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この公園は、こんなにも広かったのかと驚いた。
予備校に通っている時はコンビニまでの最短ルートを通っているから、それなりに人通りに多いところを通っていたし、こんな奥深くまで行こうと思ったことはなかった。勉強に飽きても、人通りの多いところにあるベンチに少しだけ腰掛けて、緑を眺めているくらいだった。
わかってはいたことではあったが、目の前にさきほどの不審者が俺の前に現れた。
相変わらず、上半身は裸で、筋肉質なボディを余すことなく披露している。寒くないのだろうかと思ったが、筋肉質な人は、代謝が良いから冬でも寒くないと聞いたことがある。(小学生の頃、真冬にTシャツ一枚で学校に登校してきた猛者がいたが、アレはきっと別の類であろう)
「モウ、逃ゲラレナイゾ」
男は、鋭い形相で俺を睨む。
俺は、今後の大学の受験日程を考えていた。あの試験の前は、これをやって、あの試験の前ではこれをやろう。昨年と違って学んだことは、準備が大切であるということである。試験の前の準備が、本番の合否を分けるということだ。予備校の先生は、勉強不足の受講生に対して「万が一だ。試験は受けてみないければ最後までわからない。だから、最後まで諦めるな」と気休めを言う。しかし、そんなことはありえない(全部は否定しないが)。俺は、本試験で受けている自分を想像し、この問題がきたらこう、この問題がきたら捨てると言ったデモンストレーションをひたすら繰り返してきた。そして、今もそのことを考えている。
「ドウシタ。怖気ヅイタカ」
「いや……」
俺は、男の方を見た。
頭の中を、違うことでいっぱいに満たすことによって、恐怖感というのは失われ、少しだけ冷静になることができた。
俺は、冷静になった瞬間にさきほどの老人のことを思い出す。そして、ポケットにしまったブレスレットと、パスケースのような容れ物を取り出した。
「かざすとかなんとか……」
男は、ゆっくりと俺の方へと近づいてきた。ミシミシと地面に置いている枝を踏みながら歩くその姿は、とても威圧感のある姿だった。
俺は、老人に言われたことを実行した。
ブレスレットを右腕にはめ、左手で容れ物を持った。そして、目の間で十字を描くようにして、ブレスレットに容れ物をかざした。
「ソロソロ、終ワリニシヨウ」
男は、飛び上がり、俺の方へと急降下してきた。こんなことが日常で起こるとは思ってもみなかった。普通に大学受験のことだけ考えたかっただけなのに。
俺の体は、光に包まれ、気がつくと、へんてこなスーツを身にまとっていた。
こういうのは、日曜日の朝に見たことがある光景である。
何かの間違いかと思い、身体中を両手で探った。この世の物質ではない「何か」で、できたスーツであった。
「シネェエエエ」
男が、拳を俺の方に向かって突き刺した。俺は、身体中を調べるのに精一杯だったため、顔面に拳が直撃し、茂みにそのまま突っ込んだ。
驚いたことに、若干の痛さはあったものの、体はすこぶる快調でまだまだ動けそうであった。
自分の体を見たところ、黒色と赤色を基調としたスーツで、腰に【小さな銃】と【拳に装着するであろう何か】が備わっているのを確認した。
そして俺は、重たい腰をあげ、反撃することを決意した。
「とっとと終わらせて、午後から勉強を再開しよう」
茂みの方へと男がやってきた。
男は、俺に飛びかかり、パンチからの2段蹴りのコンビネーションを放ってきた。
俺は、それをスイスイと避け、蹴りのモーション途中の男に、腰の銃を放った(体が勝手に反応した。そんな練習は積んだ覚えはなかったが)
男は、そのまま吹っ飛ばされ、尻餅をついた。
そして、よろよろと男は立ち上がる。男は一瞬何にが起こったのか理解ができていないようだ。
俺は、拳に装着するであろう何かを、拳に装着し、パンチを放った。
男は、そのまま石になり砕け散った。どうして石になるのかはわからないが、命が終えると石になるのかもしれない。普通の人間ではないのだろうと俺は思った。
俺は、変身の解き方がイマイチわからなかったので、適当に腕のブレスレットをこすってみた。
すると、一瞬にして俺は元の冴えない浪人生に戻った。摩訶不思議にもほどがある。
洋服についた葉っぱやら、土を振り落として俺は石になり砕け散った男を見た。顔を見る限り、人にしか見えない。しかし、表情は人間を超えた何かのようにも見えた。
俺は、とりあえずコンビニでも寄ろうと思った。こんな意味不明なこと今後起こらないことを祈りつつ。




