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ユキとティムは、森林の奥に一つの建物を見つけた。この場所が植物園のような場所であるから、管理室といったところだろうとティムは思った。ユキは、唾をごくりと飲んだ。
「いくぞ」
「ちょっと待って」
ユキは、ティムを止めた。
「どうした」
ティムは、振り返ってユキの方を見た。
「ここにカクがいるのかしら。本当にこっちの道に来たの?」
ティムは、少しだけ考えた。確かに反対の方向へ行ったかもしれない。しかし、先ほどまで血痕がたくさん地面についていた。俺らはその血を頼りにここまで来た。確かに、途中で血は途切れ、この施設周辺には血のあとはなかったが。
「怖いのか」
「怖いわけじゃないわ。ただ、本当にカクはここにいるのかなって」
「行くぞ」
ティムは、ユキの話を聞かずに建物の中へと入っていった。ユキは「もう」と愚痴をこぼして、揺れる尻尾の後ろについていった。
「だ、大丈夫ですか」
男は両膝の上に両手を置いて立ち止まったので、僕は心配して声をかけた。
「ちょっと、気が遠くなりそうだ。でも血は止まったし。俺らの街まであと少しだ」
「その件なんですけど、僕には仲間がいるんです。ちょっと待たせていて、もしかしたら、ずっとあの場所で僕の帰りを待ち続けているかもしれない」
「仲間か」
「はい」
男は、呼吸を整えて立ちあがった。
「つまり、その仲間の元へ帰りたいということか」
「帰りたいというか、心配なのでもどりたいというか。ごめんなさい」
「いや、良いんだ。俺も助けてくれて助かったよ。ここまで無事に来れたのは君のおかげだ。さっき教えたことは、しっかりと守るんだぞ」
僕は、この施設に入る途中、彼からさっきの気色の悪い緑色の生物について、少しだけ教えてもらった。あの生物だけには近づかないほうが良いと。そして……
「はい。じゃあ、僕戻ります。お元気で」
「ああ」
男は、ゆっくりとした足取りで、施設の非常口から出ていった。ドアを開けた瞬間、建物内に光が溢れて目が痛くなるような明るさが注いだ。
僕は、ティムとユキが待つあの場所に戻らなければならない。きっと膝を抱えて首を長くして待っているに違いない。ユキが唇をとんがらせて地面に芸術的な絵画を描いている姿が容易に想像できた。
幸せな妄想をしながら、元の場所に戻るために歩み始めた瞬間だった。施設内に悲鳴が響いた。女性ではない。男性の声だ。
僕は、後ろを振り返った。
すると先ほどまでの一緒にいた男が出ていった扉のドアノブが、ガタガタと揺れている。
開けようとしているのだろうか。回せば開くはずであるが、ガタガタと揺らしている本人は開け方を理解していないらしい。
しばらく、ガタガタと揺れていたが、ピタリと止まった。そして、勢い良く何かが突進をし、大きな音ともに扉は前に倒れた。
「シャアァア」
ティムは、耳をピクリと動かし、何かの声を感じ取った。
「何かいるぞ」
「ビビらせないでよ」
ユキは、声を震わせながら返事をした。
「何がいるの?」
「わからない」
「もぉ、なんなのよ!」
ユキは、イライラしながらカバンから伸縮自在のステッキを取り出した。ユキは感触を確かめるように、何回かその場で素振りをした。
ティムとユキは、走って声のするほうへと向かった。もしかしたら、カクがいるかもしれないと思った。彼に何か危険があったのではないかとユキは心配でしかたがなかった。
しばらくして、ティムとユキの前に緑色の気色の悪い生物が現れた。筋肉質なボディと昆虫のような頭。生物ではありそうではあるが、どう考えても人には見えなかった。
「これ、何よ。気持ち悪い!」
ユキは、ティムに向かって叫ぶ。
「こんなやつ知らないぞ。なんなんだ一体……」
「ユキ!ティム!」
彼らにとって馴染みのある声が聞こえてきた。
二人は緑色の気色悪い物体と対峙していたが、その沈黙を破るようにしてカクは、持っている剣を振りかぶり、目の前の生物の首をはねた。可愛らしい声とともにその生物は絶命した。
「無事!?ユキ!ティム!」
カクの目の前に現れた二人は無味無臭の緑色のドロドロした液体を全身に被り立ち尽くしていた。
ユキは、体についた液体を手でつかんでは床に落とした。
「最低」
ユキは、低い声で吐き捨てるように言った。
ティムは、体をぶるぶると震わせて緑色の液体を落とそうとしたが、ほとんど落ちず、体にまとわりついていた。
彼らの前で緑色の生物が灰と化すなか、カクは二人の元へ歩み寄った。
「ずっとあの場所で待っているかと思って心配だったんだ」
「ちょっと、触らないで」
ユキは、緑色の液体でドロドロとなった両手を見て少しだけ拒絶した。
「ああ、ごめん」
カクは、両手をズボンの裾で拭いた。しかし、ズボンの裾自体も少しだけ汚れていたため、あまり手はキレイにならなかった。
そして、僕は今まであったことを彼らにこと細かく話した。




