうだ」
ティムは、高いところから、降りて僕の方へと近づいてきた。うまいこと周りの屋根を駆使して、僕の方へと来た。そして、彼は煙の中へと消えていった(ティムの四足歩行時の体長では隠れてしまうようだった)
僕はその姿に思わず笑いが出た。なぜなら、ティムが一瞬消えてしまったように見えたからだ。
「い、息はできるのかい」
僕は、まだ笑いが少しだけ出てしまっていた。ティムは、僕の足に猫パンチをお見舞いしてきた。
「笑うんじゃない。好きでこんなことしているわけじゃないんだ。息は出来ているから安心しろ」
「ご、ごめんよ」
僕とティムが少しだけ戯れていると、遠くの方から見知らぬ影が近づいてくるのが見えた。
ティムは、すぐに尻尾を立てて反応し僕にいった。
「何かくるぞ」
僕は武器になるようなものは持っていなかった。散歩のつもりで来ただけだったから、手ぶらだ。
しばらくして、見知らぬ影も、次第に大きくなっていき、目に見える位置まで来ていた。
「あれは……」
僕は、すぐにわかった。昨日、切りにまくった奴らである。まだいたのか。
「ティム!大変だ。またあいつらだ」
「わかっている。カク、武器を持ってくるんだ」
「わ、わかった!ティムも安全な場所に居て!」
僕は、急いで倉庫に走った。きっと、ユキは何も知らずに身の回りを整理しているにちがいない。
「ユキ!大変だ。またあいつらが現れた」
ユキは、「それは大変」と声を出し、急いで自分のステッキをカバンの中から取り出した。
「君は、この中に居て。僕とティムでなんとかする」
「カク、体は本当に平気なの?大分疲れてたでしょ」
ユキは、僕の肩に手をかけて言った。
「大丈夫。戦えるのは僕しかいない。こんなことになるんだったらヴィクターを誘っておくべきだったよ」
今頃ヴィクターはあのショッピングモールでのんびりしているのだろうか。
僕は、ユキの手を肩から外し、剣を手に持った。
「とにかく、ここにいて。すぐに戻ってくる」
僕は、また走って元の場所に戻った。
倉庫と倉庫の間から、緑色の気色の悪い生物たちが押し寄せていた。僕は、誤算だった。たかだか10匹もいないものだと思っていたからだ。10匹くらいだったなんとかなると思っていたが、目の前には50体はいるだろう。一体誰がこんな生物をここに引き寄せているのだろうか。
「カク!」
霧の中からティムの声がした。
「ティム。どうしよう。数がハンパないよ。あんなにはさすがに無理かもしれない」
「だろうな。一旦倉庫に戻るしかない。ただ、倉庫に戻ってもあれだけの数が押し寄せたら……」
予想外の万事休すであった。気持ちの良い朝を迎えたというのに、気がつけば絶体絶命のピンチだった。
僕とティムが立っている位置の後ろから、誰かが歩いていくるような足音が聞こえてきた。
スニーカーというよりも、ブーツのようなものを履いている音だ。
僕は、とっさに後ろを振り返った。
そこには僕よりも年齢が少しだけ高いくらいの男の子が立っていた。
腕には、見慣れないブレスレット。ブレスレットをつけている反対の手には、パスケースくらいのサイズの容器を持っている。
男の子は、黙って僕らのほうへと歩いて近づいてきた。




