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 僕は、一言もしゃべらなかった。そして、エディは僕の肩を抱きながら言った。

「やろうじゃないか。盛大にここで暮らそう」


 その後、二人でショッピングモールを回った。この中がどのような場所になっているか知りたかったようだ。僕は、依然として無言でついていく。この時、僕は彼が元の彼であることをずっと願っていた。

 閉店の音楽が流れた。どこかで聞いたことがあるようなないような音楽だった。

 すると、エディはポケットに入っていた何かを取り出した。

 エディは、それを投げた。

 投げたものからは、煙が出ていた。僕は、煙が充満していく姿をただただ見ていた。

「エディ」

 僕は、彼に話しかけた。

「ようやく喋ったかい。ヴィクター」

「何をしているんだ」

 しかし彼は、僕を無視して歩き始めた。僕は、だまって歩き続ける。

 彼は、最終的に三箇所に煙が出るものを投げた。モール内に残っていた数十人の人間が、煙の異変に気付き、ざわつき始めた。そして、悲鳴も聞こえ始めてきた。

「ようやくだな。ようやくだ」

 エディは大きく息を吸った。

 すると、急にざわつきや悲鳴が治まった。僕は何が起こったのかわからなかった。

 煙の中をエディが進んで行く。僕は、昔の出来事がフラッシュバックした。彼がいなくなった時のことを思い出した。

「エディィ!」

 僕は叫びながら彼の元へと走った。今度は見失うわけにはいけない。

 煙の先にいた彼に僕は驚いた。

 となりに、人間が立っていた。いや、正確にはゾンビであった。

「な、なんだその化け物は」

 僕は、彼に問うた。

「化け物?いいや。人間さ」

 彼は、その立っていた人間を僕の横に蹴り飛ばした。

 その人間だったであろう女性は、僕を見るなり噛み付こうとする。僕は驚いて尻餅をついた。

「こらこらよしなさい」

 エディがなだめると、そのゾンビは彼の元に戻っていった。

「これが、俺が手に入れた新しい力だ」


 そして、彼はショッピングモールから姿を消した。

 彼は、自分の力を使いたかったようであり、僕は、それに協力してしまった。


 この後は、言うまでもない。

 モール内に残ったゾンビを外に出すわけにはいかなかった。だから僕は、そのままここに居座ることにした。

 幸い、僕が言うまでもなく「神隠しだ」とか「幽霊がいる」といったうわさが自然と流れて誰も寄り付かなくなった。たまに、カップルとかが来て、やましいことでもしようとしていた時もあったが、ゾンビの叫び声を聞いてどこかに行ってしまった。

 

「こんな感じだよ。大した話ではないさ」

 ヴィクターは、吸い終わったタバコを、簡易的な灰皿に入れた。

 ヴィクターが、始めに僕らにしゃべってくれたこととは少し違っていたが、大枠は同じだった。彼が本当のことをしゃべってくれたなかったのは、人を疑うようになってしまったからだろう。これは仕方のないことだ。これだけ、ひどい話が続けば気が参ってしまう。

「そういえば、どうして君たちはここに入れた?しっかりと鍵をかけていたはずだよ」

「ワープした。そしたら、このモールの倉庫に居た」

 僕は端的に答えた。

「なるほど。魔法が使えるのかい?」

「いいや、僕は使えない。ユキが使えるんだ」

「ふーん」

 ティムは、図書館区域であった出来事をしゃべり始めた。図書館区域が全焼したことや、赤いピエロが現れたこと。そして、僕らがここにきたこと。

 赤いピエロの話に彼は食いついた。そして、ピエロが言っていた「タイムトリッパー」ということを口にした。

「タイムトリッパー」

 彼は、顎に右手を添えて考え始めた。そして、「タイムトリッパー」とつぶやきながらしばらくあたりをうろついた。

「ユキ」

 僕は、ユキに声をかけた。

「大丈夫?怪我はない?」

「怪我はないよ。大丈夫。彼ほんと強くて私はなにもしなかったわ」

 ユキは、彼の強さに驚いた表情をしていた。僕は、その表情を見てヴィクターの強さとユキの強さを知った。僕はまだまだ子供だ。


 しばらくして、ヴィクターが口を開いた。急に何かを思い出したようだった。

「タイムトリッパー!そうだそうだ。あの時だ」

 ヴィクターは僕らに駆け寄ってきた。

「あいつだ。この場所の地下にいたあいつが言っていた。そうタイムトリッパーだ」


 

 



 

 

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