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「カクッ!」
ユキが叫んだ。僕は、振り返る。
「大変!さっきのゾンビたちが動きが活発になってる!」
僕は、ハッとした。縛られていた何かがほどけたような感じがした。
「逃げないとまずいわ!」
ユキが、僕に向かって叫んでいた。ああ、僕のことを呼んでいる。僕の意識は、どこかに行ってしまっていたようだ。僕は、ふらふらになりながら彼女の元に戻った。
「に、逃げるってどこに」
僕らは、モール街の2階部分にいた。2階部分は1階に比べて細い通路になっている。なぜならば、通路の真ん中が細い吹き抜けになっているからである。
つまり、僕らは、前にはヴィクターとエディ。後ろ側に、ゾンビということになる。後ろを振り返ると20体ほどのゾンビがこっちに向かっていた。走ってはいない。しかし、歩いているという速度でもなかった。
僕は目をつぶり、決意をした。
「ユキ、君はヴィクターに協力するんだ。ティム、僕と一緒に来て」
「ど、どうしたのカク」
ユキは、僕の両肩を持って言った。両手は震えている。
「僕も……、僕も戦わなければいけない……行けないんだ。赤いピエロに目の前のドクロ。いや、最初の山賊だって。僕は逃げてばかりでここまで来た。でも、それじゃダメだって気がついた。ヴィクターがエディに向かっていった時に僕は、何も変わっていないことに気がついた。僕は、逃げて……逃げてきたから、こんな所にいる。世界が滅ぶことを望むよりも世界が滅ぶまで生きるほうがよっぽど難しい。だから、僕は戦うよ」
最後の方は、何を言っているのかよくわからなかった。僕は、感情が高ぶっている。高ぶっていた。
「カク、死なないで」
ユキは、僕の胸を叩いた。
「うん」
僕は、彼女の胸を叩いた。
「ちょッ」
ユキは、顔を赤らめた。
「あ、ごめん。普通に間違えた」
「生きて帰って来たら、思いっきり叩いてあげるから覚悟してなさいよ」
ユキは、僕にあっかんべーをして、目の前のヴィクターの方へと走って行った。ヴィクターなら、ユキが何もしなくても勝てるだろうし危険な時は助けてくれる。なぜだか、僕は彼が死ぬように思えなかった。彼は、強い。
僕は、細い通路を反対方向に走った。走りながらあらかじめ、柄のボタンを押した。
「カク、無茶はするなよ」
「もちろん。死ぬ気はないさ。それに、人生一度辛いことをしないとね。人は強くなれないよ」
「そうだな」
僕は、通路に剣を刺し立ち止まった。
「君が、こんなに強い人間だとは思わなかったよ。恐れ入った」
ティムも立ち止まり、僕の方を見た。
「これから、強くなるんだよ僕は」
押し寄せるゾンビの群れを目の間に、僕は立った。
ヴィクターは、蹴りからの蹴り、蹴りからのパンチと流動性のある攻撃を繰り返した。
「こんなもんかヴィクター!?。来いよ、ほら、もっと来いよ!」
エディは、器用なステップを踏みながらかわし、ヴィクターを挑発している。
「言われなくても、やってやるよッ!」
ヴィクターのフェイントからの足払いが決まり、エディーは尻餅をついた。そして、ヴィクターは渾身の右ストレートを彼の顔面に向かって打った。
エディにのドクロのお面はピキピキとひび割れていき、そして割れた。
「見たな……おまえ。俺の顔を。俺のカオォォ!」
ヴィクターは、エディの叫び声に反応し、すぐに彼から離れた。
エディは、ゆっくりと立ち上がる。
「けけけ、あの仮面は自分じゃ割れなくてな。随分昔に、俺の能力を封じるために封じた奴らがいたのさ」
ドクロのお面の下は、額に銃弾が貫通したような跡があり、目が充血していた。肌は青白く、彼自身がゾンビのようだった。
エディは、右手をピキピキと動かしながら音を出している。今にも何かをつかみそうな勢いだ。
「奴ら……誰のことだか検討つかんねぇ」
ヴィクターはひょうひょうと返事をした
「この世界の王だよ」
エディは続けた。
「でも、その王も俺らの力が必要らしくてな。仕方なく協力してやったのさ。そして、ヴィクター。お前を消すためにな。王様はお前が嫌いらしいぞ」
「そいつは、結構なこったねぇ。いつのまにやら、世界の王とやらに嫌われていたとは。人気者は辛いねぇ」
ヴィクターは鼻で笑った。
「でも、死ぬ気はないよ。お前もその世界の王とやらも、みんな倒してやるよ。俺は強いからな」
「シャアアッ!!」
エディは叫び声とともに、人間離れした脚力で飛び上がり、ヴィクターに向かっていった。
カッターソードのメーターがいっぱいになり、サイズが大きくなった。
「ティム、僕思ったことがあるんだ」
「なんだ」
押し寄せるゾンビの群れを前にして、僕はティムに話しかけた。
「あのゾンビたち……多分生きてるよね」




