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「あいつって、あの世界の神様か」

「世界の王だ」

 ヴィクターは、思い出したらしい。あの地下での会話で忘れ去っていた部分を。そして、僕の出した答えをしれっと直した。

「【君の相棒は、タイムトリッパーのために取っておく。残念だが、君はいらない】と僕は言われ、意識を失ったんだ」

 僕とユキとティムは、ヴィクターの話を聞いて見つめあった。

 どういうことだろう。なぜ、この王様と赤いピエロは同じ話をしているのだ。

「簡単なことだ」

 ティムはいった。

「赤いピエロが、世界の王か。あるいは、その手先か。いずれにしても奴は関係があると言ってもいい」

 ティムの出した答えが今の所いちばんしっくりきた答えだった。僕は、辺りを見回した。ショッピングモールは荒れ果てていたが、本当にここに世界の王がいた建物があったのだろうかと考えた。ヴィクターいわく、建物の大きさが明らかに違うと言っていた。

 僕は、コンビニのトイレでウンコをしていたら気づいたら、この世界にトリップしていた。もしや、僕のことだろうか。タイムトリッパーとは……

 僕は、ティムの方を見た。ティムは、ユキの方を見ていた。僕は、誰かに話したい気持ちをぐっとこらえて喉の奥底に飲み込んだ。

「お。ようやくお目覚めのようだよぉ」

 そういってヴィクターは僕らの後ろに歩いていった。

 さきほどまで、目を疑うようなゾンビ姿となっていた町の人々だ。彼らが、人間の姿となってこの世界に戻ってきた。

「なんだか、ずっと良い気持ちで寝ていた気分だ。夢でも見ていたみたいだ」

 僕の想像とは裏腹に彼らは幸せな気分で生きていたようだ。

「近未来な世界を見たわ。自動で走る箱に座ったり。なんかおしゃれなお洋服を着たり。美味しいデザートもたくさん食べた気がする。いい夢だったなぁ」

 フリフリのスカートを履いた女性は言った。なんだか、僕の知っている世界にでも言っていたような発言だった。僕は、近づこうにも近づけない。

「どうしたの、カク?」

 ユキが、僕の背中をさわりながら言った。

「だ、大丈夫だよ。なんでもない」

 ユキの手をそっとおろして、僕は彼らの元に向かった。


 みんな、元気そうにしていた。僕は、元気であることに「よかった」と素直に思えた。でも、「実は、ゾンビだったんですよ」とは言えない。僕は口が裂けても言えなかった。

 意を決して僕は、一人の女性に話をかけた。あのフリフリのスカートを履いた女性である。ティムにもユキにもヴィクターにも聞こえないように小さい声で。

「自動で走る箱。もしかして、自動車とかタクシーとかっていう名前じゃなかったですか」

 女性は、驚いた表情を浮かべた。

「な、なんでわかるんですか」

 僕は、笑顔で答えた。

「僕も、あなたと同じ症状に陥ったことがあるので」

 笑顔満点で大きな嘘をついた。

「そうなんですか。あれは、この世界には絶対にないようなものでした。なんだったんでしょうね」

 女性は、興味深々だったが、僕は「さぁ、よくわからないです」と冷たい返事をした。


 彼らはどこに行っていたのだ。

 夢の世界か……

 こちらの世界が夢の世界ではないのか?

 僕のいた世界・・が夢の世界だったのか?


「ほ、本当に、大丈夫?カク?」

 ユキが僕の方に寄ってきた。

「だ、大丈夫だよ」

 強がりを一つ僕は言った。しかし、全然大丈夫ではなかった。僕は、そのまま床に倒れた。



 僕は、目を覚ました。

 灰色の天井にオレンジががった照明がついている。間接照明というやつか。

 体を起こして、辺りを見回した。

 黒革の高級そうなソファーの一角に僕は毛布をかけられて寝ている。

 あたりには、ワイングラスやお酒の瓶がいたるところに飾られている。バーカウンターに背の高い丸椅子、難しそうな表紙の本。なんだかどっかのバーに来たような気分だった。もちろん、未成年だから行ったことはない。映画とかドラマで見ただけである。

 僕は、ソファーから起き上がって辺りを歩いた。こんな場所、本当に初めてだった。これがおしゃれというやつか。

「目が覚めたんだねぇ」

 ヴィクターがグラスを持って現れた。

「お水でも飲むかい」

 もう片方の手に、水の入った大きな瓶を持っていた。(俗にいうピッチャーである)

「うん」

 僕は、うなづきながら返事をした。ヴィクタはー僕に、グラスを渡して、そのままグラスに水を注いだ。注ぎ終えた水を僕は飲み干した。そして、やっぱりそのまま寝ていたソファーに座ることにした。

「ここは、どこ?」

 僕は、ヴィクターに聞いた。

「ん?僕の家だよ。言ったじゃないか。ショッピングモールに住んでるって」

「ゾンビと一緒に暮らしてたの?」

「彼らは、活動的になるのは夜。昼はほとんど寝ていたよ」

 ヴィクターは、手に持っていた大きな瓶を僕の座って居るソファーの前の机に置いた。

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