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ティムは、後ろ振り返った。ヴィクターとエディが戦っている。
「どうしてそんなことがわかる」
ティムは、僕に言った。
「なんというかね……、彼らの服装が新しすぎる。綺麗じゃないか。おかしい」
「そんなこと理由にならないぞ。そんな理由で彼らが生きている理由にはならない。あれはゾンビだ」
ティムは、僕に静かに怒鳴った。その口調は激しい。
「今、何時かはわからない。そもそもこの世界に来てから僕は時間を気にはしたことがない。日が暮れる。日が昇るそれだけを意識して生きてきた」
急に違う内容をしゃべり始めた僕に対して、彼は不思議な眼差しを送った。
「ティム。今、日は昇っているか。それとも昇っていないかどっちだ」
僕は、ティムに聞いた。
「さっきまで、入っていた天窓からの日差しがなくなりつつある。日が暮れているんだ。俺らがここに来たのはいつなのかはわからない」
うめき声をあげながら、ゾンビが僕らの方に向かってきた。
僕は、どうして彼らが生きていると言ったのかはわからない。もしかしたら、生きていて欲しかったのかもしれない。あるいは、単に動揺していただけのか。
僕は、剣の持ち手を強く握った。そして、目の前からくる敵を一匹、一匹の頭に向けて僕は剣を振り抜いた。
相変わらず、この武器はカッターが大きくなっただけである。しかも、刃の部分は、しまわれたままである。よって、切り裂くことはできない。
こんなことで、ゾンビが倒せるとは思えなかったが、僕は剣をひたすら振り回した。
剣が頭に当たるたびに、彼らは悲鳴をあげ、僕は叫んだ。心の中では「死んでたまるか」という声が強く響いた。
「エディ、もう終わりにしよう」
ヴィクターはエディの喉元にナイフを突きつけていた。
「そんなものを持っていたとはね」
ヴィクターは、白衣の下に多くの武器を仕込んでいた。戦いの最中にいくつか白衣の下から取り出しては使用し、取り出しては使用した。しかし、その全てがエディには効かなかった。ピストルの弾や、小型火炎放射器の炎は当たりはするものの、彼には効かなかった。当たった箇所はすぐさまに修復され、何事もなかったかのように戻るのである。エディは、もはや人間なのかどうかもわからない。
ヴィクターは、様々な攻撃をしかけた。パンチのコンビネーション、キック、ジュードー、テコンドー。白衣を纏ったタバコを吸うひ弱そうな理系男子のイメージとは全く異なる動きだった。暗殺者と言っても過言ではない。
そして、またしてもエディに尻餅をつかせ、ヴィクターは馬乗りとなったのだった。
「このナイフの刃は、お前のために用意していた。いつか必ずこの機会が訪れるだろうと思っていたから」
ヴィクターは、ナイフを綺麗に右手で回して、再度エディの喉元に突きつけた。
「ほう、単なるナイフだろう。それは。俺の前では無意味だ」
エディは余裕の表情を見せる。
「それはどうかな」
ヴィクターは、そう言ってエディの喉にナイフを突き刺した。
すると、エディの体は小刻みに震え始めた。そして彼は、激しい叫び声をあげはじめた。
ヴィクターは馬乗りの体制をやめ、エディから離れた。
僕の目の前にいた、ゾンビたちも叫びだし、そして床に次々に倒れていった。
すぐさま後ろに振り返りヴィクターの元へ向かった。
「ヴィクター!」
僕は、叫んだ。
「どういうこと?みんな倒れたんだけど」
「こいつが倒れたからさ」
ヴィクターは、エディを指差した。
エディは、床の上でもがいておりとても苦しそうにしていた。
しかし、しばらくすると体の動きがとまり、足元から徐々に灰になっていった。
後ろを振り返ったが、彼らは灰にはなっていないし、ピクリとも動いていなかった。
「少年、よく頑張ったな」
ヴィクターは僕の方を見る。僕は「頑張ってなんていないよ」と答えた。ユキは、ティムを抱きかかえて、灰となったエディを見た。
「ヴィクター」
ティムは、しゃべりかけた。
「君とエディはどういう関係だ」
「それは、さっき話しただろう。ショッピングモールの首謀者で……」
「違う」
ティムは、ヴィクターの話を遮る様にしてしゃべった。しばらく、ティムは黙っていた。そして、ポケットからタバコを取り出しマッチで火をつけた。口にくわえ、煙を吸った。口でタバコを加えるのをやめて、左手で持った。
「ブラックキャットは、鋭いから嫌いだよ。本当のことを話そう」
ヴィクターは、2階の手すり部分に寄りかかりながら、少しだけ昔の話をし始めたのだった。




