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「結構いいところだろ?」
彼は、両手を広げてアピールをしている。僕は「いいところだね」と返事をした。
僕は、この世界に来てから不思議な体験ばかりをしている。現実世界にいたらきっとこんな生活できなかったに違いない。
「君は、どうして生きているのかって考えたことがあるかい?」
ヴィクタはー急に難しそうな話を僕にふった。
「いや、あんまり。毎日毎日決められた時間に起きて、決められた時間に学校に行ってた。毎日が同じことの繰り返しで。しかもそれをこなすのに精一杯だったから僕は全然考えたことがなかったよ」
僕は、昔を思い出す。生きていることに意味があるなんて考えたことがない。
「そうなんだ。なかなか君は恵まれていたんだね」
彼の返事の意味がよくわからなかった。恵まれている?僕が?
「君は、恵まれている。僕なんて、毎日毎日エディと一緒にその日暮らしさ。いまでこそ、こんな大きな場所に住んでいるさ。それにきっとエディが僕のために用意してくれたと今は思える。あの日々が辛かったからね」
僕は彼が話してくれた昔話を思い出した。想像を絶するような生活だったに違いない。
「そういえば、エディに刺したあのナイフはなんだったの?それ以外の攻撃は彼に全く効いてなかったじゃん」
彼は、エディに向かって小さなナイフを刺していた。あれが原因で彼の命は絶命した。
「ん?ああ、あのナイフか。君はよく見ているね。感心感心」
ヴィクタはー、小さな拍手をした。
「あれは、二人でむかーし雑貨屋に忍び込んで盗みをしたことがあったんだ。その時に二人でお揃いのナイフを一つずつ盗んだんだ。そして、そのナイフ1本で僕らは生活をした。厳密には2本か。動物を狩って、捌くのに使ったり。いろいろな用途に使えたよ。雑貨屋の店主にはもうしわけなかったけれど、あのナイフで僕は命をつなぐことができた」
ヴィクターは僕の方をじっと見つめた。
「さっきの話に戻るけれど、僕は生きている意味はあると思っている。必死にこの年まで生きた。僕が生きる意味は、きっとある」
「例えば?」
「ん?わからないよー」
ヴィクターは真剣な表情から一変して笑い始めた。喜怒哀楽が激しい人間である(僕はあまり変化はほうの人間である)。僕は、座っていたソファーに深く座りなおした。あまり反発のないソファーだったが、腰に負担がかからず座りやすかった。
「でも、生きる意味は神様の類が与えてくれるものじゃないよね。自分で見つけるんだ」
僕は、つぶやいた。
「自分で見つけて、自分で考えて。それが僕の生きる理由なんだって。誰かに与えられた意味なんて大したことはない。自分で決めるんだ」
ヴィクターは、サムズアップ僕にした(つまり、親指を立てて合図をすることである)
「そうかもしれないね」
「はいはいお二人さん」
ユキが僕らの話の間を割って入った。
「これからどうするの?」
僕は、「あ、元の世界に帰ります」と軽い口を叩きたいところであったが無理であった。帰り方がわからないのである。しかし、さすがに帰らないと親が心配しているのではないかという気持ちが僕の中で生まれつつあった。
「僕は、あの王様とかいうやつを探すよぉ」
ヴィクターは右手を上げて礼儀正しく返事をした。
「カクは?」
ユキは僕の方を見た。さすがに冗談を言える雰囲気ではない。
「とりあえず、僕は家が無いから家探しかな」
結局冗談を言った。しかし、事実は事実である。家が無い。
「ここに住むかい?」
ヴィクター的には「部屋ならたくさんあるぜ」という雰囲気であったが、僕は遠慮した。なぜならこんな広いところに住むなんて怖すぎるからだ。
「なら、団地区域にすれば?あそこなら、人はたくさんはいないけれど、ここよりはいるし、それに空き部屋もたくさんあったわよ」
僕は、ユキの案に賛成した。あそこなら、ユキにもティムにもすぐに会えそうだ。
「団地に住みたいなぁ」
ユキは、嬉しそうに「じゃあ、住もう!」と言った。
「え、ユキの部屋?」
「わ、わたしの部屋!?じ、冗談はよしなさい。大人をからかうのはほどほどにしなさいね」
ユキは、顔を真っ赤にしていった。
「別の部屋に決まってるでしょ」
ユキは、ティムを抱えてそのまま投げた。ティムは彼女のストレス発散に使われてしまった。しかし、そこは腐っても猫である。彼は、綺麗に空中で宙返りをして、床に着地した。それを見たヴィクターは拍手をしていた。
「君たちは、僕の王様探しを手伝ってくれないのかい」
拍手をしていた彼は僕らの方を切ない眼差しで見つめていた。
「いや、手伝うよ。でもすぐに見つかりそうもない気がするんだ。しばらく、休憩をしよう。もちろん、今のままの僕じゃ君の足手まといになるのは確実だから、ちょっとだけ剣の振り方とかを練習しておく」
「わたしもそうするわ。いつか絶対あの赤いピエロをこの手で倒さないと気が済まないもの」
ユキは、しれっと恐ろしい言葉を発した。
「とういうわけだ。ヴィクター。俺らはしばらく団地区域に退散するとするよ。君も少し休んだほうがいい。疲れてなさそうではあるが、かなり疲れているんじゃないか」
ティムは、ヴィクターに声をかけた。
「ばれたか。やっぱり鋭いねぇ。ブラックキャットくん」
こうして、僕の異世界の生活は始まりを告げた。
しかし、両親のことが本当に気になった。警察に捜索願いを出して、何日以上たったから死亡扱いとなり、僕が現実世界にもどったら綺麗なお墓ができているんじゃないかと不安になった。
神様、僕はまだ生きてます。
そして、いつか必ず戻りますので、お墓の準備だけは勘弁してください。
よろしくお願いいたします。




