27
僕は、一言もしゃべらなかった。そして、エディは僕の肩を抱きながら言った。
「やろうじゃないか。盛大にここで暮らそう」
その後、二人でショッピングモールを回った。この中がどのような場所になっているか知りたかったようだ。僕は、依然として無言でついていく。この時、僕は彼が元の彼であることをずっと願っていた。
閉店の音楽が流れた。どこかで聞いたことがあるようなないような音楽だった。
すると、エディはポケットに入っていた何かを取り出した。
エディは、それを投げた。
投げたものからは、煙が出ていた。僕は、煙が充満していく姿をただただ見ていた。
「エディ」
僕は、彼に話しかけた。
「ようやく喋ったかい。ヴィクター」
「何をしているんだ」
しかし彼は、僕を無視して歩き始めた。僕は、だまって歩き続ける。
彼は、最終的に三箇所に煙が出るものを投げた。モール内に残っていた数十人の人間が、煙の異変に気付き、ざわつき始めた。そして、悲鳴も聞こえ始めてきた。
「ようやくだな。ようやくだ」
エディは大きく息を吸った。
すると、急にざわつきや悲鳴が治まった。僕は何が起こったのかわからなかった。
煙の中をエディが進んで行く。僕は、昔の出来事がフラッシュバックした。彼がいなくなった時のことを思い出した。
「エディィ!」
僕は叫びながら彼の元へと走った。今度は見失うわけにはいけない。
煙の先にいた彼に僕は驚いた。
となりに、人間が立っていた。いや、正確にはゾンビであった。
「な、なんだその化け物は」
僕は、彼に問うた。
「化け物?いいや。人間さ」
彼は、その立っていた人間を僕の横に蹴り飛ばした。
その人間だったであろう女性は、僕を見るなり噛み付こうとする。僕は驚いて尻餅をついた。
「こらこらよしなさい」
エディがなだめると、そのゾンビは彼の元に戻っていった。
「これが、俺が手に入れた新しい力だ」
そして、彼はショッピングモールから姿を消した。
彼は、自分の力を使いたかったようであり、僕は、それに協力してしまった。
この後は、言うまでもない。
モール内に残ったゾンビを外に出すわけにはいかなかった。だから僕は、そのままここに居座ることにした。
幸い、僕が言うまでもなく「神隠しだ」とか「幽霊がいる」といったうわさが自然と流れて誰も寄り付かなくなった。たまに、カップルとかが来て、やましいことでもしようとしていた時もあったが、ゾンビの叫び声を聞いてどこかに行ってしまった。
「こんな感じだよ。大した話ではないさ」
ヴィクターは、吸い終わったタバコを、簡易的な灰皿に入れた。
ヴィクターが、始めに僕らにしゃべってくれたこととは少し違っていたが、大枠は同じだった。彼が本当のことをしゃべってくれたなかったのは、人を疑うようになってしまったからだろう。これは仕方のないことだ。これだけ、ひどい話が続けば気が参ってしまう。
「そういえば、どうして君たちはここに入れた?しっかりと鍵をかけていたはずだよ」
「ワープした。そしたら、このモールの倉庫に居た」
僕は端的に答えた。
「なるほど。魔法が使えるのかい?」
「いいや、僕は使えない。ユキが使えるんだ」
「ふーん」
ティムは、図書館区域であった出来事をしゃべり始めた。図書館区域が全焼したことや、赤いピエロが現れたこと。そして、僕らがここにきたこと。
赤いピエロの話に彼は食いついた。そして、ピエロが言っていた「タイムトリッパー」ということを口にした。
「タイムトリッパー」
彼は、顎に右手を添えて考え始めた。そして、「タイムトリッパー」とつぶやきながらしばらくあたりをうろついた。
「ユキ」
僕は、ユキに声をかけた。
「大丈夫?怪我はない?」
「怪我はないよ。大丈夫。彼ほんと強くて私はなにもしなかったわ」
ユキは、彼の強さに驚いた表情をしていた。僕は、その表情を見てヴィクターの強さとユキの強さを知った。僕はまだまだ子供だ。
しばらくして、ヴィクターが口を開いた。急に何かを思い出したようだった。
「タイムトリッパー!そうだそうだ。あの時だ」
ヴィクターは僕らに駆け寄ってきた。
「あいつだ。この場所の地下にいたあいつが言っていた。そうタイムトリッパーだ」




